「応援広告」の新たな市場を創出 昨対比200%の成長
──ただしコンテストでアイデアは通らず……だったと。
そうなんです。そのときに選ばれたのはサイネージ関連のアイデアで、広告代理店としてまさに取り組むべきものでした。いまもしっかりと続いている事業です。
我々のアイデアはいわゆる「推し活」を応援するものですが、当時は正直経営層もピンときていなかったと思います。「なんで自分のお金でわざわざ広告を出すの?」という感じで、ビジネスになるとは思ってもらえなかったんですね。
ただ、通らなかったんですが、営業なんだし、まずはやってみることが大切だと思い、売り始めました(笑)。実際にTwitter(現X)には、「応援広告を日本でやってみたいけど、どうしたらいいんだろう」と困っている声がたくさんあったので、「私、お手伝いできるかもしれません」と直接DMを送ることから始めました。

──本当に売れるかまずは試してみる。さすがの営業力です。
とはいえ、当社も普段はBtoB取引がメインでしたから、個人との取引をどう進めるか、法的に問題はないか、など懸念点は山積みでした。1つひとつ課題をクリアし、社内外への説得をひたすら続け、応援広告サービス「Cheering AD」をスタートできたのが2021年ごろのことです。
──素晴らしいです。
スタートしてからは、問い合わせが急増。まずは問い合わせを効率的にさばくために、新規事業コンテストの運営チームの人たちから、少し予算をもらい、LPと問い合わせフォームを用意しました。
とはいえ、それでも本業との兼ね合いが難しくなってきたところで、ユーザーが直接広告を買えるECサイトをつくったんです。日本初の試みになりました。
Cheering ADのECサイト
──引き合いも止まらないとのことでしたが、現状での定量・定性面の成果について教えてください。
正直ECを立ち上げたときは本当に買ってもらえるか半信半疑でしたが、いざローンチしてみると皆さんポチポチ買ってくださる。決済手段も銀行振込やPayPayなどいろいろ用意したのですが、8割くらいがクレジットカード決済でした。
平均単価は13万円くらい。ターミナル駅にある横長のB0サイズと言われる広告の媒体費が7~9万円で印刷費などを入れるとちょうど13万円くらいです。
昨対比200%くらいで成長を続けていて、2024年度は約3,000団体との取引がありました。ちなみに、交通広告は個人では出せません。意見広告や政治宗教もOKとなってしまうためです。ファンの団体としてご出稿いただくかたちになります。
また、ファンがいくら広告を出したくても、事務所の許可がなければ実現できません。お申し込みが入った時点で我々が許可どりを進めるのですが、始めたばかりのころは「そもそも応援広告とはなんですか?」といぶかしまれたり、「よくわからないので大丈夫です」と断られたり、「出すのは良いですが、写真は使わないでください」と言われたり、ということがありました。
現在では、相談すると9割がた快諾いただき、お写真の提供もスムーズになりました。業界に新たな広告のかたちを定着させられた感じがして、それはうれしいことですね。
──数値の成果も上がっていらっしゃいますし、社内での期待値も高まっているのでしょうか。
ほかのチームに匹敵、とはまだ言えないですが、取り扱い高も年々増加しており、「好きなことをやっている人たち」という初期の認識から、社内の見方も変わりつつあると感じています。
