インサイドセールスとは
インサイドセールスとは「Inside:内側の」「Sales:営業」という意味から、日本語で言う「内勤営業」にあたる職種・部門です。電話やメール、チャットやオンライン商談システムなどを活用し、顧客のもとに訪問することなく非対面で営業活動を進めます。
インサイドセールスの主な役割は、以下の3つです。
- リード(見込み顧客)のナーチャリング(育成)
- リードのクオリフィケーション(選別)
- アポイント獲得
マーケティングが獲得した大量のリードに対し、適切な情報発信やヒアリングを通じて信頼関係を構築して、購買意欲を高めていきます。受注確度が高いリードを選別してアポイントを獲得し、商談を創出します。アポイントを獲得したリードはフィールドセールス(外勤営業)へと引き継ぎ、フィールドセールスが商談を行って契約へと結びつける流れです。
営業プロセスを分業してインサイドセールスがリードのナーチャリングやクオリフィケーションを行うことで、フィールドセールスは確度の高いリードに集中できるため受注率を高められます。
ただし、企業によってはインサイドセールスが商談・契約まで担当することもあるため、企業のターゲット層や商材によってインサイドセールスの活用方法は多岐にわたっているようです。
また、インサイドセールスはテレアポ(テレフォンアポイントメント)と混同されることも多いですが、テレアポはアポイント獲得数のみを重視する傾向が強い一方、インサイドセールスはアポイントの量だけでなく質も重要視します。インサイドセールスのアポイントの質が高ければフィールドセールスの受注につながりやすくなるため、結果的に「売上向上」「事業成長」という目標に結びつくからです。
インサイドセールスの具体的な仕事内容や、フィールドセールスやテレアポとの違いについては、こちらの記事で詳しく解説しています。あわせてご一読ください。
関連記事:【保存版】インサイドセールスとは?基本知識や特徴・メリデメを解説
インサイドセールスの将来性
インサイドセールスは今後ますます需要が拡大し、将来的に伸びしろがある分野だと言われています。
ハブスポット・ジャパン株式会社が公表した「日本の営業に関する意識・実態調査2023」によると、インサイドセールス(本調査では「リモート営業」と表現)の導入率は42.1%で、前回調査時の40.4%から増加しています。
また、インサイドセールスは訪問する必要がないため、以下のようなメリットがあります。
- 移動にかかる時間や交通費を削減できる
- 電話やメールなどを活用するため、少ない人員でも多くのリードにアプローチできる
- 自宅などで業務ができるためテレワークとの親和性が高い
- 他部門と連携する必要があるためデータの蓄積・活用ができる
こうしたメリットがあるため、今後ますます導入率が高まっていくと予想されています。
出典:「日本の営業に関する意識・実態調査 2023」HubSpot Japan
インサイドセールスのSDRとBDR
インサイドセールスには「SDR」と「BDR」という手法があります。それぞれ、どのようなものか解説します。
SDRとは
SDR(Sales Development Representative)とは「反響型」とも言われ、リードからの問い合わせや資料請求などを起点にして営業活動を開始する、インバウンド型の営業手法です。
問い合わせや資料請求などのアクションを行うリードは、少なからず自社に対して関心を持っているものです。そういったリードに対してコミュニケーションを取り、アポイントを獲得します。
BDRとは
BDR(Business Development Representative)とは、自社が接点を持ちたい企業をターゲティングし、戦略的にアプローチしていく、アウトバウンド型の営業手法です。
まったく接点のない状態でアプローチを行うことから、関係性構築には時間が掛かります。しかし、自社にとって大きな収益をもたらしてくれる大企業をターゲットにすることも可能なため、成功すると大きな成果につながるでしょう。
インサイドセールスに求められる10のスキル
インサイドセールスは非対面で見込み顧客とコミュニケーションを取り、フィールドセールスが受注を獲得しやすいように購買意欲を高めて確度を見極めなければならない仕事です。そのため、フィールドセールスとは求められるスキルが異なるため、インサイドセールス特有のスキルを身に付ける必要があります。
ここでは、インサイドセールスに必要な10のスキルを紹介します。
非対面でコミュニケーションを取るスキル
インサイドセールスの大きな特徴は、電話やメールなどを活用して非対面で営業活動を進める点です。
対面でのコミュニケーションの場合、相手の表情の変化がわかりやすかったり、その場の空気感を読んだりできるため、信頼関係を構築しやすいでしょう。
しかし非対面の場合、電話だと声だけ、メールだとテキストだけのやり取りになるため、信頼関係を構築しにくい傾向にあります。近年は、その課題を解決するために、パソコンなどの画面上で相手の顔を見ながら話すことができるオンライン商談システムも登場していますが、対面と比較すると相手の表情や空気感は読み取りにくいため、対面と同じくらい信頼関係が構築しやすいとは言い切れません。
そのため、インサイドセールスは非対面でもコミュニケーションを取り、相手との距離を縮めていけるスキルが必要です。
たとえば電話を活用する場合は、相手に信頼感を与えられる話し方ができ、相手の声色や声のトーンなどから気持ちを読み取れるスキルを身に付けられると良いでしょう。
ヒアリングスキル
見込み顧客は、何らかの課題や悩みを抱えているため、解決できる可能性を期待して問い合わせや資料請求を行います。インサイドセールスは課題や悩みに沿った情報提供をしなければ、関心を持ってもらえません。
そのため、インサイドセールスは課題を聞き出せるヒアリングスキルが求められます。最適な質問を投げかけて、自社が知りたい情報を聞き出すことが重要です。
適切なヒアリングができれば、見込み顧客の課題を理解できるだけでなく、自社商材に対する関心度も把握できます。受注確度を判断するためにも、ヒアリングスキルは必要です。
情報収集スキル
見込み顧客一人ひとりに対して最適なアプローチをするためには、ヒアリングで得られた情報だけでなく、企業情報や業界動向などの情報を調べることも必要です。顧客企業が提供している商材やエンドユーザー層、さらに業界特有の商習慣や課題などを把握できていれば、自社商材をどのように活用できるか提案できる幅が広がるでしょう。
そのため、アプローチするためにはどのような情報が必要か、必要な情報をどのように調査するか、といった情報収集スキルが求められます。
データ分析スキル
インサイドセールスは、顧客に関する多様なデータを扱います。たとえば、マーケティングがそのリードを獲得したチャネルや、インサイドセールスがリードに対して行ったアプローチ履歴やリードの反応などに関するデータです。こうしたデータを分析し、リードの受注確度を判断したり、どの施策が成果につながっているか評価したりします。
したがってインサイドセールスには、データを分析して客観的に判断できるスキルが必要です。
また、データを分析するためのツールを使いこなせるスキルも求められるでしょう。
自社商材を理解しプレゼンできるスキル
フィールドセールスと分業している場合、インサイドセールスは商談を実施しないため商材について提案する機会は少ないと思われがちです。しかし、見込み顧客の購買意欲を向上させて受注確度の高い商談を創出するためには、自社商材の魅力を伝えることは必須と言えます。
そのため、まずは自社商材について深く理解しなければなりません。
インサイドセールスは非対面の営業手法のため、実物を見てもらったり、目の前で操作しながら説明したりすることが困難です。どうしたら相手に魅力を伝えられるか工夫し、最適なプレゼンができるスキルが求められます。
時間管理スキル
インサイドセールスは、より多くの見込み顧客と接点を作って購買意欲を高めていかなければならないため、限られた時間を効率よく使ってアプローチ数を最大化しなければなりません。いつまでに何件アプローチし、何件のヒアリングを行うか、といった時間管理が求められます。
また、マーケティングから引き継いだリードの数が膨大な場合、すべてに等しくアプローチするのは時間的な余裕がありません。そのため、購買意欲を見極めたうえで優先順位をつけてアプローチしていく工夫も必要です。
フォローアップのスキル
インサイドセールスは継続的にフォローアップし、見込み顧客との信頼関係を構築して受注確度を高めていきます。フォローアップが失敗すると、せっかく受注確度が高くなっていた案件も失注しかねません。
また、信頼関係を構築している途中で、見込み顧客に断られたり連絡がつかなくなったりする場合もあるでしょう。そうした場合にも、タイミングを見計らって改めてフォローアップすることで、再び関係性を構築できる可能性もあります。
受注確度の見極めスキル
インサイドセールスは、受注確度を見極めてアポイントを獲得しなければなりません。受注確度が低い状態だと、もしアポイントを獲得できても商談で良い反応が得られず、フィールドセールスの労力が無駄になる場合もあります。
見込み顧客の反応やヒアリング内容などから受注確度を見極め、適切なタイミングでフィールドセールスへと引き継ぐスキルが必要です。
PDCAスキル
インサイドセールスで成果を出し続けるためには、アプローチ方法を改善していくことが求められます。たとえば、数パターンのトークスクリプトやメールテンプレートを試して効果を測定し、より効果的な施策を発見していく必要があります。
このように、施策を実行しっぱなしではなく、効果を検証して改善していくPDCAスキルを持ち合わせていると、インサイドセールスで活躍できる人材になれるでしょう。
ツールを使いこなすスキル
インサイドセールスは見込み顧客に関するあらゆるデータを扱うため、ツールの活用が必須です。
- リード情報や案件情報を管理するSFA(営業支援システム)やCRM(顧客関係管理システム)
- データを分析するための計算ソフトや分析ツール
- ノウハウやマニュアルを共有するナレッジベース
こうしたツールを使いこなすことで、インサイドセールスで成果を出せるようになります。
インサイドセールスに向いている人の特徴
最後に、インサイドセールスに向いている人の特徴を3つのポイントに絞って紹介します。
コミュニケーションスキルが高い人
インサイドセールスは見込み顧客と関係性を構築していく仕事のため、コミュニケーションスキルが高い人が向いています。コミュニケーションを取って適切に距離感を縮め、信頼関係を構築していけると良いでしょう。
インサイドセールスは非対面の営業手法のため、電話やメールなどの非対面のコミュニケーションツールが得意であることも重要です。
適切な質問をして情報を聞き出せる人
インサイドセールスは見込み顧客が求めている情報を提供していく必要があるため、見込み顧客の課題やニーズを把握しなければなりません。適切な質問を投げかけ、情報を聞き出すことが得意な人は、インサイドセールスの適性があると言えるでしょう。
継続して挑戦できる人
インサイドセールスは、その場限りのやり取りではなく、継続的にコミュニケーションを取り続けて信頼関係を構築していきます。また、施策の効果を検証して、次の施策を考えることもあります。
このように、インサイドセールスは継続して取り組む場面も多いため、諦めずに挑戦し続けられる人が向いています。
スキルの可視化!インサイドセールスのスキルマップ
インサイドセールスには幅広いスキルが必要です。そうしたスキルを一人ひとりが持ち合わせているかを可視化できるのがスキルマップ。スキルマップを活用して各担当者のスキルを洗い出し、適切な教育を行いましょう。 スキルマップとは
スキルマップとは、従業員一人ひとりの保有しているスキルと達成度(レベル)を一覧にした表です。
どのようなスキルを持っていて、どのくらいのレベルに達しているのか把握できるため、主に人材育成・人材開発の場面で活用されています。
スキルマップ活用のメリット
スキルマップを作成することで、以下のメリットが期待できます。
- 個人のスキルレベルを可視化できる
- 一人ひとりの強み・弱みを把握できる
- 業務上必要となるスキルを保有しているか明らかにできる
各従業員の保有スキルやレベルを可視化できるため、得意・不得意な分野が明らかになり、適材適所の人材配置が可能になります。また、業務上必要となるスキルを十分なレベルまで持ち合わせているかを把握でき、不足している場合は適切な教育を実施できるでしょう。
スキルマップの作り方
必須スキルを持っているかを可視化できるスキルマップ。それでは、どのように作成したらよいのでしょうか。スキルマップの作成方法を紹介します。
- 業務内容を洗い出す(例:「架電業務」「メール配信」など)
- 必要なスキルを大枠のカテゴリに分け、細かいスキルに分けていく(例:カテゴリ「コミュニケーションスキル」スキル「電話応対」「メール対応」「チーム内」)
- レベルの基準を決める(例:「SS、S、A、B、C」や「1、2、3、4、5」)
- マップに記入する
自社のインサイドセールス業務に合わせて必要なスキルを洗い出し、マップを作成しましょう。
インサイドセールス立ち上げの際の注意点
この記事を読んでいる人の中には、インサイドセールス立ち上げの際の人材確保などに携わっているマネージャーや人事関係の人もおられるかもしれません。
インサイドセールスを立ち上げる際には、一人ひとりの保有スキルや強み・弱みに合わせた人材育成・教育の体制が必要です。社内の人材のスキルマップを作成して得意・不得意を明らかにし、インサイドセールスに適性のある人材を抽出して適材適所の組織づくりをしましょう。
また、適切なKPI設定によって個人の成果を評価し、さらなる人材育成を行いスキルアップを実現することも重要です。
インサイドセールス立ち上げ時のポイントは以下の記事で詳しく紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
関連記事:インサイドセールス立ち上げを解説!7つの導入ステップ、成功事例も紹介
まとめ
インサイドセールスは非対面で営業活動を進めて関係性を構築していくため、訪問型のフィールドセールスとは異なるスキルが求められます。インサイドセールスならではのスキルが必要となりますが、本記事で紹介したスキルを習得できれば活躍できる人材になれる可能性が高まります。
まずは自身のスキルを棚卸しして、不足しているスキルを身に付けられるよう、実務経験を重ねたり研修を受けたりしましょう。また、すでに身に付いているスキルを強化していくことで、さらに自身の強みになるはずです。