「Sales is Science」のもと、プロセスを再設計
高橋(SalesZine) はじめに、双日テックイノベーションとTOPPANデジタルがどのようにしてマーケティングとセールスの連携を深めてきたか、その歩みについて教えてください。
榎本(双日テックイノベーション) 双日テックイノベーションでは、2015年ごろからマーケティングとセールスのプロセス変革やイネーブルメントに取り組んでいます。それまではいわゆる「ガッツ営業」で、営業担当者がとにかく多くの顧客と接触し、根気強く売り込むスタイルが主流でした。しかし顧客のニーズが多様化する中で、これだけでは限界があると感じていたんです。
榎本 ちょうどそのころ、営業部長として海外カンファレンス「Sales 2.0」に参加します。そこで聞いた「Sales is Science(営業は科学だ)」というフレーズには衝撃をうけました。営業活動を再現性のあるプロセスにし、データと事実に基づいた行動をとることで効率的に成果を上げるという考え方です。当社でもさっそく実践に移しました。
そのひとつが、マーケティングとセールスのプロセスを再設計することです。当時はマーケティング、セールス、エンジニアという3つの組織に分かれていたのですが、マーケティング組織の配下へインサイドセールス(SDR)を立ち上げ、マーケティングとセールスの間で顧客との関係を構築する役割を与えたのです。現在はBDRにも取り組みながら、マーケティングとセールスの連携を強化しています。
高橋 グローバルのトレンドもとらえながら、長年の自社の営業スタイルを変えてきたのですね。一方で平野さんは、榎本さんとはまた異なる状況でマーケティングとセールスの連携を深めてきたかと思いますが、いかがでしょうか。
平野(TOPPANデジタル) TOPPANデジタルでは「review-it!」というSaaSプロダクトの新規事業において、セールス・イネーブルメントやマーケティング施策を強化してきました。
平野 新規事業では、立ち上げ当初こそ属人的な営業スタイルでもある程度売れるものの、さらに事業をスケールさせるには組織の再現性を高める必要があります。また、プロダクト開発チームとアカウント営業チームが分断している組織構造も大きな課題でした。プロダクト開発チームは担当するプロダクト・サービスの売上をKPIとする一方、アカウント営業チームは全体のトップライン向上をミッションとします。そのため、さまざまなプロダクト・サービスがある中で、売上の見込みが立たない新規事業は選ばれにくい傾向があります。さらに新たなプロダクトへの技術的な知識が不足していることで、顧客への提案が十分でないこともありました。
こうした問題を解決するため、プロダクト開発チーム主導で「The Model」を取り入れました。現在はアカウント営業の提案を代行するフィールドセールスの設置に始まり、マーケティング、インサイドセールス、カスタマーサクセスを置く「プロダクトビジネスチーム」として、アカウント営業チームと連携しています。