顧客データ統合とターゲティングの高度化へ
システム基盤の構築において、もっとも大きな課題のひとつが「データの統合」だった。同じく営業DX戦略部 企画課に所属する課長代理の森田 琴音氏によれば、新CRMは外部システムを含むさまざまな情報を連携させ、一元的に活用できるようにしているという。ただ、この仕組みを機能させるには、複数のシステムに散在したデータを統合するということが大前提だったと語る。
同社はまず、2018年に旧三菱UFJリースが導入していたSansanに名刺管理基盤を統一し、顧客情報基盤を構築。名刺情報は共通項目であるため、スムーズにデータが移行できたという。そのうえで、Sansan Data Hubを活用し、顧客データが抱える「同じ会社が複数登録されている」「人物情報が不足している」といった課題を解消し、活用しやすいデータへ整理することを目指した。
この取り組みにより、データは大きく進化した。情報の付与やリッチ化によってCRM側で企業の名寄せや人物の自動作成が可能となり、データ統制が確立された。これにより、顧客基盤の構築やデータ活用の幅が大きく広がった。
具体的な活用事例として、「名刺ポイント集計」のダッシュボード化によるデータ蓄積への興味喚起、「ターゲティングの高度化」、そしてMA配信リスト作成にかかる工数を大幅に削減した「デジタルマーケティング部門の業務改善」の3つが紹介された。とくにターゲティングにおいては、過去の受注傾向に近い企業を抽出し、キーパーソンを特定できるようになったことで、営業アプローチの精度が大きく向上したという。
現場の「理解」と「日常化」を生む地道な工夫
飯田氏は、「システム基盤を構築しただけで、すべてがうまくいくわけではない」とし、もうひとつの重要なポイントとして「活用の定着」を挙げた。同社が実践したのは、システム利用を「理解」「利用」「日常化」「業務効果」の4ステップで捉え、とくに土台となる「理解」を徹底的に深めることだった。現場の理解がなければ、どんな優れたツールを導入しても定着しないため、同社は地道な施策を徹底した。
その工夫は次の3つに集約される。ひとつは、要件定義の段階から各営業部から推進担当者を参集し、現場のリアルな課題を出し合うワークショップを計11回開催した「現場の巻き込み」。ふたつめは、一方通行なオンライン説明会ではなく、すべての営業現場の社員を対象に小規模な説明会を3ヵ月で計100回開催し、疑問や不安を解消した「直接ていねいな説明」。3つめは、利用開始後わずか3ヵ月で寄せられた340件もの問い合わせを含む、現場からの不具合や改善要望に対してていねいに向き合い、計193件の改修を重ねてきた「現場の疑問を受け止める姿勢」だ。
飯田氏は、これらは地味で手間のかかる作業に見えるかもしれないが、現場の理解を深め、活用を日常化させるうえで不可欠だったと強調した。そして最後に、「将来像の共有」「現実的なステップの設定」「チーム一丸でやりきること」こそが、変革の挑戦を続けるうえでもっとも大切だとセッションを締めくくった。
