新規顧客開拓を担う「デジタルセールス」 100名規模の組織へ
富士通は2020年に「デジタルセールス」と呼ぶインサイドセールス組織を立ち上げた。今回はデジタルセールスの「セールス・イネーブルメント」を担う組織をリードする山口湧大氏が登壇した。山口氏は、ブライダル業界での法人営業、営業コンサルティング企業での営業組織の立ち上げ支援に関わったのち、富士通に入社している。
「1つひとつの取り組みに際立った目新しさはないかもしれません。それでも、富士通という伝統的な日系エンタープライズ企業が、新しい営業のあり方、営業改革に泥臭く取り組んでいることが、皆さんの挑戦の後押しとなればうれしいです」(山口氏)
「IT企業からDX企業への変革」を掲げるなど、ここ数年で大きな組織改革を実施してきた富士通。営業利益率の向上や、伝統的な営業手法・スタイルからの脱却・変化を目指す中で、「営業職」の呼び名が「ビジネスプロデューサー」に変わるなどの変化も起きている。
組織改革、営業改革の流れの中で、デジタルセールスが担うのは、あらゆるデジタル接点を活用した新規顧客開拓だ。IT部門とのつながりを得意としてきた富士通として接点の少なかった「事業部門」を主な対象とし、新領域で案件を発掘する組織としてボトムアップ型で立ち上がった。現在は100名規模まで拡大しており、毎月のように新メンバーが加わる。
「立ち上げ当初はインサイドセールスを支援する外部ベンダーと共に運営していましたが、2021年度に内製化を進め、ハイブリッド運用を続けてきました。2023年度には社員のみで架電を行う体制に進化しています。将来的には200名規模までの拡大を目指しており、CRO室直下のプロジェクトかつ営業のフロント組織として少しずつ社内での認知、組織力が高まっていることを実感しています」(山口氏)
組織拡大の最中では、さまざまな壁にぶつかった。たとえば、立ち上げ時には「デジタルセールスがどんな組織なのか」を役員や営業部門に理解してもらう必要があった。山口氏自身がデジタルセールスに取り組んでいた際には、新しい見込み顧客との接点をつくり、営業に相談をしても「お願いしていないので大丈夫」「手が空けば対応します」と言われる経験もしたという。新しい組織ゆえに「得体が知れない」と理解が得られないこともあった。
そして内製化の際は、社内の営業やSEに加え、外部のインサイドセールス経験者など多様な人材を急ピッチで受け入れたため、属人化や「組織文化が根づきづらい」などの壁に直面した。
「社内では『既存営業』があたりまえの中で、わかりやすく自分たちが提案できる価値を伝えるためには、営業成果をつくり続ける必要があります。そこで数字をつくること、新たな組織文化をつくり定着させること、このふたつを目的にセールス・イネーブルメントの組織が立ち上がったのです」(山口氏)