「AI時代の人間力」って、結局なに?
セレブリックス 今井晶也さんのおすすめ『あたえる人があたえられる』
AI時代、「どんな営業が生き残るのか?」という問いに対して、私たちはしばしば呪文のように「人間力を磨け」と説かれます。
では、その“人間力”とは一体何なのか。突き詰めればそれは、
「この人だから相談したい」
「○○さんじゃないとダメなんだ」
と、お客様から“永久指名”をもらえるような、代わりのきかない存在になることだと思います。
論理を超えた影響力。人と人のつながりが生む信頼。AIが台頭する今こそ、営業に求められる「選ばれるあり方」はますます本質に立ち返っていく。
そして驚くことに、その答えは11年前のこの本にすでに書かれていたのだと気づかされます。読み終えたあと、静かに背筋が伸びるような1冊です。
株式会社セレブリックス 取締役 執行役員 CMO
市場開発本部 本部長 兼 セレブリックス営業総合研究所 所長 今井晶也さん
セレブリックス営業総合研究所の所長兼セールスエバンジェリストとして、法人営業・購買・AI営業の最前線で研究や情報発信を行う。著書に『Sales is 科学的に「成果をコントロールする」営業術』、『お客様が教えてくれた「されたい」営業』、『The Intelligent Sales~AIを活用した最速・最良でクリエイティブな営業プロセス~』などがあり、累計発行部数は10万部を突破。現在は取締役 執行役員CMOとしてマーケティング戦略や新規事業開発を牽引。営業プラットフォーム『YEALE』、『Japan Sales Collection』の監修や、Everything DiSC®認定トレーナーとしても幅広く活動している。
マネージャーは、20~30名を束ねる時代に
インサイドセールスプラス 茂野明彦さんのおすすめ『急成長を導くマネージャーの型 ~地位・権力が通用しない時代の“イーブン”なマネジメント』
AIの活用によるSoC(スパンオブコントール)の変化がすでに始まっています。
これまでの5~7名程度のメンバーに対して1名のマネージャーという体制が、20~30名に1名のマネージャーという構成に変化していきます。
個人としてはより高いマネジメント能力が求められ、組織としては強いマネージャーの育成が急務となる時代に、“マネジメントの型”を学ぶことは、これまで以上の価値があると考えています。
本書はこれまで要件定義されてこなかったマネジメントを体系化し、組織に共通言語をもたらしてくれるものです。ベンチャー向けとありますが、個人的にはすべての組織で活用できる内容が書かれていると思いますので、広く読んでいただきたい1冊です。
株式会社インサイドセールスプラス 代表取締役 茂野明彦さん
2012年、株式会社セールスフォース・ドットコムに⼊社。グローバルで初のインサイドセールス企画トレーニング部⾨を⽴ち上げると同時に、アジア太平洋地域のトレーニング体制構築⽀援を実施。2016年、株式会社ビズリーチ⼊社。インサイドセールス部⾨の⽴ち上げ、ビジネスマーケティング部部⻑、営業責任者を歴任。2022年、株式会社インサイドセールスプラスを創業。インサイドセールスに関する記事の執筆を⾏うほか、インサイドセールスカンファレンスを企画するなどインサイドセールスの認知向上、発展に貢献している。著書に『インサイドセールス–訪問に頼らず、売上を伸ばす営業組織の強化ガイド–』(翔泳社)
「科学」に関心のある人ほど、「感性」に目を向けよ
TORiX 高橋浩一さんのおすすめ『詩と科学』
時代の先を見通す偉人の頭の中はどうなっていたか?
「湯川秀樹といえばノーベル賞をもらった物理学者である」と思われがちですが、一方で、「人としての感性がとても豊かで、細やかな人物」でもありました。
「詩と科学とは同じ所から出発したばかりではなく、行きつく先も同じなのではなかろうか」。本書の冒頭は、この文章が入った随筆から始まります。
AI時代だからこそ、人としての大事な感性を磨いておきたい営業リーダーが、年末年始でゆったりとした時間に読むのにまさに最適の1冊です。
「営業を科学する」ことに興味関心が強い人ほど、「人間にしかわからない感性というものについてじっくり考える」時間が必要ではないでしょうか。
湯川秀樹の親友であった朝永振一郎氏は「湯川秀樹は100年先まで見ている人間だ」と言っていたそうです。そんな先見の明の正体がどんなものか、とても好奇心がそそられますね。
TORiX株式会社 代表取締役 高橋浩一さん
東京大学経済学部卒業。外資系戦略コンサルティング会社を経て25歳で起業、企業研修のアルー株式会社に創業参画(取締役副社長)。事業と組織を統括する立場として、創業から6年で70名までの成長を牽引。同社の上場に向けた事業基盤と組織体制を作る。2011年にTORiX株式会社を設立し、代表取締役に就任。
これまで4万人以上の営業強化支援に携わる。コンペ8年間無敗の経験を基に、2019年『無敗営業』、2020年に続編となる『無敗営業 チーム戦略』(ともに日経BP)を出版、シリーズ累計10万部突破。2021年『なぜか声がかかる人の習慣』(日本経済新聞出版)、『気持ちよく人を動かす』(クロスメディア・パブリッシング)、2022年『質問しだいで仕事がうまくいくって本当ですか?』(KADOKAWA)、2023年『「口ベタ」でもなぜか伝わる 東大の話し方』(ダイヤモンド社)を出版。2万人調査の分析に基づき、2024年4月に発売された新刊『営業の科学』(かんき出版)は、発売11ヶ月で6万部を超える反響を得ている。2024年4月から東京学芸大学の客員准教授も務め、「”教育”と”営業”の交差点」を探究している。また、東京都内で「人生のヒントが見つかる」をコンセプトにしたリアル書店も経営。
AI時代のリーダーが集中すべきことは?
EYストラテジー・アンド・コンサルティング 千葉友範さんのおすすめ『ティール組織━━マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』
昨年ご紹介した『孫子の兵法』が「戦わずして勝つ」戦略書とすると、『ティール組織』はAI時代に必要な営業リーダーの戦術を示す1冊です。
生成AIの普及で顧客ニーズや市場変化は加速し、従来のPDCA型管理では対応が難しくなります。求められるのはOODAループのような迅速な意思決定と、メンバーが自律的に動く組織モデル。
本書は「自主経営」や「存在目的」を軸に、指示命令型から脱却し、チームの主体性を引き出す方法を提示しています 。たとえば、営業現場でAIを活用した提案書作成や顧客分析をメンバーが自発的に行い、リーダーは戦略的な案件選定や関係構築に集中できる体制を整える━━。そんな実践のヒントが詰まっています。
不確実性の時代の営業リーダーたちにお薦めの1冊です。
EYストラテジー・アンド・コンサルティング 千葉友範さん
大学院在籍中よりソフトウェアベンチャー立ち上げに参画後、大手総合系コンサルティングファーム勤務、IoTなどを手掛けるIT企業役員を経て現職。現在は専修大学大学院にて客員教授も務める。 EYストラテジー・アンド・コンサルティング のカスタマーエクスペリエンス・トランスフォーメーションにて、ビジネス成長のドライバーとなる戦略策定(サービスデザイン)から顧客接点改革(マーケティング、営業、コンタクトセンター、カスタマーサクセスなど)の実現までを総合的に支援するチームのパートナーを務める。直近では、CROアジェンダのオファリングリーダーを務める。
資本主義経済のあたりまえを疑ってみる
ウェルディレクション 向井俊介さんのおすすめ『大きなシステムと小さなファンタジー』
私を含めた現代人が「常識」として捉えている概念に、新しい捉え方や人間の可能性を提案してくれる1冊です。一般的な「ヒエラルキー型の組織」「指示命令系統」「評価設計」「事業のつくり方」とは大きく異なる仕組みをつくり、そしてそれらが社会の中で機能するための大事な考え方や価値観が共有されます。
著者の影山さんは、運営する喫茶店、宿泊施設、飲食事業について、具体的にどう考え、組織やプロセスをつくり、ビジネスを継続しているのか。抽象化された思想と、現実世界の事業の両面から、いわば「あたらしい形の資本主義経済」を考えさせてくれる良書です。
一連の取り組みは、単一企業のものだけではなく、地域社会に属するほかのステークホルダーと「共創」し、「循環」する街づくりにも発展していきます。闇雲に利潤を追求する資本主義経済において、これが本来の「ありたい状態」のひとつなのかもしれない、と考えます。とくに経営者やマネジメントの方々に読んでもらいたい本です。
ウェルディレクション合同会社 代表社員 向井俊介さん
約20年、IT業界において中小から大企業のB2Bの営業領域の職務に従事し、CxO等エグゼクティブに対するビジネスも多く経験。2019年に米App Annie日本法人のカントリーマネージャーに就任し、日本法人全体のビジネスを牽引。2020年7月よりウェルディレクション創業。B2Bセールスのアドバイザーとして上場企業からスタートアップまで、広く営業やマーケティングの側面から企業のビジネス成長に貢献している。2023年社会構想大学院大学実務教育学修士号取得。営業の暗黙知を学術的に形式知化するための専門職研究を行う。

