インサイドセールスが「顧客の購買体験」を変える
買い手主導の購買プロセス、労働人口の減少、サブスクリプションビジネスの台頭、そしてコロナ禍によるニューノーマルの浸透──。目まぐるしく変化するビジネス環境において、営業は顧客の信頼を獲得していかなくてはならない。その鍵を握るのが「インサイドセールス」だ。
『インサイドセールス 訪問に頼らず、売上を伸ばす営業組織の強化ガイド』(茂野明彦 著、翔泳社)では、セールスフォース・ジャパンとビズリーチでインサイドセールス組織の立ち上げを経験した茂野氏の知見が記されている。
インサイドセールスの最大の価値は「買い手の購買体験を変化させること」です。(中略)また、売り手が買い手に提供するものは製品単体ではなく「買い手が認知してからの情報提供、商談後に製品やサービスを活用するまでに経験するすべての体験」であると考えています。その点においてもインサイドセールスが担う役割は重要であると言えます。(p7)
第1章では、インサイドセールスが担う役割とビジネスモデルに適した配置タイプの選び方について解説された。
<インサイドセールスの3つの配置タイプ>
- 分業タイプ:商談のパスのみを行う(SDR・BDRのみを配置)
- 独立タイプ:商談の成約までを完結(SDR・BDR・Online Salesを配置)
- 混合タイプ:ターゲット企業の規模や地域により、商談のパスのみか、成約まで行うかを分ける
※提供製品・サービスと対象顧客を踏まえ、ビジネスモデルに最適な配置タイプを示した「インサイドセールス適合表」(p29)を収録
「顧客の成功」を前提に、つねに変化できる組織へ
セールスフォース・ジャパンが提唱する「The Model」は、マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスに分かれた各部門の情報やKPIを可視化・連携することで生産性向上を図るビジネスモデルだ。
The Modelを単に「分業体制」と誤解してしまうと「インサイドセールス部門のゴールが『商談機会の提供』に」(p51)なってしまうと茂野氏。見込み客と企業の「最初の接点」であり、顧客から企業への評価を左右するインサイドセールスこそ、カスタマーサクセス(顧客の成功)の考え方を持たなければならないと指摘する。
最も恐れるべき事態は、知らずしらずのうちにお客様からの信頼を既存している場合です。間近の目標は商談機会の獲得かもしれませんが、その先には契約があり、さらにその先には顧客の成功という大きな目標があることを忘れてはいけません。(p52)
このような観点を持つと、必然的に、インサイドセールスは市場環境や社内情勢に合わせた変化が求められる。本書では「トヨタ生産方式」を参考に、「プロダクティビティマネージャー(生産性の責任者)」(p55)としてのインサイドセールスの存在意義を解説。状況に合わせて「常に変化できる組織」こそ、インサイドセールスの完成形であると定義した。
ほかにも本書では、インサイドセールスチームの立ち上げや採用、KPI設定、成果をあげるテクニックといった実践的ノウハウについて、キーパーソンへのインタビューとともに解説している。刻一刻と変化する市場に適応し、事業成長を牽引するインサイドセールス組織を実現するため、ぜひ本書を参考としてほしい。
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