データマネジメントの落とし穴と「人間」の役割
組織が拡大する中で、マネジメントの在り方も問われる。
川嶋氏は「ハイパフォーマーは自発的に成長し続ける傾向がある」と語るが、組織全体の底上げには、トップセールス以外のメンバーへの介入が不可欠だ。
「ハイパフォーマーの行動データを分析すると、やはり接触頻度が高く、ここぞというときには時間をかけて深く対話しています。こうした『勝ちパターン』を感覚ではなく、頻度や網羅率といった客観データとして可視化し、現場に示すことがマネージャーの役割です」(川嶋氏)
いわゆる「型化」の重要性だが、児玉氏は「型を信じすぎることの危うさ」についても警鐘を鳴らす。Sansanでの実体験として、顧客の健康状態を測る「ヘルススコア」にまつわるエピソードが披露された。
「一時期、ヘルススコアが悪い(活用が進んでいない)お客様を重点的に支援していました。ところが、データ上はヘルススコアが良いはずの企業から解約が出始めたのです。調べてみると、競合他社のアプローチが影響していました」(児玉氏)
データはあくまで過去の結果であり、顧客の心情すべてを映し出すわけではない。「活用できているから満足しているはず」という思い込みは危険だ。

「本当は何が起きているのか」は、最終的には現場に足を運び、顧客の顔を見て初めて掴める情報だ。児玉氏は、「継続的に見るべきKPI」と「状況に合わせて柔軟に変えるKPI」の両方を持ち、常に仮説検証を繰り返す姿勢こそがマネジメントに求められると語る。
また、既存営業特有の「精神的な難しさ」へのケアもマネージャーの責務だ。
何度も連絡して断られたり、成果が出るまでに時間がかかったりする既存営業に対するマネージャーの仕事として、川嶋氏は「営業がお客様にお土産として持っていける武器を用意すること」を挙げる。
「手ぶらで会いに行けというのは酷です。業界の最新トレンドや、他社の成功事例、プロダクトのアップデート情報など、『これをお持ちすれば喜ばれる』というネタを会社側が用意することで、営業は顧客接点を持ちやすくなります」(川嶋氏)
児玉氏も、「プロセスの評価」の重要性を強調する。
「既存顧客の成果は、一足飛びには出ません。だからこそ、成果に至るまでのプロセスKPIを設定し、『やるべきことをやった』こと自体を評価してあげる。即効性が見えにくい施策の意義を経営に説明し、現場を守ることもリーダーの仕事です」(児玉氏)
