顧客体験と業務効率化を追求するDX戦略
──ECサイトもですが、問い合わせ管理含めて顧客との一連のやりとりのDX化も進めていかれているとうかがっています。
まずは問い合わせ対応を効率化するためにZendeskを導入しました。テンプレートも用意し、ボタンひとつ押せば顧客の疑問に答えられるかたちを構築しています。
そして、問い合わせでいちばん多かったのが価格に関する質問だったんです。もう価格は出しておけば良いのでは? という考えで、ECサイトをつくったという経緯です。

ただ普通のECと違うのは、注文後、実際に掲載されるまでの2~3ヵ月間の伴走支援が必要な点。平均して20往復くらいのやりとりが発生していました。そこもある程度テンプレートをつくっていて、Zendeskにいま入っているマクロは250ほど。知識がないメンバーでも対応できる状態が整備されています。やりとりはLINEでも可能です。
──顧客対応の部分をかなり効率化されているんですね。そのほかにはどんな取り組みを進めていらっしゃいますか。
広告のAI審査も珍しいかもしれません。会社全体では2025年4月からAI審査に取り組んでいますが、私たちのチームではJR以外の私鉄を含む多様な広告を扱うため、独自でのAI審査を構築しました。
「QRコードのサイズは○○センチまで」「携帯マナーの文言はこの電鉄だとここに入れないといけない」など、掲載場所ごとのルールがたくさんあるんです。AI審査はかなり精度が高くて助かっていますね。
──業務DXの部分で難しかったことなどはありますか。
ECサイトがまさに営業担当者として機能しており、24時間いつでも注文が入る仕組みは、飛び込み営業をしていたころの自分が知ったらびっくりするだろうなと思います(笑)。一方で、課題に感じているのは社内業務のDXで。問い合わせ対応が効率化されても、社内のやりとりはメールやExcelベースで進んでいる部分も正直あります。
経験をもとに、社内DXを進めていくのが私の次のチャレンジです。自分もそうでしたが、自分の担当業務が非効率かどうかって気がつきづらいんですよね。あえて、外から見たときにわかることもあるので、「もっと楽できるよ」とみんなに伝えていきたいです。
──ここまで取り組んできて良かったなと思う点があればあらためてうかがえますか。
おかげさまで毎週どこかしらの駅で応援広告を見ることができるようになりましたし、池袋駅には「応援広告ロード」と呼ばれる場所も生まれました。広告をつくったり、出したりするだけでなく、その広告を見に行ったり、写真を撮ってSNSにあげたりして推し活を楽しんでくださる人が増えたのもうれしいことです。
企業が応援広告風クリエイティブを使ってバズった事例もあり、広告代理店の私がこう言うのも変かもしれませんが、「広告の価値はサイズだけで決まるものではないな」と思えてきて。あらためて、「共感できる広告」が求められていくのではないかと感じています。

──ポジティブなパワーで広がっていく、理想的な広告ですね。社内DXに加え、取り組んでいるチャレンジがあれば教えてください。
自分がかつて出場したコンテストの運営にも取り組んでいます。そしていまでも新しいアイデアを出しているのですが、BtoBのECサイトにも挑戦したいですね。実際に、Cheering ADのサイトから「これ企業では買えないの?」という問い合わせも来ているんですよね。BtoCで培ったノウハウを必ず、BtoBにも展開できると思っています。
──最後に変革に挑む営業リーダーに営業企画の皆さんに、河原さんからメッセ-ジやアドバイスをお願いします。
「営業のやり方も工夫次第でずいぶんスマートにできる時代になった」と伝えたいですね(笑)。本当にいろいろな効率化ができる時代になりました。一方で、「この人の熱意があったから」という受注は、これからもなくならないと思います。だからこそ、営業担当者にはそうやって、お客様の心をつかむことに時間を使えるようにするのが大事だと思っています。
──ありがとうございました!
