10年間にわたるセールスDX 鍵はデータ分析とイネーブルメントの両輪
――成田さんはいかがでしょうか。10年間にわたるセールスDXの取り組みにおいて、どのようなことに苦労されましたか?
成田 10年前にSFAを導入した当時は受注の結果管理にしか活用できておらず、先を見通すためのデータが入っていない状況でした。とはいえこの10年でデータはそれなりに溜まってきたこともあり、2019年5月にセールス・イネーブルメントやマーケティングを手がける「Data.Camp」という新しい組織を立ち上げました。
当初は組織やサービスごとにバラバラのフォーマットでデータが存在していたり、システムもバラバラだったりと課題がありましたが、現在は組織の垣根を超えてどうデータを集め、集めたあとはどのようにクレンジングするかを考えています。完全にきれいなデータを追い求めるのではなく、目的から逆算してどこで割り切るか、というのも大切にしている視点です。
そもそも当初データがバラバラに存在していたのは、組織自体に連携の文化がなかったからだと思います。昔は営業といえば「俺の背中を見て覚えろ」という感じでしたし、当時はネットワークを中心とした提案が多く、業界やアカウントが違っても結局のところ同じノウハウで提案はできるという状況でした。現在はお客さまの課題も多様になり、「n×n」でソリューションが必要になっていますから、アカウント単位で取り組むには難易度が高くなってきています。
――そんななか、10年前のSFA導入はかなり早いほうであると思います。御社のデータドリブンマネジメントは、どのように進んできましたか。
成田 当初の活用方法はまさに、「守り」の受注管理ツールになってしまっていました。現場はデータ投入の意義を理解できず、投入が面倒だという動きが出てくるんです。現場の入力を促すという意味では、やはりトップが「ちゃんと見てるよ」というメッセージを出し、推奨するのも重要だと感じています。
納得感のある情報を伝えられるのがデータの強みですが、それとともに、現場のネクストアクションを提示してあげる役割も重要です。セールスDXのコンセプトとしては、データアナリティクスとセールス・イネーブルメントをセットで進めてきました。
具体的には、基本的なことですが、デジタルで顧客接点を増やしていくことを軸にしてきました。営業が「足でニーズを稼ぐ」のには限界がありますが、今後自分たちのソリューションを提供できる可能性のあるお客さまと長期的な接点をつくることができるのは、デジタルの強みです。デジタル行動のデータがインサイドセールスに渡り、そこでもまたデータが入力され……と、デジタルとリアルの垣根がなくなるこれからの時代は、よりデータの重要性が増すと思います。
――千葉さんから見て、NTTコミュニケーションズさんの取り組みを、ほかの日本企業はどのように真似できると思いますか?
千葉 セオリーに忠実であるというのが特徴のひとつだと思います。「データを溜めるだけではなく活用する」という基本があり、さらにセールスDXのスコープがテクノロジー活用だけではなく、イネーブルメントまでカバーしているというのは見習うべきところだと思います。
言い方を変えると、お客さまに対峙している「点」の営業活動だけを変えようとするのではなく、部門の壁を超えてデータを一元化することで、カスタマージャーニーの中で「リアルとデジタルの行ったり来たり」を設計することが実現できている。そのうえで現場の営業力を高める「教育」を組み合わせていることがわかりました。
今後はそのデータをもとに上司がサポートしてくれるような、言うなればデータがエージェント(相棒)になるような未来も感じますよね。さらに営業担当者が、データをもとに「いま、社内の誰と連携すれば勝率が上がるのか?」と戦略を立てることができるくらいに、データドリブンな環境が当たり前な状態になるのではないでしょうか。
おそらくNTTコミュニケーショズさんはそこに向かっていて、リーディングカンパニーとして面白いなと話を聞いていました。しかも10年という長い時間をかけている。実はこれがもっとも大事なのではないかとも思います。