一流の営業に必要なのはトークよりも「段取り力」?
営業の世界に入ったときのこと。
私は「営業で結果を出す人は特別なトークを使っているに違いない」と思っていた。お客様をその気にさせる“魔法の言葉”が存在していると本気で信じていたものだ。

だから社内のトップ営業スタッフに「ぜひ必殺トークを教えてください!」ときいていたものだ。しかし返ってくるのは、「いや、とくにないけどなぁ……」「普通の話しかしてないよ」といったことばかり。
そのほかにも「トークより段取りが大切だよ」と言われたことも。当時の私は「段取り? それよりも具体的なトークを教えてほしい」と思っていた。
だが、今になって思えばそれは本音だった。大きなヒントが隠されていたのだ。
営業は何かを言ったら売れるという単純なものではない。トークではなく、段取りや準備が非常に大切だ。この本質に気づくまで、私は何年もかかってしまった。
私は営業コンサルタントとして数多くの一流営業スタッフとお会いするが、一流営業スタッフが会食の場を設けてくれる際に、「ああ、だからこの人は売れるのだな」と深く納得することがある。
あるとき、外資系生命保険会社で常にトップを走り続けるAさんと打ち合わせを兼ねて会食をすることに。会食の10日ほど前、Aさんからメールが届いた。「今回のお店はこちらを予定しています。もし苦手な食べ物などがあれば、遠慮なくおっしゃってください」という連絡に、「その日、菊原さんはどのようにお帰りになりますか?」との一文があった。
そのときは「ずいぶん丁寧な人だな」と思っただけだった。だが、当日になってその質問の意味を理解することとなる。