正攻法にこだわらず、三位一体で営業組織改革を推進
――まず最初におふたりのキャリアを教えてください。
齋藤 2007年、マイナビに中途で入社し、マイナビウーマン、マイナビニュース、大学生向けメディアの広告営業を担当していました。その後は営業推進や広告商品の開発、新規事業の立ち上げなどを経て、2019年1月よりコンテンツメディア事業部にてインサイドセールスチームの立ち上げを含めた、営業改革を推進しています。
阪口 私は新卒で2015年に入社し、マイナビニュースの広告営業を担当していました。1年めはBtoBソリューション領域、2年めからはBtoC企業である通信会社や証券会社、銀行などを担当しました。2020年8月からは、コンテンツメディア事業部でインサイドセールスチームのマネージャーを務めています。
――2019年にインサイドセールスの組織を立ち上げるに至った経緯を、当時抱えていた課題と併せて教えてください。
阪口 新卒入社してから5年が経ちますが、メディア部門の営業現場として感じていた課題が2点ありました。
ひとつは、フィールドセールスの営業活動が属人化していたことです。1人ひとりが有するナレッジがブラックボックス化していました。ふたつめは、ひとりの営業が新規開拓からプランニング、レポーティングからフォローに至るまでの全工程を担っていたことです。当時社内では、これらすべての工程を完遂できて初めて独り立ち、という認識がありました。新人は新規開拓からスタートするのですが、受注ができないとその先の納品業務や継続提案ができず、結果として成長に時間がかかってしまう傾向にありました。加えて、100件新規営業をかけたところで、アポに至るのは10件ほどであるため、モチベーションの維持も課題でしたね。
新規開拓が得意なメンバーもいれば、フォローアップが得意なメンバーもいて、なおかつ各フェーズの得手不得手は1人ひとり異なります。現場目線で、漠然と営業活動の質を標準化する必要性を感じていました。
齋藤 営業組織全体の課題としては、プロセスのすべてをフィールドセールスが担当する体制であったため、組織全体のリソース配分が偏ってしまっていた点も挙げられました。一例ですが、「新規顧客の獲得が一定量必要なタイミングでも、既存顧客対応のためリソースを十分に割けない」などですね。全員が各々で新規開拓を行うことにより、アプローチ先の分野が偏ってしまう傾向も見受けられました。
――営業改革を進めるにあたって、定めた「軸」を教えてください。
齋藤 ふたつの軸を設定しました。マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールスと3つの役割がある中で、全チームに同じKGIを設定したことがまずひとつ。そして、もうひとつは「望ましいSales Tech活用」として広く共有されるBtoB ITベンダーの成功事例に、最初はこだわらないことです。
新しい営業手法が採用されたとしても、長年培ってきた営業のやり方に置き換えて導入された仕組み――これまでの否定のように取られるものは、その後の定着フェーズで苦戦する未来が見えていました。そのため、「正攻法にこだわらず、あくまでも自分たちの組織に合うかたちからスタートすること」はどのステップでも常に意識していました。
阪口 「とりあえず、アポの件数を達成できればOK」ではなく、あくまでも「アポ獲得」はビジネスサイクルの一部分であり、見据えるべきは「フィールドセールスと同じ最終的なゴール」であることも、どの議論においても意識していました。
現場では、自分たちのやり方で成果が出してきた営業パーソンが多いため、一方的に新しいやり方を示したところで定着させるのが非常に難しい。そこで、組織全体の課題だけではなく、現場からマネージャーまでの各レイヤーごとの困りごとを尋ね、それらに寄り添いながら提案や仕組み化を進めていくコミュニケーションを実践していきました。
齋藤 新しい取り組みをスタートさせる際、どうしても現場側は「自分たち(営業)のやり方がよくないから新しい方法を取ろうとしているのか?」と感じてしまいます。ゆえに、仕組みの変革を成功させるうえでは「新しいインサイドセールスのチームは、今までのフィールドセールスの役に立つ存在だ」と、ポジティブな印象を抱いてもらうことが非常に重要であると考えていました。
私自身、何年も営業・営業推進を経験し、制度や仕組みを変えようとする際に生じる「抵抗感」と「根付かせるうえでのハードルの高さ」をこの身をもって体験してきました。最初から思い切って大きな施策を打つことで、勢いよくスタートを切れるかもしれませんが、「急がば回れ」ということわざがあるように、「定着」を見据えた際には、皆の心理的ハードルを取り払ってからスモールステップで取り組みを進めていくほうが早いのではないかと思っています。