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[振り返り]ドライバーKPIの特徴と見つけ方
ドライバーKPIの特徴と見つけ方について、あらためて整理しておきます。
ドライバーKPIの特徴
- “質的な要素”を含んでいる
- 行動によってコントロールできる
- 成果に本質的な影響を与える
ドライバーKPIの見つけ方
- 現状に疑いを持つ
- 「良い顧客」「良い行動」を見極める
- ドライバーKPIの設定と検証
ここからは具体的に、どのようなプロセスでドライバーKPIの設計を進めれば良いか、説明していきます。
“違和感”の発見 高い視座を持ち、現状を疑う
ドライバーKPIを見つけるにあたり、最初に必要なのは「違和感」です。そもそも、高い視座をもって「現状を何とかして変えよう」と思っていなければ、何も変わりません。そして、飛躍的な成長ができない組織は、常にこの点でつまずいています。
たとえば計画上、目標達成がギリギリだというケースを考えてみましょう。大半の人は「達成のために、前もって活動量を増やそう」と考えます。変革が起きていない組織では、ほぼ100%がそうなるかと思います。
しかし、この「量を増やして何とかギリギリで達成する」という発想そのものが停滞感を生む要因なのです。
実際には、単純に量を増やすという取り組みはほとんど失敗に終わります。量を増やした分、行動の質が落ちてしまうためです。「商談数を頑張って増やしたけど、成約率と単価が悪化してしまい、意味がなかった」という経験をされた方は多いのではないでしょうか。
では、行動の“質”を変えることができないのはなぜか。大きな理由は「変化のリスクを受け入れられない」ということです。

仮に“違和感”を発見して、大きく行動を変えるチャレンジをした人がいたとします。もしそれが失敗に終わった場合、「前例踏襲でギリギリ未達に終わった人」「リスクをとったチャレンジの結果、大きく未達になってしまった人」を比べて、どちらを高く評価するでしょうか?
ほとんどの組織は、単純に達成率の高かった前者を評価してしまいます。これでは、「現状を疑って、違和感を発見しよう」と思う人は現れません。
変革の最初に必要な“違和感”の発見には、組織全体で「高い視座を持ち、より大きな成果のために現状を疑い続けよう」という共通認識が必要です。そうして初めて、現場から変革のヒントとなる違和感が見つかるのです。
「挑戦して成果を出した人を評価しているから大丈夫」は、誤り
くどいようですが、大事なことをひとつ。「チャレンジして成果を出した人のことを、大きく評価しているからウチは大丈夫だ!」というのは誤りです。成果を出しているのだから、評価するのは当然と言えます。
そうではなく、「成果が出ていなくとも、取り組みの質が低かったとしてもチャレンジを評価する」という“胆力”が必要なのです。チャレンジした結果、成果が出なかったときに評価が下がる組織では、誰もチャレンジしようとしなくなっていきます。
マネージャーの立場であれば、「こんな質の低いチャレンジを評価するわけにはいかない」と思うかもしれません。それでも変革を起こすには、率先してチャレンジをしたプロセス自体を評価しなければ誰も動かなくなってしまうのです。
これはもはや組織改革の第一歩と言えます。ドライバーKPIの発見においては、この点がもっとも難易度が高いとすら言えるでしょう。