「課題認識のギャップ」を乗り越える スモールウィンで組織を変革
まさにセールスイネーブルメントの挑戦を続けるTGESだが、その過程で、推進部門と現場の間に「課題認識のギャップ」が存在していることが明らかになった。
具体的な例として、製造業の顧客を対象とする産業エネルギー営業本部と、民生業の顧客を対象とする都市エネルギー営業本部の事例が挙げられた。
産業エネルギー営業本部は、顧客の業態が工場中心で、顧客数も比較的少ないため、体系化したデータの整備とそれに基づいたデータドリブン化を行いやすい素地がある。一方、都市エネルギー営業本部は、顧客がデベロッパー、小売、ホテルなど多岐にわたる。顧客数も圧倒的に多いため、一律の施策を適用することは難しい。
このように各営業部やグループで課題が異なるため、一律のDX推進は困難であると茅氏は感じている。DX推進室が提案する取り組みがフィットしない現場も存在するのだ。
このような状況の中、TGESは引き続き各現場の課題に対する視点を深め、より丁寧な提案をしていく必要があると考えている。まずはDX推進室が「使える」と思ってもらえるように、各部への解像度を上げ、地道なアプローチを続けることが重要だと茅氏は述べた。
山下氏はTGESの取り組みについて、「非常に難易度の高いイネーブルメントを推進されている」と評価した。イネーブルメントは社内マーケティング的な側面も持ち合わせており、一朝一夕で成果が出るものではない。とくに、売り先が多様で、売り物が複雑、受注までの時間が長いBtoB企業にとって、その難しさは大きい。
しかし、「そこで諦めてしまうと属人化は変わらない」ため、まずは「スモールウィンを重ねていく」ことが定石であると山下氏。ナレッジ管理ツールの導入のように、現場が「良かった」と感じる小さな成功体験を積み重ねていくことが、組織全体の行動変容へとつながる道となる。
茅氏も一色氏も、まだ道の途中であることを認識しつつ、粘り強く取り組みを継続していく決意を語った。複雑なビジネス環境下での営業変革のリアルな挑戦と、それを推進するうえでの忍耐と戦略の重要性を示すものとなった。
