データ共有は大前提 「それらしい数字」だけでは信頼を失う?
高橋 先ほどの役割定義を含めて、セールスとマーケティングの情報共有、コミュニケーションが第一歩になりそうですね。
富家 営業は数字という営業目標を掲げられ、ハイプレッシャーの中で仕事をしています。そんな状況下で、マーケティングの施策があいまいだったり、受注へのインパクトが不明瞭だったりすると、どうしても協力する優先度が下がり、コミュニケーションが成立しなくなります。マーケティングも受注を目指す、同じチームだということを伝えるコミュニケーションが不可欠です。
高橋 井田さんが、サイバーセキュリティクラウドでマーケティング組織を立ち上げた際は、どのような取り組みを進めていったのですか。
井田 私が入社した当時はフィールドセールスの組織しかなく、社長室の広報チームがマーケティングを兼任している状態でした。そこでまずは、インサイドセールスの立ち上げを決めました。
営業の受注目標から逆算して、インサイドセールス×マーケティングによって生まれるインパクトを具体的に宣言しました。さらにインサイドセールスの意義を理解してもらうために、「インサイドセールスはテレアポではなく、リードをすぐにフォローし、未来の売上をつくる組織である」という認識を浸透させていきました。
井田 もともとフィールドセールス中心の組織だったため、データも整備されておらず、見込み顧客の状況を1日にいくつも転記する必要がありました。「転記している間に電話ができるな」と、すぐにSFAとMAを導入し、すべてのデータを営業、マーケティング、インサイドセールスに共有できる状態をつくりましたね。そして、各KGI/KPIの進捗やフェーズの転換率、施策ごとの受注件数などを可視化しました。その際、マーケティングが営業にイベント登壇を依頼した際の成果なども可視化しています。
富家 SFAの効果的な活用は、実はとても難しいですよね。導入すれば分析がうまく回り、成果が上げられるイメージもありますが、マーケティングの視点では、「セールスの信頼を得て、施策の実行についてノータイムでOKをもらうために使う」という考え方が、適切かもしれません。データをオープンにし、コミュニケーションしていくことが、壁を取り払うときにも有効ですから。
井田 一方で、マーケティングは「それらしい数字の見せ方」をすることができてしまいます。見込み顧客とこれだけ接点を持つことができていて……とか。でも、「集客はすごいかもしれないけど、案件につながっていないよね」とセールスに思われた瞬間、マーケティングに対する信頼は失われてしまいます。だからこそ、正直に集客数からフォローの割合、その後の商談や受注までを含めた数字を営業と一緒に振り返り、活かしていく。「本気で一緒に受注を目指している」という意思表示が必要だと思います。