組織編成の検証にもSFAを活用 データドリブンな意思決定を実現
──Salesforceの活用も含めて、具体的な取り組みの内容を教えていただけますか。
もともと社内にはデータ活用推進係というチームがあり、IT面からSalesforceを担当していました。データ活用推進係がシステム面での設定や管理を行い、識学推進課が実際の運用や分析を担当するという役割分担です。このように技術面と運用面の両方からアプローチすることで、より効果的な活用が可能になりました。
商談のフェーズ設計には『無敗営業 「3つの質問」と「4つの力」』(高橋浩一著、日経BP)を参考にしました。フェーズごとに必要な情報を明確にし、たとえば、「提案獲得」のフェーズに移行するためには提案日が確定していないと進めないなど、プロセスを厳格に管理しています。
また、大きな変更点として、インサイドセールスのナーチャリングチームを営業本部の中に移管しました。そのうえで、電話をかける担当者と初回商談を行う担当者を統一したのです。従来はアポイントを取得したらすぐに営業に引き継いでいましたが、最初に架電した人が自ら初回商談まで実施し、そのうえで具体的な提案に関心がある場合、営業に引き継ぐというフローへ変更しました。

初回商談をインサイドセールスが担当することで、電話をかける担当者が識学の理論や商品知識を身につける必要が生じます。Salesforceの中にイネーブルメントプログラムを構築し、メンバーの育成にも活用しています。新しく発掘型のインサイドセールスチームを立ち上げるにあたって、必要なスキルや知識を身につけるためのコンテンツや目標をSalesforce内で一元管理し、本人が「いつまでにどんなスキルを習得する必要があるか」を一目で理解できるようにしました。
──この改革によって、どのような成果が出ているのでしょうか。
数字で明確に表れています。改革前は20%前後だった提案実施率(商談数に対する提案実施の割合)が、2024年10月以降は約30%へと増加しました。ナーチャリングによる掘り起こしの効果も1.5倍になっています。
定量的な成果だけでなく、定性的な面でも変化がありました。Salesforceを通じて細かいKPIを設定し、分析することで、単なる営業プロセスの管理だけでなく、組織編成にも活用できるようになりました。たとえば、営業部とコンサルティング部の統合を検討する際も、Salesforceのデータに基づいて実際の効果を検証しました。また、残業せずに目標を達成するための組織編成や、売上構成比に基づいた人員配置など、データドリブンな意思決定が可能になりました。