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SalesZine Day(セールスジン・デイ)とは、テクノロジーで営業組織を支援するウェブマガジン「SalesZine」が主催するイベントです。 丸1日を通してSales Techのトレンドや最新事例を効率的に短時間で網羅する機会としていただければ幸いです。

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大手企業への営業戦略と実践~持続的な事業成長に向けて~ 『エンタープライズセールス』出版記念イベント by SalesZine

2024年11月20日(水)15:00~17:10

常に高い売上目標を達成し続けなければいけない営業組織。先行きの見通しが立たない時代においても成果を挙げるためには、過去の経験にとらわれず、柔軟に顧客や時代に合わせて変化し続けなければなりません。変化に必要なのは、継続的な学びであり、新たなテクノロジーや新たな営業の仕組みは営業組織の変化を助け、支えてくれるものであるはずです。SalesZine編集部が企画する講座を集めた「SalesZine Academy(セールスジン アカデミー)」は、新しい営業組織をつくり、けん引する人材を育てるお手伝いをします。

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セールスDX成功の鍵は「カルチャーを変える勇気」――EY千葉氏×NTT Com成田氏対談

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 営業組織におけるテクノロジー活用の重要性が叫ばれるなか、日本の大手企業が「データを活用する営業組織」になる前にぶつかる壁も多い。今回は、10年にわたり「セールスDX」を実践してきたNTTコミュニケーションズで、マーケティング部門長を務めた成田大助さんと、営業領域におけるデータドリブンマネジメントに知見を持つEYストラテジー・アンド・コンサルティング 千葉友範さんの対談を通じて、日本の大手企業が「セールスDX」を成功させるためのポイントを探った。

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日本企業でSFAは守りのツールに? データに基づく意思決定で好循環を

――本日はセールスDXの中でも「データドリブンマネジメント」をテーマにお話をうかがわせてください。まずはおふたりの、営業に関わってきたキャリアについてうかがえますか。

千葉(EYストラテジー・アンド・コンサルティング) 大学院在籍中に産学官連携で設立されたベンチャーに参画したあと、コンサルティングファームに就職し、2014年から外資系大手SFA企業に出向してアライアンスビジネスの強化を支援しました。早い段階で営業プロセスを科学する組織を経験したことが大きな転機となり、営業を統括する立場でベンチャー企業に転職しました。その後当社に移りましたが、営業マネジメント経験は今のキャリアにも活きていると思います。

成田(NTTコミュニケーションズ) 私は弊社でネットワークエンジニアとしてキャリアをスタートし、サービス企画・開発や経営企画部でサービス戦略策定などに携わりました。その後営業組織に異動し、営業部隊を支援するグループのリーダーを務めました。社内でも少し珍しいキャリアですが、「営業のしがらみ」を知らない分、ピュアな状態でデータドリブンセールスの体制づくりに取り組むことができたんです。現在はさらにIT部門に移り、全社のDX戦略を任されています。

 
千葉さん/成田さん

千葉 コンサル業界にもエンジニアから転向する方がいますが、正直羨ましいと思いますね。技術側の経験があると、アイデアを出すだけでなく、お客さまが最後に詰まってしまうところで具体的なソリューションを提供することができますよね。

成田 たしかにそこは、社内のセールスDXを進めるなかでも大切にしてきたポイントです。全社DXという今のミッションにアサインされたのも、新しいサービス実装を支援した経験が多かったからかもしれません。

――千葉さんから見て、日本の大手企業において「データドリブン」が定着しない理由はどこにあると思いますか。

千葉 経営層やマネージャーがツールをきちんと使わないから、のひと言に尽きると思います。日本人は真面目ですから、きちんとした指示があれば現場の方はしっかりやると思いますよ。

 ツールが使われない理由のひとつに、整備されていないデータの問題があります。使われないメカニズムはシンプルで、「現場にとって意味のないデータ」を入力させてしまっているからです。現場では意味がないと感じるから積極的に入力しないし、使わないし、結局箱だけがあって中身はスカスカという状態になります。これにより、いわば「汚いデータ」だけが溜まって、マネージャーも使わなくなるため、さらに悪循環になってしまうわけです。

 私は営業マネージャー時代、チームメンバーに営業日報の提出を求めませんでした。何十人もの「ドラマチックな営業日報」は読むほうもたいへんですし、データが入力されていれば必要な情報はダッシュボードで可視化され、それをもとに意思決定できるからです。マネージャーがデータを見て意思決定していることが伝われば、現場のデータ入力も定着するという好循環が生まれます。私の場合は経営会議にもダッシュボードのデータだけを提出し、会議のためにExcelで別途まとめ直すようなことはしていませんでした。

 
EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 ディレクター 千葉友範さん

成田 たしかに、弊社でも経営層が、事業戦略としてデータドリブンセールスを推進するメッセージを発信しており、実際セールスDXを加速させる原動力となりました。

千葉 ツールを導入するとき、海外では「引き算」の発想になります。「このツールを導入すれば、いままでのこの作業は必要なくなるよね」と合理的に業務を変革するわけです。これに対し日本企業は、あれもこれも報告させようという「足し算」の発想になってしまうんだと思います。そのうちに本来、戦略的な営業活動の武器となる攻めのツールであるはずのSFAが、管理を担う守りのツールとなってしまいます。データの入力と可視化は、「これを見て誰が意思決定するのか?」と、アクションにつなげることがもっとも重要です。

10年間にわたるセールスDX 鍵はデータ分析とイネーブルメントの両輪

――成田さんはいかがでしょうか。10年間にわたるセールスDXの取り組みにおいて、どのようなことに苦労されましたか?

成田 10年前にSFAを導入した当時は受注の結果管理にしか活用できておらず、先を見通すためのデータが入っていない状況でした。とはいえこの10年でデータはそれなりに溜まってきたこともあり、2019年5月にセールス・イネーブルメントやマーケティングを手がける「Data.Camp」という新しい組織を立ち上げました。

 当初は組織やサービスごとにバラバラのフォーマットでデータが存在していたり、システムもバラバラだったりと課題がありましたが、現在は組織の垣根を超えてどうデータを集め、集めたあとはどのようにクレンジングするかを考えています。完全にきれいなデータを追い求めるのではなく、目的から逆算してどこで割り切るか、というのも大切にしている視点です。

 
NTTコミュニケーションズ株式会社 デジタル改革推進部 DX戦略部門 部門長 成田大助さん

 そもそも当初データがバラバラに存在していたのは、組織自体に連携の文化がなかったからだと思います。昔は営業といえば「俺の背中を見て覚えろ」という感じでしたし、当時はネットワークを中心とした提案が多く、業界やアカウントが違っても結局のところ同じノウハウで提案はできるという状況でした。現在はお客さまの課題も多様になり、「n×n」でソリューションが必要になっていますから、アカウント単位で取り組むには難易度が高くなってきています。

――そんななか、10年前のSFA導入はかなり早いほうであると思います。御社のデータドリブンマネジメントは、どのように進んできましたか。

成田 当初の活用方法はまさに、「守り」の受注管理ツールになってしまっていました。現場はデータ投入の意義を理解できず、投入が面倒だという動きが出てくるんです。現場の入力を促すという意味では、やはりトップが「ちゃんと見てるよ」というメッセージを出し、推奨するのも重要だと感じています。

 納得感のある情報を伝えられるのがデータの強みですが、それとともに、現場のネクストアクションを提示してあげる役割も重要です。セールスDXのコンセプトとしては、データアナリティクスとセールス・イネーブルメントをセットで進めてきました。

 具体的には、基本的なことですが、デジタルで顧客接点を増やしていくことを軸にしてきました。営業が「足でニーズを稼ぐ」のには限界がありますが、今後自分たちのソリューションを提供できる可能性のあるお客さまと長期的な接点をつくることができるのは、デジタルの強みです。デジタル行動のデータがインサイドセールスに渡り、そこでもまたデータが入力され……と、デジタルとリアルの垣根がなくなるこれからの時代は、よりデータの重要性が増すと思います。

[画像をクリックで拡大]

――千葉さんから見て、NTTコミュニケーションズさんの取り組みを、ほかの日本企業はどのように真似できると思いますか?

千葉 セオリーに忠実であるというのが特徴のひとつだと思います。「データを溜めるだけではなく活用する」という基本があり、さらにセールスDXのスコープがテクノロジー活用だけではなく、イネーブルメントまでカバーしているというのは見習うべきところだと思います。

 言い方を変えると、お客さまに対峙している「点」の営業活動だけを変えようとするのではなく、部門の壁を超えてデータを一元化することで、カスタマージャーニーの中で「リアルとデジタルの行ったり来たり」を設計することが実現できている。そのうえで現場の営業力を高める「教育」を組み合わせていることがわかりました。

 

 今後はそのデータをもとに上司がサポートしてくれるような、言うなればデータがエージェント(相棒)になるような未来も感じますよね。さらに営業担当者が、データをもとに「いま、社内の誰と連携すれば勝率が上がるのか?」と戦略を立てることができるくらいに、データドリブンな環境が当たり前な状態になるのではないでしょうか。

 おそらくNTTコミュニケーショズさんはそこに向かっていて、リーディングカンパニーとして面白いなと話を聞いていました。しかも10年という長い時間をかけている。実はこれがもっとも大事なのではないかとも思います。

IT部門と営業部門が連携してつくりあげた「リレーションマップ」

――あらためて成田さんに、営業部門とIT部門との連携についておうかがいします。

成田 データをダッシュボードで見るという基本動作を階層化すると、集める、使えるようにする、分析する、可視化するという4つに分けられますが、このうちどこまでを営業部門が担当し、どこからIT側で引き受けるかが重要だと考えています。この設計を間違えると、営業側にデータを扱える人がいなくなった途端にデータが汚くなり、意味のないダッシュボードになってしまうことも考えられるからです。

 そうならないように、IT側が分析できるデータをきちんと準備するということをやろうとしています。並行して、営業、支援、サービスなどそれぞれのカットからデータを見れる人材を育てるために、「データ分析とは?」から実際のデータの読み方まで、IT部門以外のメンバーに初級・中級・上級の育成プログラムも用意して、実施しています。

千葉 そもそも今までは営業部門とIT部門で距離感がありましたから、取り組みを通してその距離感が縮まっていること自体に価値がありますよね。

成田 たしかにそうですね。距離が開いてしまっている時代もありましたが、それを乗り越えた実感があります。

 

千葉 ここまでの話を聞いていて、NTTコミュニケーションズさんはすでにDXが完成し始めている印象を受けました。というのもDXのいちばんの難しさは、まさに部門の垣根を超えることにあるからです。部門間で得意分野を共有し、一緒に課題解決できるようになると、DXはむしろ当たり前の世界になってきます。メンタリティの距離感が大きな壁になる中で、すでにそこを克服できているのは大きな一歩だと思います。

成田 千葉さんのおっしゃるとおり、今ではデータ分析を特別なことと捉えず、課題解決のためにみんながデータを見るという雰囲気ができてきていますね。

――「リレーションマップ」はその成果のひとつでしょうか。

成田 はい、営業部門とIT部門で一緒にアウトプットしたひとつの事例で、誰が・いつ・どんな行動をされたのかなど、お客さまごとに弊社との接点をひとつのダッシュボードで可視化したものがリレーションマップです。このマップの作成に際しては、組織の壁もそうですし、お客さまが使っているサービスやシステムがさまざまにある中で、その壁も乗り越える必要がありました。営業部門とIT部門でプロジェクト的につくりあげたものですが、このマップがあることによって営業部門が「戦略」の部分に時間を使えるようになったのは大きな成果だと思います。

[画像をクリックで拡大]

 これらの取り組みを通して、顧客数や顧客接点の数という観点では「営業をデジタルで支える」ということは実現できてきています。今後は「データ活用によって生まれた売上だ」と言えるものを増やしていきたいですね。

千葉 データを起点に行動を起こしていくことは、どこまでデータを信頼するか? という根本的な議論にも関係しますから、当たり前のようで難しいと思います。ただコロナ禍で営業のオンライン化が進み、データを集める場所が増えました。この機会をポジティブに捉えるならば、データドリブンな営業がやりやすくなったと言えるのではないでしょうか。

成田 そのとおりだと思います。スケジューラーを見れば行動の履歴もわかりますし、実験的にですが、お客さまから許可を得た商談では会話をテキスト化するという新しい取り組みも始めています。これまで時間をかけて営業日報を書いていたのが、テキストデータからキーの情報だけを抽出できるようになりました。それをどう活用するかについては、営業部門だけが頑張るのではなく、IT部門が基盤をつくることが大切になると思います。

DXには「カルチャーを変える勇気」と「失敗を許容する考え方」が必要

――NTTコミュニケーションズさんの今後のチャレンジについて教えてください。

成田 営業現場での活用を超え、大きな経営の意思決定にデータを活用できるようにしていきたいというのがひとつのチャレンジです。経営の意思決定を細分化すると、リソースアロケーションをどうするか、サービスをどう生み出すかなどさまざまな観点がありますが、最適化していくと、故障受付やお問い合わせ対応など、かつて「コストセンター」と言われてきた部分も、お客さまと接点を持ち、価値を提供する組織へ変革できるはずです。

――千葉さんは本日の対談を通して、今後日本のセールスDXはどう進んでいくと感じましたか。

千葉 率直に言って、日本企業のDXは今のところポジティブな評価が難しいというのが個人的な見解です。

 DXはつまるところ、カルチャーを変えていく勇気を経営者がどこまでもてるかにかかっています。コンサルの立場としてはデータの価値は揺るがないと考えていますが、その先に意思決定をし、行動をするという大きな一歩が待っています。ようやくそのことに気が付き始めた企業が出てきたというのが正直なところなのだと思います。

成田 私たちのDXもまだ完成系ではありません。世の中が変われば重要なデータも変わっていきますから、どう追いついていくかは今度の課題です。同じような日本の大手企業にアドバイスできることがあるとすれば、やると決めて、やり続けるしかないということでしょうか。一朝一夕には結果が出ないという覚悟を現場が持ち、経営陣やマネジメント層がそれに理解を示すことが重要だと思います。

千葉 計画をつくっている間に時代が先に行ってしまうようなスピード感の世の中で、今後はデータを溜めながら何回変革のサイクルを回せるかという時代になってくると思います。考えている時間があるなら、まずやってみる、ができるようになると、日本企業はもっと良くなるのではないでしょうか。

――最後に、セールスDXを目指す企業にメッセージをお願いします。

千葉 ツールが揃い課題感も見えているような時代ですから、あまり難しく考えず、また失敗を極度に恐れず、まずはやってみることだと思います。よくアジャイルとウォーターフォールが対比されますが、ウォーターフォールならウォーターフォールでかまいませんから、短い期間でやってみましょう。解くべき問いを正しく解く、そのスピードを上げていく、このふたつが重要になってくると思います。それに関連して、失敗を許容する考え方も大切です。たとえばSREも、きちんとエラーバジェットを確保していますよね。結局のところ最後は人間ですから、安心して挑戦できる環境が大切だと思います。

成田 我々も今まさに正解のないチャレンジをしているところです。自分たちだけで試行錯誤をするには限界がありますから、企業がそれぞれの失敗談や成功体験を共有しながら、日本全体のデータドリブンを次のフェーズに進められると良いなと思います。

 

――大手企業がセールスDXの完成に向かうために必要な、部門を超えた「データドリブンマネジメント」のヒントを得られる対談でした。ありがとうございました!

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【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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