Salesforceは、完全自律型AIセールスエージェント「Einstein Sales Development Rep (SDR) Agent」および「Einstein Sales Coach Agent」を発表した。これらのセールスエージェントは、SalesforceのEinstein 1 Agentforce Platform上に構築されており、営業チームの成長を支援する。
Einstein SDR Agentは、24時間365日、見込み顧客と自律的に関わり、パイプラインを開拓する。特定のプログラムされた質問にしか答えられないチャットボットとは異なり、Einstein SDR Agentは、アクションを決定し、優先順位をつけ、見込み顧客の質問を分析し、製品に関する質問への回答、断られた場合の切り返し、ミーティングの日程調整など、次に何をすべきかを自律的に決定する。それぞれの回答は、企業のCRMとAgentforceの検索拡張生成 (RAG)サービスを使用して整合化された外部データに基づくため、パーソナライズされている。Einstein SDR Agentは、見込み顧客を営業担当者にシームレスに引き継ぎ、複数の見込み顧客に対し、一度に、チャネルを超えて、さまざまな言語で対応できる。これにより、営業担当者は時間のかかる購買プロセスの初期ステージの工数を軽減し、顧客との関係構築に集中することができるようになる。
Einstein Sales Coach Agentは、各案件に応じたロールプレイを自律的に進行し、終了後にパーソナライズされた客観的なフィードバックを提供することで、営業担当者にコーチングを行う。ロールプレイ中、Einsteinは生成AIを活用してテキストを音声に変換し、顧客役としてシミュレーションを行う。さらに、RAGを使用して、顧客の反応を再現し、Salesforceに保存されている関連情報(商談、取引先、顧客との過去のやり取りに関するデータなど)に基づいて対応する。これにより、営業担当者は実際の顧客と対面する前に、営業プレゼンテーション、断られた場合の切り返しや交渉の練習を行うことができる。
Einstein 1 Agentforce Platform上に構築された新しい自律型セールスエージェントは、コード不要のアクション、ワークフロー、Salesforceの実績ある販売ベストプラクティスを組み込んだテンプレートを活用してセットアップが可能。Salesforce Data Cloudを利用して、既存の販売ドキュメントやトレーニング資料などの関連する外部情報をアップロードすることで、生成モデルをさらに強化できる。両エージェントはEinstein Trust Layerを活用し、安全で信頼性の高い応答を保証する。
Salesforce EVP & Chief Pipeline Officer、サム・アレン(Sam Allen)氏のコメント
この画期的なAIイノベーションにより、人間とAIの協力で、より迅速に価値の高い案件を成約できる可能性に大きな期待を寄せています。実現性の高いパイプラインを生み出し、パーソナライズされたコーチングを提供できるAIエージェントを統合することで、営業担当者はより高価値な案件に集中し、その準備をより万全に行うことが可能になります。
新機能の詳細
Einstein SDR Agent
最近公開されたレポートによると、営業担当者は煩雑な手作業に多くの時間を取られ、週の平均で営業活動に費やせる時間が30%程度であることが明らかになっている。Einstein SDR Agentは、営業担当者が営業活動に費やす時間を最大化できるように、次のサポートを提供する。
24時間365日パイプラインを自動化:Einstein SDR Agentは、見込み顧客に対して、パーソナライズされたインテリジェントな会話を行う。このエージェントはRAGを活用して、情報を解釈・処理することで、質問への回答、断られた場合の切り返し、見込み顧客の特定、さらにはミーティングの設定まで行う。
たとえば、見込み顧客が最近ウェブサイトからホワイトペーパーをダウンロードした場合、営業担当者がEinstein SDR Agentにその見込み顧客へのメール送信を指示する必要はない。かわりに、Einstein SDR Agentは、自動でアクションプランを策定し、ルーティングされた見込み顧客に対して自主的にアプローチする。このエージェントは、インバウンドリードに対しても自律的に対応し、営業活動を効率化する。
パーソナライズされた回答を提供:Einstein SDR Agentは、Salesforce CRMデータをはじめとする企業のビジネスデータに基づいてすべての回答を生成する。企業はData Cloudを活用し、製品FAQ、セールスプレイ、ケーススタディなどの既存の営業資料をアップロードすることで、Einsteinが見込み顧客からの問い合わせに対して回答を提供できるようにする。
ガードレールとモニタリング機能の統合:企業は、Einstein SDR Agentが見込み顧客に対して使用する言葉やトーンをカスタマイズできる。また、Einsteinがインバウンドリードと関わる際の頻度、チャネル、タイミングといったガードレールを設定し、どの見込み顧客をEinsteinに引き渡すかも選択できる。
たとえば、10,000ドル未満のすべてのインバウンドリードをEinsteinに任せることで、営業担当者はより価値の高い見込み顧客に集中できるようになる。すべてのアクションはSalesforceにタスクとして自動的にログが保存され、既存のダッシュボードやレポートでそのパフォーマンスを測定できる。また、標準で提供されるガバナンス・ダッシュボードでは、エージェントのパフォーマンスを監視し、会話内容を確認できるため、必要に応じて営業担当者が介入することができる。
エージェントから人間の営業担当者へのシームレスな引き継ぎ:ミーティングが設定されるたびに、エージェントはこれまでのやり取りや重要な見込み顧客情報をまとめ、営業担当者にブリーフィングする。これにより、営業担当者は十分な準備を整え、スムーズに引き継ぎが行われる。
マルチチャネルと多言語機能を提供:Einstein SDR Agentは、SMSやWhatsAppなど、見込み顧客が希望するチャネル、希望する言語で対応できる。
Einstein Sales Coach
Einstein Sales Coachは、営業担当者の新規開拓、プレゼンテーションや交渉スキルの質を向上させる。
実践的なロールプレイ:Einstein Sales Coach Agentは、すべての商談レコードに表示され、商談ステージに応じてテキストを音声に変換し、ロールプレイを提供する。Einsteinは、RAGを活用し、Salesforce内の関連情報(顧客との過去のやり取り、買い手のペルソナ、外部から提供された資料など)を参照し、顧客の口調で文脈に沿った応答を生成する。
たとえば、案件が交渉段階にある場合、Einsteinは商談記録や顧客のペルソナ資料からシナリオを作成し、対象となる顧客をシミュレートしてリアルな価格交渉を行う。
パーソナライズされた客観的なフィードバック:Einstein Sales Coach Agentは、LLM(大規模言語モデル)を活用し、業界の有識者や出版物から得た洞察を営業担当者にフィードバックする。このフィードバックには、Salesforceで担当者が設定した次のステップや、期限を過ぎたタスクに対する評価も含まれる。AIエージェントは、すべてのロールプレイセッションに対して一貫した基準を適用し、担当者間で均質なフィードバックを提供する。
コーチングと営業成績の関連づけ:マネージャーは、コーチングセッションの回数を追跡し、もっとも積極的にコーチングを受けている担当者を特定できるようになる。また、コーチングの有無による案件の勝敗率を分析することで、Einstein Sales Coachエージェントがチームのパフォーマンスに与える影響を評価し、ROI(投資対効果)を容易に測定できる。
Sales Cloud 担当EVP 兼 GM、ケタン・カーカニス(Ketan Karkhanis)氏のコメント
すべてのAIによる会話は、投資対効果の高いものでなければなりません。それを実現するためには、AIがチームを補強し、成長を加速させる必要があります。すべての営業チームは、成約率を高めるために、より多くの商談の機会を持ち、さらに多くの支援を必要としています。未来の営業チームは、人間とAIが協力して営業の成功を導く形になるでしょう。