「うさぎと亀」に学ぶ、勘と経験を否定しない「想い」の共有
宮田 開発期間が決まっている場合、有効な進め方ですね。ノーリツさんの場合はいかがでしょう。
溝上(ノーリツ) 最大の壁は活用率の向上でした。活用しないという中には、「使わない」「使えない」「使い勝手が悪い」という段階があり、人によっては乗り越えられていない部分もあるのが正直なところです。そのため、活用率改善のためのアップデートは今も継続しています。
具体的な動きとしては、まず価値観や成功体験が違うメンバーに、なぜやるのかという「想いの共有」をしていきました。それはつまり、CRM活用の目的意識とゴールを明確にするということです。

溝上 うさぎと亀の童話がありますが、うさぎは亀を見ていたので亀を追い抜いたら寝てしまいました。亀はうさぎを見ないでゴールを見ていたので、ずっとゴールまで進めたのです。そこで先々のゴールを示しながら、現場の勘と経験を否定せず、そこにプラスアルファでデータという根拠をつけると営業活動がより良くなるという“想い”をまずチーム内で共有しました。

宮田 それでもなかなか活用が進まない場合は、具体的にどんなアプローチをしているのでしょうか。
溝上 現場の生の声を聞くことを心がけています。ツールを使っていなかった人が使うようになる過程では、大小を問わず成功体験が存在するものです。その成功体験を探し上げ、反映できるようにしています。また、使えていない人に関しては実態が見えづらいこともあるので、定期的に説明会を開いたり、営業会議に参加して意見交換する中で話を聞いたりしています。
「アジャイル開発」のコツとは? NBAで若手のスキル向上へ
宮田 次に、各社のCRMの運用形式を教えてください。どんなチーム体制で、どう活用されていますか。
武井(三菱UFJ銀行) 運用では溝上さんと同様にユーザーの声を拾い、どんどん改善することが大事だと思っています。今まで当社では、リリース後のバージョンアップが半年、1年後というサイクルでしたが、今回は4月にリリースしてからユーザーの声を拾って6月には5ヵ所を改修しました。
最初から完璧なものは作成できないと思っているので、リリースをして業務サイドの反応を聞き、改修していくかたちで進めています。そのため、ユーザーとシステムがひとつのチームとなったアジャイル型の高速開発体制を取っています。

武井 またシステム全体としては、営業活動の一連の流れをしっかりとサポートできるように意識して機能を構築しています。大切なのはデータです。CRMに情報を登録するとレコメンドの機能が活きてくるようになっていて、今後はAIも活用し、データが溜まれば溜まるほどサポートの幅が広がるような世界を目指していきます。
宮田 レコメンドの仕組みはどうなっているのですか。
武井 ネクストベストアクション(NBA)というかたちで、お客様ごとの個別の提案書が自動で作成される仕組みです。お客様の名前や自分の名前、銀行で保有している決算や入出金のデータも反映された提案書がCRM上で配信され、営業担当はそれを印刷して持っていけばすぐにディスカッションを始められます。「わたしのためにわざわざこんな資料をつくってくれたのか」とお客様の反応も上々で、社内ではとくに若手が喜んでくれていますね。
