“売れない営業”が目標比5.5倍の成果を挙げるまで
──S1グランプリ、優勝おめでとうございます! 今回の出場のきっかけ、ご自身のノウハウを発信しようと考えるに至ったきっかけを教えていただけますか。
ありがとうございます。2024年3月に「営業天下一武道会」というセールスイベントで優勝したのですが、その主催者の方にもうひとつの大きな大会である「S1グランプリ」にも出てみたらどうかと、進言をいただいたことがきっかけです。
私は昨年スポンサーズブーストという新会社を立ち上げました。そのPRのために営業スキルを活用して、出られるイベントは全部出ようという思いがあったんです。S-1優勝後は経営者の方からも反応をいただいて、手ごたえを感じました。
──プレゼンでは「1社めの営業時代はなかなか売れずに苦労していた」と語られていましたが、その後「ビジョナリーセールス」に取り組んでからは目標比5.5倍の成果を挙げていらっしゃいます。どのようなきっかけでビジョナリーセールス」に取り組むことになったのですか。
学生時代から起業したい思いを持っていたのですが、いったん社会に揉まれようと就職したのが東京海上日動でした。ところが、入社してからはなんとなく周りに流されて、飲み歩いてばかりで仕事に身の入らない日々が2年間続きました。
そんな中、ビジョナリーセールスに取り組む契機は3年めで訪れました。社内でも有名な優秀かつ厳しい上司につくことになったのですが、会った瞬間に「お前、今仕事に向き合っていないだろ」と見透かされて。その上司に、起業したいという意欲をもう一度思い出させてもらって、営業という仕事に本気で向き合うチャンスをもらいました。その上司が実践していたのがビジョナリーセールスだったんです。
その上司は、必ず「お客様の事業をどう伸ばすか」という提案から商談に入っていました。お客様の事業や課題に寄り添っていれば、信頼され、契約をいただけます。その先でお客様の事業が成長すれば、さらに自社の利益も伸びます。ビジョナリーセールスは、とても本質的な営業のスタイルだと感じました。
ビジョナリーセールスでたどり着いたふたつの事業
──その上司の方にならうかたちで、西里さんもビジョナリーセールスを始めたのですね。
はい。とはいえ、お客様が見据えているさらに先のビジョンを提案することは、非常に難しいことです。若手のいち営業パーソンでは何もできないので、最初はその上司に必ず同行してもらっていました。
成果を感じたのは、とあるお客様の売上が、私が提案した別分野の事業でも立ち始めたときです。浄水事業が主軸のインフラ系企業だったのですが、そのきれいな水を活かしたオリーブ栽培の事業を提案したんです。実はその上司の担当する別の農業系の企業が、「きれいな水をどうつくるか」という課題を抱えていて。両社の課題をつなぎ合わせる提案から、事業化に至りました。
こういった社内外のリソースをためておくことが、ビジョナリーセールスにおいて重要な活動です。
──その後、副業も経て起業を実現されています。現在は、どのような事業領域に注力しているのでしょうか。
自社でもビジョナリーセールスの発想で、クライアント企業に提案しています。そのひとつとして、インサイドセールス×障がい者雇用の事業に取り組んでいます。障がい者の法定雇用率を守っている企業は残念ながら4割と少なく、その企業のほとんどが本業と関係のない軽作業などの業務を任せています。
しかし、本来はもっと本業の利益に貢献できる関わり方があるはずです。そこで当社では、BPOで障がい者の方にマーケティングやインサイドセールス業務を任せて、その人材がマッチしたら雇用していただくという取り組みを行っています。
この事業は、在宅のBPO人材を募集したときに、お子さんが難病を抱えている医療ケア児ママさんが応募してくださったことがきっかけになっています。医療ケア児の親御さんを在宅で雇用する事業から始めて、障がいのある方の雇用へと展開しています。
また、新会社のスポンサーズブーストでは、企業が大学高校部活に小口スポンサーできるプラットフォーム「スポンサーズブースト」を提供しています。昨今、多くの地方自治体は若者の「地元離れ」の課題を抱えていますよね。その課題を解決するために、さまざまな企業が大学・高校の部活を小口からスポンサーすることができ、「応援しながらリクルーティングにつなげる」という新たな仕組みを構築しています。また、どちらの事業も「社会性と経済性の両立」という事業理念を基に日々奮闘しています。