個別最適で「ハズレくじ」を押しつけあっていないか?
高橋(SalesZine編集部) マーケティングとセールスの現場では、見込み顧客に対する認識やコミュニケーション不足など、さまざまな「壁」があると言われています。どうしてこのような状況が生まれてしまうのでしょうか。
富家(EVeM) まず考えてほしいのは、次の3点です。セールス・マーケティング、それぞれの組織について「(1)自分たちはどういう組織なのか」「(2)誰かの言葉ではなく、それを自分たちの言葉で定義できるか」「(3)役割についての認識がほかの組織と共有されているか」──この3点を自問してみてください。できていないとしたら、明日から自分の行動を変えられるように、言葉にしてみる必要があると思います。
たとえば、当社の場合は最初に決めるのは「役割」です。マーケティング組織の中には、「社のDX化を推進し、経営の意思決定に貢献する」役割もあれば、「新規事業の立ち上げに寄与し、新たな収益の柱を創る」役割もある。それぞれの役割が異なっているのは当然で、大切なのは「自分たちの役割の最適化は自分たちでしか行えない」ということ。役割の認識がずれると目標がずれ、それが「壁」になってしまいます。
富家 俯瞰でとらえ、個別最適ではなく全体最適を目指すこと。「なんでも屋」上等です。組織全体の大きな目標に向かって、短期的なハズレくじを喜んで引き受けられるかどうか。役割を小さく定義し、ハズレくじを押しつけ合っているから、「壁」が生まれるのではないでしょうか。
井田(サイバーセキュリティクラウド) その「役割の定義」がなかなか難しいですよね。EVeMでは、どのように定義したんですか。
富家 経営陣と一緒に慎重に定義しましたね。当社は新しい考え方である「マネジメントの型」について認知を広げていくフェーズにあるため、まずは細かなSFAデータの分析などを行わず、施策の実行を重視することにしました。ひとつでも多くの商談をつくるために、細かいオペレーション部分をまずは気にしないという方針ですね。これは組織の状況によって異なってくると思います。
井田さんと一緒にコニカミノルタジャパンでマーケティング組織を立ち上げたときは、「中長期的に受注に貢献する組織」であることを最初に決めましたよね。その前提で施策の実行に取り組んだところ最初の半年は施策経由の受注金額自体は0円でした。それでも事前に役割の定義をしっかり伝えていて、細かな情報共有をしていたからこそ、短期の結果を責められるようなことはありませんでした。
井田 そうですね。そのときに意識していたのは、マーケティングが取り組んでいることが最終的にどのように受注につながるのかということを、失敗も含めて隠さずに共有したことでした。