両社のAI活用の実践と、AI開発やPoC成功のポイントについて語った前編はこちらから!
事業開発の“種”を見出す AIはクリエイティブな領域へ
田口(ナレッジワーク) ここまで、2社が取り組まれたリアルな実例をうかがいました。次のトークテーマは「今年、営業はどこまで進化できるか? AIエージェント元年に掲げる、私たちのAI改革宣言」。2025年が“AIエージェント元年”と言われている中、どういう姿を目指しているのでしょうか。
戸松(NTTコミュニケーションズ、現:NTTドコモビジネス) 営業領域のおけるAI活用は、営業担当をAIがサポートする「エージェンティックAI」と、AIが人の代わりに営業活動を行う「AIエージェント」というふたつの世界観があると考えています。そのうえで、2025年に取り組みたいテーマが「Sales Rep or Business Development」です。
欧米の営業担当者と名刺交換すると、肩書に「Sales Rep(営業担当)」と書かれている人と、「Business Development(事業開発)」と書かれている人がいます。Sales Repはいかにクイックにお客様の課題を見つけて適切な商品を販売するか、Business Developmentは、お客様と新しいアライアンスを組み事業開発することが求められているのでしょう。
しかし本気で事業開発に取り組むなら、お客様のマーケット環境やペインを分析し、ビジネスモデルの仮説検証を行い、ときにはジョイントベンチャーを結成し、ともに事業を推進しなければならない。これを営業担当が実行するのは、非常に難易度が高いですよね。
その視点で紹介したいのが、デジタルヒューマン「CONN(コン)」です。当社の9人の営業担当の顔から本物の人間のようなインターフェイスを生成したものです。このデジタルヒューマンに生成AIを活用し、事業開発における負担の大きい業務を代替してもらえるのではないかと考えています。

戸松 そのAIモジュールのひとつが、「AIリサーチモジュール」。かつては多大な労力を費やしていたマーケティングリサーチですが、AIにより、リサーチの効率と精度が恐ろしいほど向上しました。意思決定に必要な情報は企業によって異なりますが、これもプロンプトの設計次第で対応できます。これをデジタルヒューマンに学習させることで、お客様ごとに最適なリサーチ結果が回答されるようになる。これはかなり実現に近づいてきています。
もうひとつが「社会可能性発見AI」です。お客様と新しい事業を行う際には、ワークショップなどを実施してアイディア出しを行いますよね。しかし、これには10個のアイディアを出すのに1週間以上かかってしまうケースも珍しくありません。
そこでAIを活用すれば、「どのような社会課題を解決したいか」という問いに対して、お客様が持つアセットとNTTグループが支援できることを掛け合わせることで、30分で30個のアイディアが回答される。さらにはそれらを整理して、ビジネスモデルキャンバスを自動生成することもできます。AIは効率化のための活用が多いですが、2025年は、クリエイティブな領域でのAI活用も深めていきたいと考えています。

右:富士通株式会社 エンタープライズ事業 SVP ゼネラルビジネス事業本部長 小松 新太郎氏
中央:NTTコミュニケーションズ株式会社(現:NTTドコモビジネス株式会社) ビジネスソリューション本部 マーケティング部門長 OPEN HUB for Smart World 代表 戸松 正剛氏
左:株式会社ナレッジワーク レベニュー 執行役員VP 田口 槙吾氏
田口 この取り組みでは、人間のようなインターフェイスであることもポイントなのでしょうか。
戸松 ただ「生成AIは賢い」というだけで、数千人の営業が行動を変えてくれるのか。その点は少し疑問を感じています。営業が「AIと一緒に働いている」と感じるような、エモーショナルな面に訴えかけるインターフェイスやデザインを考える。そうした右脳的な発想もAI活用には必要なのではないでしょうか。これはぜひ皆さんにご意見をいただきたいですね。