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SalesZine Day(セールスジン・デイ)とは、テクノロジーで営業組織を支援するウェブマガジン「SalesZine」が主催するイベントです。 丸1日を通してSales Techのトレンドや最新事例を効率的に短時間で網羅する機会としていただければ幸いです。

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SalesZine Day 2025 Summer

2025年7月24日(木)13:00~18:20

AIで“営業の常識”が変わる! 営業×AI最前線

非エンジニアでも「業務効率化AI」をつくれる!? CSの問い合わせ対応時間を50%削減した河辺さん

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Python初学者でもAIサポート機能はつくれる! 超速プロトタイプ作成術

──AIサポート機能のプロトタイプを、具体的にどのような手順でつくったのか教えていただけますか。

まずは、AIに配配メールの知識を読み込ませることが必要でした。知識源として活用したのは、お客様向けの機能案内が掲載された、既存のサポートサイトです。まずはこれをテキスト化し、AIに読み込ませ学習させてみようと考えました。

そこで「ウェブページ 文字化 自動」といったキーワードで検索すると、Pythonでテキスト化できると判明しました。ChatGPTにコードをたずねるとそのまま教えてくれたので、そのコードを実行するだけでテキスト化ができました。あまりにスムーズだったので「できちゃった」という感覚でしたね。

そして、テキスト化した配配メールの知識と、プロンプト(知識の使い方に関する指示)のふたつをAIに入力しました。

知識は「質問例」「回答例」「関連URL」の3段構造で、約1200行分にも及びます。プロンプトとしては、たとえば次のような具体的な指示を入れました。

#あなたの役割

あなたは当社が提供するメール一斉配信ツール「配配メール」というサービスの使い方や操作不明点の問い合わせに回答可能なエキスパートです。

学習した内容に基づき操作マニュアルや使い方に関する質問に答えることができます。

一度プロンプトを読み込ませれば、普通に質問するだけで回答が返る状態です。こうして1ヵ月程度で最初のプロトタイプが完成しました。

AIの“嘘”をどうなくす? 精度50%→90%を実現した試行錯誤

──AIから期待した回答は返ってきましたか。

最初のうちは、回答精度は50%にも満たず、AIが平気で「嘘」をつくことも多々ありました。この「精度の向上」がもっとも大変なプロセスでした。

そこで、AIに詳しい社内のシステム担当者に相談し、アドバイスをもらいました。具体的には、プロンプトの記述方法の変更です。「配配メールの知識をどのように使うか」という指示の出し方を変えることで、精度が向上しました。

それでも期待する回答が返らないときは、予想と仮説検証を繰り返すしかありません。「このプロンプトだからこうなったのか」と仮説を立て、プロンプトを修正して正しい答えが出るまで繰り返しました。

ただ、途中から裏側のAIをChatGPTからGoogleのGeminiに変更したことで、このプロセスは大きく改善しました。当時のGeminiは「ナレッジのここを見て回答を作成しました」と作成過程の一部を表示してくれたため、仮説検証の手間が減り、修正もしやすくなったのです。

そして、着手から約6ヵ月で精度を85%程度まで上げることができ、すでに導入を進めていたカスタマーサクセス課内でも役立つ場面が増えました。以前は人力でお問い合わせに対する返信文面を作成していたのが、AIが自動生成した回答をそのまま引用できるようになり、問い合わせ対応時間を50%削減することができました

小さな一歩が共感を呼ぶ! プロトタイプから広がる社内協力の輪

──社内やお客様からの反応はどうでしたか。

カスタマーサクセス課のメンバーからは、「残業が減った」「お客様への架電や状況確認に使える時間が増えた」というポジティブな声が上がりました。

現在、このAIサポート機能は、お客様向けにも「AIヘルプ」というサービス名で提供されています。夜間や営業時間外でもAIヘルプ上で疑問を解決できるようになったことで、お客様からも「すぐに回答が得られるようになった」という声をいただいています。以前はお待たせすることもあったので、それが解消されたのは良かったですね。

──取り組みを進める際、社内の協力は得られましたか。

実は、メンバーに精度50%のプロトタイプを見せたとき、「やはり人が問い合わせ対応をしたほうが良いね」と、あまり好反応ではなかったんです。しかし、段々と精度が上がっていくと「これ良いね」と言ってくれる人が増えていきました。

一方、システム担当者からは、最初からポジティブな反応がありました。「構造自体はできているから、あとは少しの工夫だね。どんどん進めていこう」と言ってくれたんです。精度の低いプロトタイプであっても、まずは提示してみることで、早い段階で協力者を得られたことは非常に大きな利点となりました。

また、弊社には「失敗を許容する」「小さく試して大きく育てる」という行動指針があり、カルチャーとして浸透しています。まずは身の回りの業務で小さく始めてみて、改善を重ね、実現可能だと見えてきたら大きく育てていこうという方針です。今回の取り組みも、まさにこうしたカルチャーに助けられた部分が大きいと思っています。

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現場から戦略企画へ 次なる「ものづくり」への挑戦

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AIで“営業の常識”が変わる! 営業×AI最前線連載記事一覧
この記事の著者

SalesZine編集部 宮地真里衣(セールスジンヘンシュウブ ミヤジマリイ)

2018年に中央大学を卒業後、1年半営業職として従事。2019年秋に編集職へ転身し、広告編集プロダクションにてビジネス系ウェブメディア、ファッション誌、週刊誌などの記事広告や販促物の企画・編集に携わる。2022年11月~翔泳社 SalesZine編集部に所属。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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