“20年の遅れ”はむしろチャンス
データの収集・蓄積をゼロから始める
──システム連携が新たな価値を創出することを踏まえ、企業の営業DX推進者は、今後どのような基準・プロセスでシステムを選定していくべきでしょうか。
冨田 まず、DXにおける課題をきちんと洗い出すことが重要です。たとえば当社がコンサルティングをする中では、顧客情報の入力にボトルネックを抱えている企業に多く出会いました。その課題を解消するために施策で十分対応できる場合もあれば、ツールの導入が強力な手段になることもあります。いきなり大きな枠組みでビッグバン的なDXを目指すのではなく、まずは業務改善の一環として一歩一歩積み重ねていくプロセスが重要ではないでしょうか。
會田 データが極めて貴重な資源になっている中で、「本当にそのベンダーにデータを預けて良いのか」という観点で、セキュリティの安全性を確認することも重要です。大企業がツールの利用を制限していることは一見時代遅れに思えるかもしれませんが、実はセキュリティが怪しいツールは世の中にたくさんあります。守らなければいけないのは、自社のデータだけではなく顧客や従業員の情報です。DX担当者は、こうしたデータの取り扱いの安全性をどう担保するかという視点を持つべきだと思います。ベンダーを選ぶときには、必ずセキュリティについて質問することをお勧めします。
──最後に、自社の営業DXに課題を抱える営業リーダーへ向けて、メッセージをお願いします。
冨田 これまでデジタルに馴染みがなかった業界では、DXの道のりを遠く感じてしまうかもしれません。しかしそこでベンダー任せにしてしまうと、成功確率を下げることになります。まずは自分たちで課題を把握することが重要です。そして、それを解決するためのツールや環境としては、Salesforceをはじめさまざまな選択肢があります。それらのツールをどう組み合わせるかは専門的な知見も必要になるので、そこでコンサルティングやITベンダーの力を借りていくのが良いのではないでしょうか。
會田 生成AIの登場でテクノロジーの進化はますます加速しており、人間がやらなくて良い領域はデジタルに置き換わっていきます。そのような時代の中、我々はどのようにテクノロジーを組み合わせて顧客の体験価値を上げていくのか、中長期的な観点で考えなければなりません。自社のツールがどのような価値を提供できるか、どうすればそれを最大化できるか、今後も問い続けていきます。
また、DXでは自社のデータを“どのように集めるか”がとても大事です。ただデータを集積するだけでは意味がありません。そんな中、日本のDXが10~20年遅れているということは、むしろチャンスかもしれない。なぜなら、すでに積み重なったデータアーキテクチャを変えるのは困難ですが、何もない更地でゼロから考えることは容易にできるからです。社会構造が変化する中で、まさに今がDXのチャンス。データの収集・蓄積という第一歩から、今すぐやるべきだと思います。
──おふたりとも、本日はありがとうございました!