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2025年10月23日(木)12:30~17:45

SalesZine ニュース

Salesforce、中小企業がAIエージェントとデータ活用により経営課題を解決する事例を公開

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 セールスフォース・ジャパン(以下、Salesforce)は、日本の各地域の中堅中小企業がSalesforceが提供するAIエージェント「Agentforce」と統合データプラットフォーム「Data 360(旧Data Cloud)」を導入したことで、経営課題を解決し、事業成長を加速させている事例を発表した。

中小企業が抱える経営課題

 日本経済の根幹を支える中小企業は、少子高齢化に伴う人手不足、それに起因する生産性の低迷、事業承継や後継者問題といった構造的な課題に直面している。とくに、経営資源に限りがあるため、デジタル化への投資が遅れ、業務の属人化や非効率なデータ管理が恒常的な問題となっている。このような状況下で、営業活動や販路開拓、新たなサービス開発に十分なリソースを割けず、収益の停滞を招いている企業も少なくない。これらの課題解決には、業務効率化とデータ活用による競争力強化が不可欠とされている(※)。

※出典:中小企業庁「中小企業白書」など

「Agentforce」と「Data 360」による課題解決

 Data 360により、企業は顧客情報をはじめとする社内外のさまざまなデータを統合、調整、管理できる。これにより、顧客1人ひとりに合わせたアプローチを導き出し、属人化を排除したデータ統合や管理が確立される。さらにAgentforceを活用することで、営業やカスタマーサービス業務でAIエージェントが自律的に推論しアクションを取り、中小企業の人手不足を補うことができる。その結果、ルーティンワークを効率化し、従業員はより戦略的な業務に集中できるようになる。これらSalesforceの製品を連携させることで、中小企業は一部の部署や従業員が独自に保有していた知識や経験などをデータとして取り込み、業務の引き継ぎや属人化の排除を促進し、持続的な成長基盤の構築を可能にする。

 今回、Salesforceが発表するAIエージェントとデータを活用して経営課題を解決している地域の中小企業は次のとおり。

清水勧業株式会社(北海道札幌市)

 昭和22年設立の清水勧業は、腕木や家具、建具の製造、電柱、根架丸太の販売から事業を開始し、北海道電力や関連する工事会社へ配電用材料や機械工具、防具・防具安全具などを納入してきた。現在は、通信資材や制御機器、計測器などの産業用機材も取り扱い、電力業界のみならずインフラ業界、制御盤業界、電材卸業界などさまざまな顧客企業へ多様な商品を販売する北海道地域のインフラを支える企業の一社である。

  • 課題:これまで清水勧業は、数万点にもおよぶ取扱商品数の多さから、担当者は特定の商品知識のみに習熟するなど業務の属人化が進み、また代理店や顧客企業からの問い合わせ対応にも時間を要するなどの課題に直面していた。さらに、商社としての特性上、価格競争に陥りやすく、利益率の改善や新たな収益源となる新規エリアの開拓、利益率の高い製品の開発や営業にリソースを避けないなど事業戦略上の課題が浮上してきた。
  • 取り組み:清水勧業は人的リソースの確保のため、問い合わせ対応の効率化、従業員の教育にかかるコストと時間の削減の取り組みを開始した。価格以外の付加価値を提供することで利益率の改善を図り、営業リソースを新規エリア開拓や自社製品の提案といったより戦略的な活動にシフトするために、2022年にSalesforce製品を導入し、見積もり数の増加などの成果を上げた。基幹システムもSalesforce Platform上に構築されたAppExchangeパートナーである「ウランバ!!」へと切り替えた。
  • 効果:導入後の問い合わせ対応の時間削減(10%減)、従業員の育成コスト削減と教育期間の短縮(40時間)などの具体的な成果を得た。また、より利益率の高い代替商品の提案が可能となり、売上と利益率の改善(105%増)、営業担当が注力すべき新規エリア開拓や自社製品の提案に割ける時間の向上(130%増)など、経営課題の抜本的な解決につながった。現在は、Data 360の導入を決定して、Data 360へ数万点にもおよぶ商品カタログのデータ(非構造化データ)と過去の受注データ(構造化データ)を蓄積している。こうしたデータを活用して、顧客からの見積もり依頼に対して、Agentforceが自律的にアクションを起こし販売担当者へ適切な商品を自動で提案したり、定期受注の見積もり依頼時にはより高収益な代替商品を自動で提案したりする仕組みを構築している。

ジェーイーエル(広島県福山市)

 1993年に設立されたジェーイーエルは、広島県福山市に本社を置く電子機器製造販売企業。主に半導体用ウェーハや液晶ガラス基板を搬送するロボットおよびシステムの開発・製造を行い、国内外の半導体・液晶装置メーカーに製品を提供している。同社では、客先要求仕様に合わせたカスタマイズを得意とし、長年にわたり培ってきたナレッジやノウハウを活かして、技術の追求を続けている。

  • 課題:半導体業界特有の需要変動により、需要が高まる時期には残業が増加し、従業員の疲弊が課題となっていた。また、営業部門では、顧客からの提案依頼に対して新規図面の作成に時間を要し、図面や見積書の提示までに遅れが生じるケースがあった。新人営業担当者においては、適切な参考図面の選定が難しく、提案品質にばらつきが生じるなど、商談機会の損失、顧客満足度の低下といった課題も顕在化していた。
  • 取り組み:ジェーイーエルは、AIエージェントを活用することでデジタルによる労働力の底上げを図り、需要変動期においても従業員の残業時間を従来水準に抑え、従業員満足度の高い職場の実現に取り組んでいる。また、AIエージェントがルーティン業務を担うことで創出された時間を、より付加価値のある開発などの創造的業務へシフトさせることを狙いとしている。たとえば、営業業務においては、商談ごとの提案や図面をAIエージェントが自律的に推奨することで、提案内容の品質を標準化し、効率性を向上させ、スピーディーな受注につなげることができるようになる。カスタマーサービス業務では、ロボットの不具合の検知や過去の同種不具合への対応実績データを活用することで、スピーディーな顧客サポートの提供と、顧客満足度の向上が可能となる。
  • 効果:初期ステップとして、情報検索(類似案件・実績の検索)とレコメンデーション(キーワードに関連する過去の問い合わせを提示)のふたつのユースケースを検討している。これらは2025年10月末までに調整を実施し、商談をスピーディーに進めるためのプロセスとして構築している。具体的には、ロボットの仕様情報と搬送対象ワークの情報をもとに、AIエージェントが過去の類似案件や商談を検索し、合致する案件を選定して新たな商談を起案するまでのプロセスを自動化している。

リージョンデザイン・ホールディングス(鳥取県米子市)

 リージョンデザイン・ホールディングスは、高齢者住宅、医療・介護、コンサルティング、飲食事業などを展開する企業グループである。グループ全体で約850名の従業員を抱え、幸福長寿社会を実現するために同地域に根差したサービスを提供している。

  • 課題:日本全体で少子高齢化が進む中、リージョンデザイン・ホールディングスの中核事業である高齢者住宅事業は高齢化が進むほど需要が増大し、同社では限られた人的リソースの中で効率的な事業運営が求められてきた。こうした背景から、住宅の入居希望者への施設説明や見学対応、契約手続き、退去時の契約終了手続き、入居者やその家族からの相談対応、その他関連業務を一手に引き受けて対応するライフアテンダントは、従来のコンシェルジュとしてのサポート業務だけでなく、より積極的な営業やコンサルタント業務はもちろん、企業のブランド価値を適切に伝える役割へのシフトの必要性に迫られてきた。しかし、新しい業務へのシフトは容易ではなく、担当者ごとに習熟度などに差が生じており、グループ全体でのサービス品質の標準化が課題として浮上した。
  • 取り組み:入居希望者が新聞やテレビなどの各種チャンネルからQRコードをスキャンすることでAIエージェントとの会話へ移行し、AIエージェントが施設説明や各種活動に関する情報を提供して、ライフアテンダントへ引き継ぐ仕組みを構築した。AIエージェントが参照するデータとしては、現在は、顧客情報や活動情報、ナレッジなどの基礎的な構造化データを中心にData 360へ集約している。
  • 効果:地域の人材不足の問題解決への対策のひとつとしてAIエージェントが稼働することで、リージョンデザイン・ホールディングスは従業員の残業時間を従来水準に抑え、必要工数を削減することを見込む。また、入居希望者に対してタイムリーに必要な情報をスピーディーに提供することで、顧客体験の向上を目指す。

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