“目的なきDX”は成果を生まない
押さえておくべき3つの課題
會田 主な課題は3つあります。「目的意識」「全体感の把握」そして「ゴールから逆算したデータの持ち方」です。本来DXは、経営戦略からあるべき姿を導き出したのち、オペレーションの設計やデータの取得といったデジタルの活用に落とし込んでいくべきです。しかし昨今はDXという言葉が独り歩きして、“目的なきDX”が横行している。DXは何よりも先に、目的を明らかにすることが必要です。
ふたつめの「全体観の把握」とは、経営層が自社のデータの構造を把握するべきだということです。今はAIの利活用を避けては通れませんが、そこで欠かせないのが「データの取得」。企業には大きく分けて「テキスト・画像・音声」という3種類のデータが存在します。中でも音声は、パーソナリティやニュアンス、緊急度といった貴重な要素を含んでいるにもかかわらず、多くの企業でビッグデータ化が進んでいません。自社にどんなデータがあり、それらが活用できる状態になっているのか、把握する必要があります。
しかし、自社が持っているファイルをただデータ化すれば良いのかと言うと、そうではありません。データサイエンスの世界では「GIGO」(Garbage In, Garbage Out)という言葉があるように、使えないデータからは使えない結果が生まれてしまいます。そこで3つめの「ゴールから逆算したデータの持ち方」が重要になってくるのです。
パートナーによる“共創”が、
顧客の体験価値をさらに高めていく
──テキストや画像、音声といった情報を企業の資産としてデータ化するという点で、両社は共通項があると思いました。ツール面でも「Mashmatrix Sheet」と「MiiTel for Salesforce」双方の機能を組み合わせることで新たな価値を提供されていますね。
冨田 実は今回の連携の背景には、共通の顧客であるWOW WORKS様の取り組みがあります。同社のインサイドセールス組織でMashmatrix SheetとMiiTelを組み合わせて活用している話をうかがい「我々の連携にはニーズがあるのではないか」と判断し、RevCommさんにご連絡しました。
DXの一歩めである“データの蓄積”がある程度できるようになると、自然と「業務の効率化」にフォーカスが移りますが、この“活用フェーズ”のコストも軽減するのが今のチャレンジと捉えています。Mashmatrix Sheet単体としても、条件の絞り込みや活動ログの閲覧が可能であるなど、インサイドセールスの方が使いやすい画面が設計されています。
冨田 それに加えてMiiTelと連携することで、Mashmatrix Sheetの画面からMiiTelを起動してそのまま架電し、その履歴を直接Salesforceへ記録できるようになりました。複数のツールの良い面を活かし、顧客へシームレスな体験を提供しながら業務を最適化するパターンを構築できたのは、大きな成果ですね。
會田 WOW WORKS様の事例は当社も把握していました。当社はカスタマーサクセスにとても力を入れているのですが、WOW WORKS様からこの活用事例を聞いた担当者が社内で共有したのです。それにアライアンス担当が反応し、より具体の話へ進化していきました。
当社はさまざまなツールと連携してカスタマーバリューを向上する“オープン戦略”をとっています。その中でも、マッシュマトリックスさんとの連携は相性が良かったです。というのも、MiiTelが支援する営業のボイスコミュニケーションの前後には、ビフォアワーク/アフターワークが生じます。カスタマー情報を調べたり、商談内容を報告したりといったタスクですね。分断されていたこれらの業務が、Mashmatrix SheetとMiiTelの連携によりシームレスになりました。今後はトークスクリプトの自動作成や最適なアプローチのサジェスチョンなど、顧客の体験価値をさらに高めていくことができると思っております。
我々が提供する価値の本質は、短期的な業務削減や効率化ではなく、「音声(会話)をビッグデータとしてアセット化する」という、より中長期的なものです。Mashmatrix Sheetとの連携は、「いかに顧客にデータを活用してもらうか」という観点で、とても意味のあるものでした。