高パフォーマンスな営業組織が重視する営業プロセスとは
山田氏は「購入してもらった商品やサービスが、どのような効果があるかを定量的に示すのは、非常に難しいことでもあります」とも続ける。では、どうすべきか。山田氏は、いかに金額ではないかたちで「価値」を訴求するかがポイントだと強調する。
「パーソル総研では営業スキルのトレーニングメニューがたくさんありますが、実際にさまざまな業界の方とお話ししていて気がつくのが、商品の特徴を説明するだけで終わってしまっていることです。それだけでは、顧客が『だから何?』と感じて終わってしまうこともしばしばあります。
単なる特徴の紹介にとどまらず、その特徴がどのようなメリットを顧客にもたらすのか。購入することで、どのような上位ニーズを満たせるのかまで踏み込むことが、非常に重要です」(山田氏)
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ここでのポイントは、価格や納期だけを訴求しないこと。顧客側が「価格や納期交渉における“納得いく対応”」を2位に挙げていることから、もし価格が少し上がったり、納期が若干遅れたりしても、顧客のニーズに対してどのような価値を提供できるか、費用対効果がいかに優れているかをしっかりアピールできれば、問題ないのだ。
そのほか、顧客と営業で回答率に差があったものとして、山田氏は顧客側8位の「当社が気がついていない視点の提供」を挙げる。いわゆる「インサイト営業」を顧客が求めていることを示したデータだが、この項目は営業側ではトップ10圏外であった。
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山田氏は、複雑で解決策が一通りでない課題の外部への相談方法に関する回答も紹介し、顧客側の68.8%は解決の方向性をある程度決めたうえで、それが間違っていないかどうかも含めて外部に相談するとした。この結果も交えながら「多くの顧客は『自分たちが気がついていない視点を教えてほしい』というニーズを抱えているのです」として、インサイト営業の重要性を説く。インサイト営業に重要なものについて、次のように話した。
「まずはお客様を徹底的に調べ、仮説を立てることです。そうすることで、方向性が合っているか相談したい顧客の問いにもすぐに対応できるでしょう。調査では営業側が営業プロセスのどこを重視しているかも質問しています。すると、好業績を出している営業組織は『業界の理解』『顧客課題の整理』といった、受注前のプロセスに力を入れていることがわかりました」(山田氏)
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一方で、こうした事前準備は現場の負担にもなり得る。実際に営業側の22.1%が、商談の前工程・後工程にリソースを割かれ、本来の業務に集中できないと回答している。山田氏は「すべての顧客はたしかに難しいため、重点顧客を選定してリソースをかけていくと良いでしょう」とし、気づきを提供することで顧客が「この営業と話すのはとても価値あることだ」と感じるようなセールスこそが、目指すべき地点だと締めくくった。