「解約阻止」の先へ Sansanが目指す「アウトカム」の定義
続いて話題は、SaaS業界の雄、Sansanの事例へと移る。2007年のサービス開始以来、顧客の事業成長にコミットしてきた同社。2018年には国内でいち早くGainsightを導入するなど、カスタマーサクセスの先進企業としても知られる。
児玉氏はまず、Sansanにおけるカスタマーサクセス組織の変遷を語った。現在は製品ごとに組織が分かれており、Sansan事業部だけで約130名のカスタマーサクセスマネージャーが存在する。さらに2025年6月からは組織構造を刷新し、「オンボーディング(導入支援)」と「アダプション(活用定着)」のふたつに大別したという。
「オンボーディングチームは立ち上げにフルコミットし、アダプションチームはSMBからエンタープライズまで規模に応じた継続支援を行います。とくに、契約金額が比較的小さい数千社のお客様を『面』で支援する『サクセスアシスト』チームの立ち上げはチャレンジングでした。データベースとテクノロジーがなければ、これほど多数のお客様に適切に向き合うことは不可能です」(児玉氏)
児玉氏は、継続利用型サービスにおけるKPIのフェーズを3段階で定義する。
フェーズ1:オンボーディング
まずは製品を使ってもらうことに集中する時期。Sansanで言えば、紙の名刺を取り込んでもらうことが最優先事項となる。
フェーズ2:リテンション(解約阻止)
利用が定着し、顧客数が増えると「解約率」が課題になる。トップラインを維持するため、セールス的な動きで契約更新を促すフェーズだ。
フェーズ3:アウトカム(成果創出)
単なる利用や継続を超え、顧客のビジネス成果に貢献するフェーズ。
児玉氏がカスタマーサクセスにジョインした当時、Sansanはすでにフェーズ2において極めて優秀な解約率を叩き出していたという。「これ以上やることがないのでは?」と感じるほどの数字だったが、実態を見ると課題が残っていた。

「解約率は低いものの、名刺管理以上の活用ができていないお客様も多かったのです。Sansanの機能は進化しているのに、これではスマートフォンを持っていても電話とメールしか使っていないようなもの。本当のカスタマーサクセスとは、我々が提供できる価値をフルに活用し、ビジネス成果を出してもらうことだと考え直しました」(児玉氏)
現在、Sansanが最重要視しているのが、この「アウトカム」だ。
具体的には、顧客の営業戦略や事業戦略に対し、Sansanのデータベースをどう活用するかを提案し、合意形成を行う。単なる機能説明ではなく、「ありたい姿」を定義し、そこへ導く活動だ。
「顧客のアウトカムについては、営業とも目線が揃ってきました。ただ、プロダクトは進化し続けるものなので、継続的にお客様と価値をすり合わせ続けるのは、カスタマーサクセスにしかできない役割だと自負しています」(児玉氏)
