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SalesZine Day 2025 Summer

2025年7月24日(木)13:00~18:20

AIで“営業の常識”が変わる──営業×AI最前線

AIによる「静かな選別」が始まっている? 野口竜司氏が語る、トップセールスと淘汰される営業の分かれ目

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「2ヵ月に1回は、想像を超えるような驚きがあります」。そう語るのは、AIX partnerの代表を務め、さまざまな企業のAI領域支援を行っている野口竜司氏だ。かつては一部の専門家だけが扱っていたAIが、ChatGPTの登場により、誰もが使える身近なツールへと変貌を遂げた。この激動の時代において、営業職はどのように変化し、いかにしてAIと共存していくべきなのか──。AI時代を生き抜く「文系AI人材」の提唱者である野口氏に、営業領域におけるAIの最新動向と、営業がとるべき生存戦略についてうかがった。

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「文系 × AI」が、ビジネスの新常識になる

 AIX partner 代表の野口竜司氏は、三井住友カードのHead of AI Innovation、コクヨのExecutive Adviser of AI strategy、カウネット社外取締役を務めるなど、さまざまな事業会社でAI活用を支援してきた実績を持つ。

AIX partner株式会社 代表取締役 野口竜司氏

 野口氏の著書『文系AI人材になる』『ChatGPT時代の文系AI人材になる』は、AIと文系人材にフォーカスした稀有な書籍として注目を集めている。執筆の背景には、野口氏の「文系に対する期待」があった。

「ChatGPTが登場する前のAIは、AIをつくるエンジニアや一部のアナリストなど、理系の専門職だけが活用していました。『文系』という言葉はあくまでも象徴的なものですが、いずれビジネスサイドにいる文系の方々にもAIを使いこなす人材になってほしい、なるべきだと思って執筆しました」(野口氏)

 自身も文理融合学部出身で、最終的には「文系的に動いていた」と語る野口氏は、AIの知識がない文系人材でも、十分に価値を発揮できると断言する。

野口氏の著書『文系AI人材になる』『ChatGPT時代の文系AI人材になる』(東洋経済)

 1冊目の執筆当時は、予測モデルや識別系AIが主流であり、「AIはExcelくらい誰もが使うツールへ」という野口氏の言葉は、多くの人に疑問視されたという。しかし、ChatGPTの登場により、その言葉は現実のものとなった。

「2冊目の『ChatGPT時代の文系AI人材になる』では、完全に生成AIを文系人材がどう使うかを論じています。AIに関する知識は一切なくAIを使えるようになっていますので、まったく心理的ハードルは必要ありません。むしろ重要なのは、現場における課題の解像度を高め、問題解決思考力を磨くこと。そして『AIを使って業務を完遂する』という大前提を持つことです」(野口氏)

 実際、AIの進化は、今どこまで進んでいるのか。野口氏はAIの最新動向について、OpenAIが提唱するAGI(汎用人工知能)の5段階レベルを引用しながら簡単に解説してくれた。

AGI(汎用人工知能)の5段階レベル

「急速にこのレベルが上がってきてるのが現状です。レベル1はChatGPTのようなチャット型の生成AIで、皆さんすでにお馴染みだと思います。その次に登場したのが、より推論能力が高い『リーズナー(レベル2)』です。これはすぐに答えるのではなく、時間をかけて思考し、できるだけ間違いなく答えを導き出すモデルです。このリーズナーがあったからこそ、『AIエージェント(レベル3)』が誕生しました」(野口氏)

 AIエージェントとは、目標を設定されると自ら計画を立て、実行し、自己評価を行い、未達成であれば再試行するという一連のプロセスを自律的に行うAIだ。野口氏は、このAIエージェントが、現在のAI活用の最重要ポイントであると指摘する。

AIエージェントの概要
最近では、「AIエージェント」と「エージェンティックAI」を区別する議論も出ており、「AIエージェント」が単一の目標達成を目指す単体的なものであるのに対し、複数のAIエージェントを束ねてより包括的な目標を達成するものを「エージェンティックAI」と呼ぶ傾向があるという

 さらに、人間が発案できないような新規の価値を生み出す「イノベーター(レベル4)」、そして組織全体の業務をAI自体が担うという驚くべきレベル5のAGIも存在する。野口氏の現在の見立てでは、「レベル3.5くらいまできているのではないか」という。

AIは人間を「代替」するのか、それとも「拡張」するのか

 営業領域においては、どのようなAI活用が進んでいるのだろうか。野口氏は、「AIが営業の能力を拡張する場面と、代替する場面がある」と述べた。

 たとえば、AIが営業の能力を“拡張”する例として挙げられるのが、「顧客データ分析」だ。AIは、顧客の情報を多角的に分析し、人間以上に顧客を深く理解することも可能にする。営業は分析されたデータに基づいて提案することができ、提案の精度向上や対話の質向上につながる。

 AIが営業の能力を“代替”する例としては、主に非属人性の高い定型業務が挙げられる。たとえば、営業担当者が行っていた日程調整、初期リサーチ、資料作成などのオペレーション業務をAIに代行してもらうことで、営業は顧客との対話時間を増やすことも可能になる。

 拡張性と代替性は、営業に「スピード」「質の向上」というポジティブな効果をもたらす。しかし野口氏は、別の側面から見ると嬉しいことばかりではないという。

「欧米においては、一部の仕事がすでにAIに取って代わられ、新卒の就職難が顕在化しています。とくに非属人性の高いエンジニアはAIに代替されやすく、仕事を失う人も出てきているのが現状です。その点、営業は属人性が高い職種であるため、まだ“幸運”と言えるでしょう。それでも、トップセールス以外の営業が淘汰される可能性は高いと考えています」(野口氏)

次のページ
AI時代に迫り来る“静かな選別”

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この記事の著者

SalesZine編集部 宮地真里衣(セールスジンヘンシュウブ ミヤジマリイ)

新卒で営業職を経験したのち、編集プロダクションに転職し雑誌やウェブ広告の編集業務に携わる。2022年11月翔泳社入社。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://saleszine.jp/article/detail/7331 2025/07/07 07:00

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