前回記事
ドライバーKPIを発見するための、現場での活動
戦略を見直して動き出したことで、3ヵ月もすると“普通の組織”になっていきました。戦略を理解しようとする姿勢がある、メンバーが決めた戦略に沿って動こうとする、データを見て振り返りをできるようになるなど、大きな変革を行うための基礎ができた状態です。基礎ができたと判断した私は、そこからは率先して営業の現場に出向き、リアルな営業の商談と顧客の反応を把握しにいくことにしました。
第1回でも書きましたが、ドライバーKPIの発見の第一歩は“現状に疑いを持つ”こと。もっと大きな変革が起こせるに違いないという“疑い”を持って、現場に足を運びました。
そういった背景もあり北は北海道から、南は鹿児島まで、とにかく足を使っていろいろな場所、いろいろな営業メンバーに同行しました。
ただ商談に同行するだけではなく、リード獲得のための飛び込み営業まで一緒にやったりもしました。「上場企業の執行役員」という肩書きで飛び込み営業をしてくる会社は、そうそうないだろうと思います。こうして深く現場に潜り込んだこともあり、かなりの解像度で現状を把握することができました。
現場での違和感をきっかけに、「売り方」を変える
同行する中でわかったのが、「コモディティ化した機能ばかり提案しており、競争優位性をプレゼンできていない」ということでした。数年前の成功体験をアップデートできていない結果、当時は先進的だったはずの価値も、いまや常識となり、ただそれを繰り返し訴求するだけの状態に陥っていました。
一方で、「競争優位性があるのに、ちゃんと提案できていない」伸びしろの機能があることもわかりました。前述のコモディティな機能Aに対し、追加オプションという位置づけであった機能BやCを「これは他社にはない」「これを標準機能にしてくれればいいのに」というほどまで支持してくれる顧客が、一定数いることがわかったのです。

「機能B、Cを提案できれば各段に数字が伸びるのではないか」。最初のステップである「現状に疑いを持つ」ことから、飛躍した仮説が見つかりました。
そこで即座に「機能B、Cをあわせてパッケージ販売しよう!」と決断しました。それまでの提供価格を100とすると、パッケージは300という単価になります。
営業現場からは当然「そんな金額では売れないのでは」と心配の声もありました。しかし、実際に提案してみると非常に好反応で、「ほかのツールとは全然違うね」という意見をいただけるようになりました。
結果としては、成約率は下がるどころか、微増したうえで単価は3倍になったのです。実のところ、売り方を大きく変えるのは初の試みでした。結果として、これが極めて大きなターニングポイントになりました。