良い店を選ぶだけでは二流 一流の営業が押さえていること
指定されたお店は、ネットのレビューでも高評価の隠れ家的名店。ただし少し敷居が高い感じ。緊張しながら入店した。予約時間の10分前に到着した私よりも、Aさんはさらに早く店内にいた。すでにマスターと会話を交わしており、空気は温まっていた。
私が紹介されると、マスターも笑顔で迎えてくれ、緊張が一気に解けた。料理はもちろんおいしいし、静かでゆっくり話ができた。この時点で「さすがトップ営業スタッフだな」と思っていた。
会食後、Aさんが私を店の外まで送ってくれ「このまままっすぐ歩けば東京駅の新幹線口までスムーズに行けます」と言ってくれた。私は群馬県に住んでおり、新幹線で帰ることを知っていた。ここまで段取りされていることに感動した。
数日後、あらためてAさんにこう尋ねた。「もしかして、お店の場所も帰りのルートを考慮して選ばれたのですか?」。すると「そうですよ」と笑って答えてくれた。
Aさんには営業の師匠がいたという。その師匠から「良い店を選べて二流。帰り道まで考えて一流」と教えられて以来、ずっとそれを守り続けているという。

もはや営業というより、もてなしのプロである。営業トークがどうこうというレベルではない。こうした気遣いの積み重ねが、信頼を構築していく。
もしAさんに「菊原さんの場合、この保険が良いと思いますよ」と言われたら迷わず加入するだろう。そこには商品知識や価格以上に、「この人の言うことなら間違いない」という信頼がある。これこそ、営業でもっとも重要な要素だ。
良いお店を選ぶための積み重ね
逆のケースもあった。少し前のこと。ある営業スタッフから指定されたお店に行った。情報では“個室で料理がおいしい”と書かれていた。
たしかに個室ではあったものの、襖(ふすま)1枚で仕切られており、隣の大声が丸聞こえ。話に集中できない。
どんなに相手が知識豊富でも、その環境では実力を発揮できないし結果は出ない。どこで会うかが勝負の半分を占めるということを忘れてはならない。
良い店を選ぶためには、単にネットの口コミだけで選ぶのではなく、次のような積み重ねが必要になる。
- 事前に自分で行ってみる
- 店員と軽く会話しておく
- 周辺の交通や相手の動線を考慮する
営業で結果を出すためには、“人として信頼される”ことが非常に重要な要素になる。ぜひ、次の会食ではで“帰り道”まで気遣って段取りしてほしい。これが当たり前できるようになったとき、一流の営業スタッフの仲間入りすることになる。