マネジメントの可能性を信じ、「語学のようにトレーニングできる世界」を目指す
──EVeMは「ベンチャー企業にマネジメントの型を提供する」という非常に新しい領域で創業されています。あらためてマネジメントに注目したきっかけをうかがえますか。
メガベンチャ―になる前のDeNAに8年半ほど在籍していたのですが、会社がぐんぐん伸びていく中では常にマネジメントが不足していて、その役割を任せられることが多かったんです。営業やマーケティングとしての経験は中途半端だった自分が、ビジネスパーソンとして世の中に存在感を示すなら「マネジメントの領域だ」と考えるようになりました。
まずはマネジメントの力で事業を伸ばす経験を積もうと、ハウテレビジョンへ入社します。とても良いサービスを提供しているものの、伸び悩んでいるベンチャー企業でした。収益を上げるための組織づくりやKPI管理など、あたりまえのマネジメントに取り組んだことで、結果として東証マザーズへの上場に導くことができたのです。この成功体験を経て、「マネジメントには事業を伸ばす力がある」とあらためて実感したんですよね。
そもそも多くのベンチャーは平均年齢が若く、マネジメント経験のない人が起業することもざらです。組織が2~30人の規模になってくると当然マネジメントの必要性が出てくるのですが、経験がないゆえにマネジメントが機能せず、人が辞め、もう一度仕切り直してるところで競合が登場し、事業が立ち行かなくなり、資金が尽きることもあります。
ハウテレビジョンが成長する中で、「マネジメントを教える機会」も増えていきました。ところがベンチャーのマネジメントについて「これを読んでください」「これを受けてください」と言える書籍や研修が当時なかったんです。そこで資料を300枚ほど貼り付けたnote「ベンチャーマネージャーのマニュアル」を書いてみたところ、「マニュアルをもとにマネジメントを教えてください」という声を想定以上にたくさんもらって。そこで会社をつくってみようかなと思いました。
──「マネジメントを教える」ことに想像以上に需要があったわけですね。
ポジショニングも変わっていると思います。我々が提供するのは組織コンサルティングではなく、ベンチャー企業のマネージャー個人に対してのトレーニングです。よくある原理原則の指導ではなく、限りなく「業務マニュアル」に近いものを提供します。2023年12月にはトレーニングのリニューアルを実施したのですが、ひと言で言うとまるで語学トレーニングのように、マネジメントをトレーニングすることを可能にしました。
──気になります。
たとえば、時計を指差して「これを英語で何と言うか?」と問われれば「Watchです」と答えられますよね。このようにマネジメントを語学のようにとらえるための研究を3年半続けてきて、そこから60の「マネジメントの型」を生み出しました。状況や問題に応じてパっと型を取り出せるようになるための訓練はとても面白いと思うので引き続き多くのマネージャーに届けていきたいですね。
ちなみに、僕のように現役でベンチャーのマネジメントをしながら「マネジメントを体系化して教えたい」と考える人は少ないと思います。実は、創業ではなく研修会社への転職も考えていたのですが、全部落ちたんです。理由は「若すぎるから」。あなたでは、受講生のマネージャーたちを「御せない」と言われて……。そういうことではなく、いままさに悩んでいるマネージャーを助けたいと思ったのも創業の後押しとなりました。