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「未達の分も次の期で取り戻せ」 営業現場で生まれる悪循環
人数は1.5倍に増えたにも関わらず、ひとりあたりの営業生産性(新規創出売上)は1.4倍に改善—これは私が携わったSaaS企業が、1年半ほどで残した数字です。組織規模を拡大しながらも、生産性を大きく向上できました。もちろん私ひとりで成し遂げた成果ではありませんが、営業改革を主導し、組織構造を変革したことが成果の根幹にあることには疑いがないと思います。
この成果に行き着くまでにはさまざまな試行錯誤と、「ドライバーKPI」の発見プロセスがありました。そのプロセスを、順を追ってご紹介していきます。
営業改革に着手する以前、組織としては営業目標の未達が続いていました。未達になると、「未達の分を次の期で取り返せ」とばかりに、さらに目標が積み増されるという悪循環です。営業現場としても「この目標達成はどうせ無理だろう」という空気が漂っていました。
とにかく何かを変えなければ、という空気はあるものの、何をどう変えれば良いのか、誰もわかっていないという状況です。具体的には次の3つのような状態に陥っていました。

SFAを整備しようとして、かえって混乱を招いている
すでに100人を超える営業組織になっていたため、SFAによるマネジメントは必須という状況でした。しかしながら、当時のSFAはまさに「とりあえず記録させている」という状態。データから示唆が得られるわけでもなく、また活用ができていないため、現場の営業もまともに記録をしていない状況です。
さらに、営業の現場を理解していないSFA担当者が「今後はこの情報も記録するように」と告知し、入力工数ばかりが増えることで現場はさらに不信感を抱く……という負のスパイラルにもなっていました。
売れない理由を、他部門に責任転嫁している
「このプロダクトではもう売上はつくれません」
「トスされるリードの質が悪いから、商談の工数だけとられて売上につながらない」
当時は、そんな声があふれていました。営業は本気でそう考えているものの、主張が事実かどうかを確認することもできない。まさに停滞感・閉塞感につながっていました。
上層部の方針変更を、現場が受け流してしまう
上述したような状況で、何もファクトがない中での判断を強いられるため、組織が混乱していました。上層部としては、営業部署の再編をしたり、戦略を大きく転換したりと、動けるだけのことは指示します。一方、現場からすると「それをやることで、何の意味があるのか?」「現場のことを何もわかっていないのに、またやり方を変えるのか」……そんな反応が多かったのです。
つまりは、成果の出ない方針変更が続いたことで、上層部への信頼感も失われていっていたという状況でした。