脱属人化とデータドリブン営業を実現 イネーブルメントの「3つの柱」
TGESのセールスイネーブルメントは、営業パーソンが「生き生きと活動できる」ことを前提に、営業利益の拡大を目指す。それを実現するために不可欠となったのが、属人化していた営業ノウハウの共有と、データに基づいた戦略的な営業活動への変革だ。
TGESが本格的にセールスイネーブルメントに取り組むことになったきっかけは、2024年4月のDX推進室の発足だ。DX推進室は、全社のDX・業務改革・人材育成を推進する司令塔の役割を担っている。茅氏が所属する営業革新グループは、専任の5名体制に加えて各営業本部から兼務担当が1名ずつ配置されており、一色氏もそのひとりだ。茅氏は、専業で取り組む人数としては「恵まれた環境」であると述べた。
このDX推進室は社長の小西康弘氏の直下に設置されており、その体制がもたらすインパクトは非常に大きい。茅氏は、大きなプレッシャーを感じる一方で、意思決定の速さや社長に直接報告できる利点を挙げた。
具体的な施策は、主に3つの柱で構成されている。まず、外部の制度情報や過去の提案書を共有し、営業担当者が容易に情報にアクセスできる環境の整備だ。ナレッジ管理ツールの導入により、無駄な提案書作成のストレスを軽減し、顧客訪問など本来の営業活動に時間を使えるようにしている。
加えて、営業支援組織が問い合わせの多い内容を技術資料としてナレッジ化し、ツールへ格納しているという。これにより、業務効率化と問い合わせ内容の洗練化を図り、営業の質問がより顧客ニーズに寄り添った本質的なものへと変わることが期待されている。
ふたつめの柱が、営業マネジメント層の育成だ。マネジメント層とメンバーの両方がデータドリブンな営業ができるよう、研修を実施している。マネージャーは、SFAの営業データをBIツールで可視化・分析し、データに基づいたマネジメントを行う。メンバーは、アカウントプランを策定するなど、戦略的な営業活動を行うことを目指す。
そして3つの柱が、データドリブンなサービス開発。サービス開発部門のシーズ(潜在的なサービスアイデア)もナレッジ管理ツールに蓄積し、営業担当者に共有する。営業担当者は、それらのシーズを念頭に顧客にヒアリングを行い、商談の録音データをSFAに蓄積する。これにより、サービス開発部門は大量の商談データから潜在的な顧客ニーズを抽出し、データに基づいたサービス開発を進めることが可能になるという。

これらの取り組みは「TGES流デジタルツイン」というコンセプトのもと、ソリューション開発から運用保守まで、各フェーズでデータを共有し、社員の行動変容を促すことを目指している。音声データをサービス開発に活用する取り組みについて、山下氏は「先進的」と評価した。
