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SalesZine & Beyond 2025

2025年10月23日(木)12:30~17:45

「The Model」型組織の“分断と停滞”に効く 顧客起点の「カスタマーモデル」

顧客中心のアプローチ「カスタマーモデル」とは 顧客理解を深める新たなフレーム「VIPS」とともに解説

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「コミュニケーション」と「仕組み」の設計図

内円:顧客とのコミュニケーション

 顧客にもっとも近い内円は、実際に顧客と接する領域であり、顧客体験の“本体”となる部分だ。ここでは「関係構築」「価値提供」「示唆出し」の3つの働きかけが、相互に絡み合いながら顧客体験全体を豊かにしていく。この連続的なアプローチこそが、カスタマーモデルの根幹を支えるのだ。

カスタマーモデル(内円:顧客とのコミュニケーション)

(1)関係構築:信頼を積み重ねる

 商談やメール、打ち合わせ、イベントの後日フォローなど、すべての接点が関係構築の土台になる。担当者個人の人柄や「感じの良さ」も無視できないが、信頼を継続的に築くためには、それ以上に「一貫性のある対応」が重要だ。

「誰が対応しても同じように信頼できる」と思ってもらえるかどうか。属人的な関係に頼るのではなく、組織として信頼を維持・継続できる仕組みをつくることが求められる。

(2)価値提供:顧客の状況に応じて“今、必要な情報”を届ける

 タイミングや検討フェーズを無視した提案は、どんなに優れた情報でも響かない。顧客が「今どんなことに悩んでいるか」「どの段階にいるか」によって、必要な情報や伝え方はまったく変わる。

 価値提供とは、相手の状況に寄り添い、「ちょうど良いときに、ちょうど良い情報を届ける」ことに他ならない。一方的な情報提示ではなく、対話を通じて相手のニーズを確かめながら、最適な内容とタイミングを選び取ることが必要だ。

(3)示唆出し:顧客に「気づき」を与える

 誰でも情報を検索できる時代において、ただ情報を届けるだけでは、他社との差別化は難しい。多くの場合、顧客の頭の中は「情報はあるが、整理されていない」状態だ。だからこそ、対話の中で顧客の思考を整理し、まだ言語化されていない課題やニーズを引き出すことが求められる。

 このアプローチは、チャレンジャーセールス(※)の考え方にも通じる。単なる説明者ではなく、「気づきの起点」となる存在として信頼を得ること。それこそが、今の営業・マーケティングに求められる新たな役割である。

※参考記事

外円:コミュニケーションを支える「支援システム」

 内円で行われる3つのアクションは、すべて“人”による対話や判断に基づくものだ。しかし、担当者個人の人柄やスキル頼みの運用では、組織全体としての持続可能な仕組みにはならない。

 カスタマーモデルでは、こうした人間中心のアクションを外側から支える「データ」「ツール」「分業」という3つの要素が不可欠となる。

カスタマーモデル(外円:コミュニケーションを支える「支援システム」)

(1)データ:顧客理解を深める“源泉”

 データは、より質の高い顧客体験を実現するための材料である。

 たとえば、顧客が反応したコンテンツ、過去のやり取りといった情報を蓄積・活用することで、「今、どのようなアプローチをすべきか」という仮説の精度を高めることができる。

(2)ツール:コミュニケーションを“助ける道具”

 ツールもまた、顧客体験の質を最大化するために必要となる。ツールによってデータがリアルタイムで共有されていれば、どの担当者でも、共通の顧客像に基づいたアクションが取れるようになる。このように顧客体験の一貫性を保つことで、継続的な関係構築を支えるのだ。

(3)分業:顧客起点で連携する“チーム”

 カスタマーモデルにおける分業は、あくまで「顧客を中心に据えた連携体制」として設計されなければならない。データとツールを活用したリアルタイムの情報共有を前提とし、部門を超えて顧客像を共有したうえで、組織として一貫した関係性を築けている状態こそ、分業の本来のあるべき姿である。

 このように、カスタマーモデルは「人による顧客との対話」と「それを支える仕組み」が一体となって機能する構造を持つ。中心にあるのは常に“顧客”であり、その意思決定に合わせてアプローチの内容・順序・手段を柔軟に設計していく。

 では、その“顧客の意思決定”を私たちはどこまで深く理解できているだろうか。

次のページ
「BANT」から「VIPS」へ 売り手視点から顧客起点への転換

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この記事の著者

株式会社イノーバ 代表取締役社長CEO 宗像 淳(ムナカタ スナオ)

 福島県立安積高校、東京大学文学部卒業。ペンシルバニア大学ウォートン校MBA(マーケティング専攻)。1998年に富士通に入社、北米ビジネスにおけるオペレーション構築や価格戦略、子会社の経営管理等の広汎な業務を経験。 MBA留学後、インターネットビジネスを手がけたいという思いから転職し、楽天で物流事業...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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