「入力されない」は組織の問題 ツール活用の本質とは
──SFA/CRM活用では、しばしば「入力されない」といった課題が生じます。そうした壁は生じましたか。
「入力されない」「活用されない」といった問題は、本質的には組織の問題です。決定権者が不明確、管理指標や目標が曖昧、ルール遵守の意識が低いといった課題があると、どんなに良いツールを導入しても機能しません。
識学はまさにこの「役割と責任の明確化」「結果設定とKPI管理」「ルール遵守の文化」を構築するのが得意分野です。「すべての意思決定は事実(数値)に基づく」という考え方をベースに、「こう思う」といった主観や「あるべき姿」ではなく、数値という「現実」で管理することを徹底しています。
Salesforceから抽出されるデータは、まさに「現実」を映し出すもの。たとえば、ある営業担当者が「頑張っている」と感じていても、Salesforceの数値が目標に達していなければ、それは「現実」として受け止め、何が課題なのかを分析します。
加えて、識学では「役割と責任範囲の明確化」を重視しています。そのためSalesforceの各フィールドやプロセスにも、誰が、いつまでに、何をするのかという責任と権限を明確に設定しています。
さらに、大きな目標を小さな達成可能な単位に分解していく「結果の因数分解」という考え方に基づき、Salesforceでも、企業全体の売上目標を部門別、個人別、日次・週次の活動指標にまで分解して管理できます。これにより、各メンバーが「自分は今何をすべきか」を明確に理解できるようになりました。
こうした識学の基本的な思考は、「入力されない」「データが更新されない」といった問題を解消することができます。Salesforceのような管理ツールとは相性が良かったですね。
──今後のチャレンジを教えてください。
今後はエンタープライズ企業にも挑戦していく予定です。識学のプロダクトライフサイクルを考えると、アーリーアダプターの中小企業での認知はある程度獲得できました。次のフェーズとして、より大きな市場を狙っていきたいと考えています。
具体的には、『エンタープライズセールス 大企業担当の営業組織が成果を出し続けるためのバイブル』(佐藤亮 著、松村泉 監修、翔泳社)を参考に、ターゲット企業を300~500社設定し、属性や情報を入れてポテンシャルと難易度でランキング化しました。アカウントプランシートを作成し、ポテンシャルマップなども活用していく予定です。
これらの施策も、Salesforceで管理していく計画です。Salesforceを効果的に活用してきたからこそ、新たな戦略に挑むときのスピードも速く、参考にしやすい環境が整っています。

──最後に、SFA/CRMの導入・活用に挑戦している営業リーダーや営業企画・IT部門の皆さんに向けて、メッセージをお願いします。
「ツールを入れたら劇的に良くなる」というのは錯覚と言えるでしょう。SFAはとても良いツールですが、もし活用に苦戦しているなら、ツール導入という目の前の課題よりも、障壁となっている組織の問題を洗い出すことが先決です。
管理の役割、責任や権限は明確になっているか、目標とKPIをきちんと管理しているか、挨拶や締切厳守など凡事徹底できているか──。これらの基盤がなければ、いくらツールを導入しても効果を発揮しません。まずは組織の土台を固め、そのうえでSalesforceのような優れたツールを活用することで、真の成果につながると思います。
──本日はありがとうございました!