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営業の仕事は「売る」ことなのか? 「Buyer Enablment」をめぐる冒険

2024年7月12日(金)13:00~18:20

常に高い売上目標を達成し続けなければいけない営業組織。先行きの見通しが立たない時代においても成果を挙げるためには、過去の経験にとらわれず、柔軟に顧客や時代に合わせて変化し続けなければなりません。変化に必要なのは、継続的な学びであり、新たなテクノロジーや新たな営業の仕組みは営業組織の変化を助け、支えてくれるものであるはずです。SalesZine編集部が企画する講座を集めた「SalesZine Academy(セールスジン アカデミー)」は、新しい営業組織をつくり、けん引する人材を育てるお手伝いをします。

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【保存版】インサイドセールスとは?基本知識や特徴・メリデメを解説


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 インサイドセールスの活用が進みつつある。企業としての生き残りをかけた業務効率化・生産性向上のカギとして導入を検討する企業は増加している。その一方で、人手不足や専門知識不足などの理由から導入に踏み切れない企業も一部ある。そこで本記事では、インサイドセールスの基本的な知識や特徴に加えて、メリット・デメリット、インサイドセールスを立ち上げるまでの準備について解説していく。

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インサイドセールスとは何か?

 まずは、インサイドセールスとは何かを知るところから始めよう。インサイドセールスがどのような役割を担っているのか、そしてどのような種類があるのか見ていく。

インサイドセールスの役割

 インサイドセールス(Inside Sales)とは、「Inside=内側」「Sales=営業」という意味から「内勤営業」を指し、顧客と非対面で営業する手法やその業務を指す。マーケティング部門が獲得した見込み顧客(リード)に対し、メールやチャット、SNS、電話、Web会議システムなどを用いて、顧客を実際に訪問することなくコミュニケーションを取っていくのが主な役割だ。

 具体的には、Webサイトを通じた問い合わせや資料請求をしたり、展示会やセミナーなどに参加したりしたに対して、自社の商品・サービスに対する関心度やリードが抱えている課題などをヒアリングし、適切にコミュニケーションを取って信頼関係を深めていく。

 例えば、Webサイトを通じてリードから問い合わせが来ても、その時点ではリードの購買意欲はわからない。そのため、インサイドセールスがリードに対して問い合わせをした理由や背景、抱えている課題などについてヒアリングして購買意欲を見極めることで、最適なネクストアクションが可能になる。そうして継続的にコミュニケーションを取り、リードの購買意欲が高まった段階で商談を打診してアポイントを獲得し、フィールドセールスにつなげるのだ。

 このように、簡単にいうとインサイドセールスの役割は、リードをフィールドセールスへと橋渡しをすることだ。 しかし、業種や商材によってはインサイドセールスが商談やクロージングまで担当したり、既存顧客のフォローを行ったりする例も。

インサイドセールスの種類

 インサイドセールスには、大きく2種類の手法がある。SDRとBDRだ。ここでは、簡単に両者の違いについて触れておこう。

 SDR(Sales Development Representative)とは、反響型と呼ばれる手法だ。インバウンド型とも呼ばれる。前段で触れたように、マーケティング部門が選び出したリードや問い合わせなどのアクションがあった顧客に対して、コミュニケーションを取っていく。

 それに対し、BDR(Business Development Representative)は、新規開拓型と呼ばれる手法だ。アウトバウンド型とも呼ばれるもので、リードからのアクションに応じるのではなく、自社から積極的にアプローチしていく手法だといえる。

 先述した「マーケティングから引き継いだリードをフィールドセールスに渡す」というインサイドセールスはSDRに該当し、現在の日本で主流のインサイドセールス手法だ。

インサイドセールスと従来型営業との違い

 インサイドセールスは従来型の営業手法とどのような違いがあるのだろうか。

 下図は、従来型の営業およびインサイドセールスの一例を示したものだ。対比をわかりやすくするため、従来型の営業もターゲット設定までを業務範囲としている。

 図にあるように、従来型の営業は、ターゲットの設定からリード獲得、アプローチ、アポイント獲得、商談、成約という営業プロセスのすべてを1人の営業担当者の業務範囲とする。

 この場合、1人の営業担当者のタスクが非常に多くなる。効率的に成果を高めるためには、見込み度の高いリードを集中的にフォローしていくことになり、すべてのリードに対して均等にアプローチするのが難しく、掘り起こし不足やフォロー不足などでリードをとりこぼす確率も少なくない。

 しかし、インサイドセールスを含む分業型のセールスモデルでは、従来型の営業が担当する業務範囲をマーケティングとインサイドセールス、フィールドセールスの3部門に分けて担当する。

 細分化することで、それぞれの業務範囲に集中できることが大きな特徴だ。マーケティングはターゲット設定とリード獲得を、インサイドセールスは獲得したリードにアプローチしアポイント獲得までを、フィールドセールスが商談からクロージングまでを担当する。そのため「見込み度が低いリードにはマーケティングが対応する」「優先すべきリードにはインサイドセールスが対応する」「購買意欲が高まったリードをすぐにフィールドセールスに引き継いで受注へつなげる」といった柔軟な対応が可能になり、全体で成果を高めていける。場合によっては、受注後の既存顧客フォローをカスタマーサクセス部門が担当し、顧客と半永久的な関係性を継続することでさら収益アップが実現するだろう。

インサイドセールスと他職種との違い

 インサイドセールスと混同されやすいのが「フィールドセールス」と「テレアポ(テレフォンアポイントメント)」だ。それぞれの違いについて解説していく。

フィールドセールス(訪問営業)との違い

 フィールドセールスとは、非対面でアプローチするインサイドセールスとは反対に、顧客と対面してアプローチする営業手法だ。「外勤営業」とも言われ、外回りがメインとなる。

 直接顔を見て話ができるため信頼関係を構築しやすかったり、実際の商品を見てもらいながら商談をするため商品の魅力を伝えやすかったりする点がメリットと言える。ただし、移動に交通費や時間がかかる点や、手当たり次第に訪問しても1件も成約できない点などが課題となっている企業も少なくない。

 そこで、前述しているようにインサイドセールスが見込み度の高いリードをフィールドセールスへ引き継げるよう連携できれば、フィールドセールスは受注確率の高い商談に集中できるようになる。結果的に、無駄な交通費や移動時間をかけることなく、効率的に受注を獲得できるのだ。

テレアポとの違い

 テレアポとは「テレフォンアポイントメント」の略称で、電話を通じてアポイントを獲得する職種だ。インサイドセールスも電話を使って営業活動を行いアポイントを獲得するため、しばしば混同されることがある。

 しかし、2つの職種には「目的」という点で大きな違いがある。テレアポは、単純にアポイントの獲得が目的のため、架電数やアポイント獲得数のみで評価される。

 一方のインサイドセールスは、リードの課題や関心度に合わせて中長期的に関係性を構築し、見込み度の高い商談を創出することが目的だ。そのため、架電数やアポイント獲得数だけでなく、フィールドセールスが実際に行った商談数や受注率なども大事な評価指標となる。

インサイドセールスと親和性の高い商材とは?

 分業体制を取ることで成約の確率を高めていくインサイドセールスだが、すべての商材で必ず成果が上がると約束されているわけではない。非対面という特徴から、取り扱う商材の向き・不向きがあるため、インサイドセールスの効果を期待できる商材とそうでない商材を取り上げてみよう。

インサイドセールス向きの商材

 インサイドセールスに向いている商材には、以下のようなものがある。顧客は、企業(toB)も個人(toC)も想定される。

  • SaaS製品
  • サブスクリプション型(月額制)の商品またはサービス
  • 各種サービスなどの無形商材
  • 保険や投資などの金融商品

 SaaS(Software as a Service)製品とは、サービスとしてのソフトウェアを指す。サブスクリプション型で提供される商品やサービス、各種サービスを提供する無形商材、金融商品などがインサイドセールスに向いているとされているが、ここに挙げた商材には共通点があるので、確認しておこう。

 商品やサービスの仕様がパターン化されていることに加えて、高度にカスタマイズする必要がない点が共通点だといえる。販売したらそれで終わりという売り切りタイプの商品でもなく、購入後の継続的な使用が前提になっているという点にも注目したい。

 また、インサイドセールスは、メールやWebサイト上のチャット、SNS、Web会議システム、電話などを活用し非対面で顧客とコミュニケーションを取ることから、リードの獲得からクロージングまでをオンラインで完結できる商材とも相性がいい。

 さらに、サブスクリプション型の商品・サービスの場合は、顧客との契約が成立した後にもアップセル(単価上昇)やクロスセル(関連商品の販売)といった形で収益アップにつなげることもできる。

 インサイドセールスに向いている商材は、工夫次第で効率的に収益をあげることが可能だ。

インサイドセールス向きではない商材

 インサイドセールス向きの商材がある一方で、そうではない商材があることにも触れておかなければならない。インサイドセールス向きではないとされている商材は、以下のようなものだ。

  • 特注品などのオーダーメイド商品
  • システム開発など高度なカスタマイズを必要とする商品やサービス
  • 高級車や不動産などの高額商品
  • 日用品など価格帯の低い商品

 このような商材の共通点は、ほかにはない唯一無二のものでパターン化が難しく、購入までのシナリオやプロセスも複雑な点だといえる。高級車や不動産は、試乗や内覧など、実際に体験・体感してみないことには決められないため非対面のインサイドセールスでは魅力を伝えきれない。

 価格という点では、低価格帯の商品やサービスもインサイドセールス向きではない。このような価格帯の商材にはすぐ使う消費財が多いことから、即断即決で購入する傾向があり、インサイドセールス特有の「中長期的にコミュニケーションを取る」という手法が通じないのだ。

なぜ今インサイドセールスが注目されているのか

 近年、インサイドセールスの実施や導入が広がっているのには理由がある。インサイドセールスの意味や意義と言い換えてもいい。なぜ今インサイドセールスなのかを見ておこう。

パンデミックによる影響

 世界中に大きな衝撃を与えたパンデミック(COVID-19)により、各国で外出制限や自宅待機などが求められる中、日本で促進されたのがリモートワークだ。そして、リモートワークでも営業できると注目を集めたのがインサイドセールスだった。

 パンデミックは2019年末ごろから報道されはじめたが、折しも日本では、2019年4月から働き方改革関連法案が施行されていた。リモートワークもそのひとつだが、大手など一部の企業のみに留まっていたところを、パンデミックが急激に推し進めた格好となった。

 営業には不可欠となる対面での商談がかなわず、客先に出向く出張なども移動制限で行えない。会って話すという営業の基本ともいえる方法が実施できなくなったことから、やむを得ずリモートワークを導入した企業も少なからずあるのではないだろうか。

 そのような中、インサイドセールスは非対面で安全に顧客とコミュニケーションが取れるためニーズが高まった。

慢性的な人手不足

 少子高齢化による労働力の減少も、見逃せない理由のひとつだ。

 日本の生産年齢人口(15~64歳)が最大数となったのは、1995年の8,716万人だ。そこから右肩下がりに減少を続け、2020年には7,509万人と、この25年間で1,207万人減少している。そして、この減少傾向は、今後も続くと予想されている。

 このような状況の打開策となりえるのが、インサイドセールスだ。従来型の営業職には、知識や経験はもちろんのこと、時に高度なスキルを求められることもあり、育成には長期の時間が必要だ。優秀なトップセールスを人材市場で獲得しようとすれば、相応の費用を見込まなければならない。

 一方、インサイドセールスは非対面でオンラインツールやデータ分析を活用し、より多くの顧客にアプローチするため、少ない人員でも効率的に営業ができる手法だといえるだろう。営業フローを仕組み化できれば誰でも成果を出せるため、育成にかける時間も少なくなる。

働き方の多様化

 前述したように、働き方改革で業務効率化や生産性向上が求められている。それに加えて近年では、「転勤したくない」「在宅で勤務をしたい」など、採用される側のニーズも多様化している。

 働き方の多様化が進む中で、インサイドセールスは、ワークライフバランスを提供できる仕事としても脚光を浴びているといえる。特に、リモートワークや在宅勤務など、自由度の高い働き方に対して強い関心を示している人には、有力な選択肢のひとつといっても過言ではないだろう。

デジタル化の加速

 近年のデジタルテクノロジーの進歩は著しい。私たちの日常生活でもデジタルが不可欠となり、AIやIoTなどの最新技術により生活の質が向上している事例も少なくない。

 このようなデジタル化の加速は、インサイドセールスの普及を後押ししている。

 電話やメールだけでなく、チャットやSNS、Web会議ツールなどの多くのデジタルツールが登場し、非対面でも顧客とコミュニケーションを取れるようになっている。さらに、顧客とのやり取りの履歴を記録したり、自動でデータを分析したりできるツールも開発されており、データに基づいてより効果的なネクストアクションを実行できるようになった。

 今後もデジタル化が加速している世の中で、インサイドセールスはさらに広まっていくと見られる。

顧客の購買行動の変化

 デジタル化は、顧客の購買行動にも影響している。

 かつては、顧客はテレビCMや店頭で商品・サービスについて知り、営業担当者から情報を得て購入を決めていた。しかしインターネットが普及した現代では、顧客は企業サイトやSNS、口コミサイトなどを通じて、自身で情報を収集できるようになっている。つまり、営業担当者と会う前に、購入するかどうかを顧客自ら決められる状況なのだ。

 こうした状況下では、企業がアプローチするタイミングが非常に重要となる。なぜなら、顧客が自社商品・サービスに関心を持ってくれたタイミングを逃してしまうと、それ以降の購買プロセスにつながらないからだ。

 そのため、マーケティング部門が獲得したリードに対し、1人ひとりのニーズや状況などに応じてインサイドセールスがアプローチできれば、顧客を取りこぼさずに受注へとつなげていける。

インサイドセールスのプロセスと業務内容

 次は、インサイドセールスが進めていく営業プロセスと業務内容を見ていこう。

1. リードの獲得(ジェネレーション)

 基本的にはマーケティング部門がリードの獲得(リードジェネレーション)を行うが、企業によってはインサイドセールスが担当する場合もある。例えば、BDRの場合だ。

 先述のように、新規開拓型と言われるBDRは自社から能動的にアプローチしてリードを獲得する。

2. リードの育成(ナーチャリング)

 マーケティング部門から引き継いだり、BDRが獲得したりしたリードに対し、継続的にコミュニケーションを取って見込み度を高めていく。これが、リードの育成(リードナーチャリング)だ。

 膨大なリードを獲得したとしても、すべてのリードが等しく見込み度が高いわけではない。情報収集段階のリードもいれば、すぐにでも購入したいというリードもいる。そこで、インサイドセールスがリードの関心度や課題などをヒアリングしたうえで、それぞれのリードに適した方法でアプローチする。もともと関心度が高いリードはすぐに商談へとつなげ、関心度が低いリードに対してはコミュニケーションを通じて購買意欲を醸成していく。

3.リードの選別(クオリフィケーション)

 膨大なリードの中から「リードクオリフィケーション」という選別を行って、見込み度の高いリードを抽出する。これには「スコアリング」という手法が使われることが多い。

 スコアリングとは「メールを開封したら○点」「~~という課題を持っていたら○点」などと、リードのアクションや状況などに応じて点数を加算していき、高い点数のリードほど見込み度が高いと判断する方法だ。

 見込み度が高いリードほど、優先して対応して次のフェーズへと進める。

4. 商談の創出

 見込み度の高いリードに対してアポイントを打診し、商談を創出する。以下に受注確度の高い商談を創出できるかが、インサイドセールスの重要な役割だ。

5. 商談

 企業によっては、商談もインサイドセールスが行うこともある。このような企業では、インサイドセールス部門自体も分業化されており、リードナーチャリング・クオリフィケーション・商談創出を担当するインサイドセールスチームと、商談を担当するインサイドセールスチームに分けられている場合が多い。

 インサイドセールスが商談を行うとき、Web会議ツールを活用する場合がほとんどだ。画面共有や資料共有などの機能を使い、対面商談と同じように商談を展開できる。

6. クロージング

 インサイドセールスが商談でリードに価値を提供できたら、クロージングへと進む。クロージングとは契約へ結びつける最終段階のため、リードの社内稟議をサポートしたり、決裁者と交渉したりすることもある。

7. 既存顧客へのアップセル・クロスセル

 企業によっては、既存顧客へのアプローチをインサイドセールスが行う場合も見られる。

 既存顧客の解約防止やリピート購入を促すカスタマーサクセスとは異なり、インサイドセールスはアップセルやクロスセルなどを担当することが多い。

 アップセルとは、現在のプランのアップグレードや、現在の商品よりも高性能モデルの商品などを提案することだ。そしてクロスセルは、関連商品やオプションなどの販売を指す。

インサイドセールスを実施するメリットとデメリット

 次に、インサイドセールスを実施するメリットとデメリットを見ていこう。どのような効果を期待でき、その一方でどのようなことに注意が必要かを知っておくことで、実施や導入に向けた検討が進むだろう。

インサイドセールスのメリットや期待できる効果

 インサイドセールスには、次のようなメリットがある。

  • 営業効率アップ
  • コスト削減
  • 属人化防止

営業効率アップ

 インサイドセールスを実施する大きなメリットのひとつは、営業効率の向上だ。従来型の営業では、分業型のインサイドセールスに比べて1人が担当する業務範囲が広いため、労力のかけ方にムラが出やすい。

 それに対して、インサイドセールスは、リードへのアプローチと商談化・案件化という範囲のみを担当する。オンラインツールや電話などを活用し、より多くのリードと適切なコミュニケーションを取るため効率的だ。

 マーケティングやフィールドセールスとの分業体制で、顧客に対して丁寧にフォローしていくこともできるため、商談化・案件化のタイミングを逃す可能性が低くなる。

 リードとのやり取りの履歴やリードの反応などのデータも蓄積されているため、失注原因も分析しやすく、アプローチ方法をブラッシュアップしていくことで精度を上げることも可能だ。

コスト削減

 コスト削減も大きな魅力といえる。従来型の営業では、面談や出張が不可欠なため、移動に時間や費用などのコストがかかる。交通費はもちろんのこと、出張の場合は宿泊費や出張手当なども発生するだろう。これに加えて、労力というコストも見落としてはならない。事前に出張計画を準備し、移動手段や宿泊先を予約、出張申請をして許可を得るといった一連の事務作業にも、相応の労力が払われている。

 インサイドセールスの場合、こうしたコストの削減が可能だ。移動や出張などの経費がかさんでいる場合、それを見直すきっかけにしてもいいだろう。

 また、リモートワークや在宅勤務を導入することによって、オフィススペースや設備維持にかかるコストも節減できる。

属人化防止

 営業のノウハウやスキルが担当者個人に依存しないようにできるのも、企業にとっては魅力的だろう。成果を上げている営業パーソンがいるとしたら喜ばしいことだが、その人がいなくなったら途端にわからなくなってしまうというのでは、あまりにもリスクが高い。

 その点、インサイドセールスはセールスプロセスを体系化し、リードの反応を想定したシナリオを用意しておくことが不可欠だ。つまり、営業パーソンのスキルや経験に依存することなく、統一した方法で顧客にアプローチできる。

 マニュアルやシナリオ、トークスクリプトといった方法を用いて業務を標準化して営業チームで共有することにより、チーム全体の知識やスキル向上、新入社員教育の省力化もしやすくなるといえる。

インサイドセールスのデメリットや解決すべき課題

 インサイドセールスのデメリットや解決するべき課題として挙げられるのは、以下の3点だ。

  • マーケティングやフィールドセールスとの連携が不可欠
  • 情報共有できる仕組みやツールが必要
  • 対面営業のような信頼関係を築きにくい

マーケティングやフィールドセールスとの連携が不可欠 

 インサイドセールスの課題のひとつは、マーケティングやフィールドセールスとの連携が不可欠という点だ。インサイドセールスが単独でリード獲得からクロージングまで担当する場合を除き、連携は必須である。

 例えば、マーケティングからリードの情報を引き継いでもらえれば、インサイドセールスはリードの抱えている課題や置かれている状況を把握したうえでアプローチできる。そして、フィールドセールスに引き継ぐ際にも、どのようなやり取りをしてリードがどのようなニーズがあるかトスアップできれば、フィールドセールスは最適な提案をして受注を獲得しやすくなる。

 連携体制を強化するために、ツール同士の連携や社内の連絡体制を見直す必要があるだろう。

情報共有できる仕組みやツールが必要

 前述のとおり、3部門の連携には情報共有システムやツールが必要だ。情報共有の仕組みやツールが導入されていなかったり、手作業で情報共有していたりすると、連絡の漏れ・遅れや二重連絡などのミスが起こりやすい。

 また、1人のリードに対して複数人で対応する場合には、引き継ぐまでの間にどのような対応をしてきたか、リードからどのような反応があったかをわかるようにしておかなければならない。そうでないと、リードは「それはもう聞いた」または「伝えたはず」という不快感につながりかねない。そのようなことが重なると不信感を招いてしまう可能性すらあるので注意が必要だ。

対面営業のような信頼関係を築きにくい

 対面営業のように信頼関係を築きにくいというのも、インサイドセールスのデメリットのひとつといえる。直接会って話せる対面営業では、話し方や顔色、その場の雰囲気などで関係性を構築しやすい。

 一方、インサイドセールスは非対面のため、仕草や表情、目線、声色、物理的な距離の取り方など、非言語のコミュニケーションが伝わりにくいという特徴がある。顧客の求めに応じ、適切にコミュニケーションを重ねていく中で、顧客との信頼関係を築いていかなければならない。

インサイドセールスを立ち上げるには

 ここでは、インサイドセールスを立ち上げるための手順を見ていこう。従来型の営業を実施している企業がインサイドセールスを実施し始めるときだけでなく、すでにインサイドセールスを導入しているもののどうも上手くいかないという企業の見直しにも活用してほしい。

インサイドセールスの目的を決める

 まずは、インサイドセールスの目的を設定しよう。自社の営業課題に沿って、なぜインサイドセールスを導入する必要があるのか検討する。具体的には、営業力の強化や営業の効率化、営業プロセスの標準化などが挙げられる。

 インサイドセールスの部門を立ち上げるにあたり、社内の強力を得るためには、明確な目的が必要だ。

インサイドセールス立ち上げに際するリスクを洗い出す

 企業によって、インサイドセールスの実施に向けて解決しなければならない課題は異なる。インサイドセールスを立ち上げるための人的リソース不足なのか、インサイドセールスに従事する人数不足なのか、業務のノウハウ不足なのか、ツールがないのか。必要な研修をどのように実施するのか、組織をどのように位置づけるのか、インサイドセールスの業績評価や報酬体系はどうするのかなど、導入にあたってリスクとなる課題は少なからずあるだろう。

 自社にとっての課題は何かを洗い出し、その中でも優先的に取り組むべき重要な課題を明確にしておくことも必要だ。

 新しくインサイドセールス部門を立ち上げるということは、現在の営業プロセスを見直せる機会でもある。必要であればマーケティング部門も巻き込み、営業プロセス全体を刷新するつもりで課題を洗い出すことをおすすめする。

インサイドセールスが担う役割を決める

 次は、インサイドセールスが担う役割を決めよう。

 現状の営業プロセスを書き出すなどして可視化し、どのフェーズをインサイドセールスが担当すると営業効率が上がるのかを考える。自社の業界や業態、業務全体を見渡し、オンラインによるアプローチがどの営業フェーズに適しているかを考慮しよう。

 立ち上げ当初は、WebサイトやSNSからの問い合わせ対応、チャット経由の質問対応などスモールスタートすると良いだろう。効果を確認しながら改善を重ね、徐々に業務範囲を広げていくことをおすすめする。

組織づくりや人選をする

 組織づくりや人選も、インサイドセールスを立ち上げるには欠かせない準備のひとつだ。一般的には営業部内に設置されることが多いが、インサイドセールス部門をどこに設置するかは、企業によって変わってくるだろう。インサイドセールスはマーケティングやフィールドセールスとの連携が重要なので、その点をよく検討しなければならない。

 責任者や実際にインサイドセールスの業務に就く担当者など、適任者の目星をつけておく必要がある。社内の人材ではリソース不足だと感じるようなら、外部サービスの力を借りることも検討しよう。自走できるようになるまで力を貸してもらうというのも選択肢のひとつだ。

KPIの設定をする

 目標となるKPI設定も重要だ。KPIを設定しておけば効果測定がしやすいため、PDCAを回してブラッシュアップできる。

 例えば営業力の強化が目的の場合、獲得するリード数や商談数、新規開拓した顧客数などをKPI指標とすることができる。インサイドセールス部門が定着するまでは、あまりに高すぎる目標は設定しないほうが良いだろう。

まとめ

 インサイドセールスとは、オンラインツールを活用しリードに適切なアプローチをしていく営業手法だ。マーケティング部門とフィールドセールスとで従来型の営業プロセスを分担し、緊密に連携しながら成約の可能性を高めていく。最大の特徴は、少ない人数でも数多くのリードにアプローチできる効率的な営業手法という点だ。ここで紹介したインサイドセールスの特徴やメリット・デメリットなどを踏まえて、実施を検討しよう。

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