ワークスアプリケーションズで「営業の虜」に
──新卒から一貫してエンタープライズセールスでいらっしゃいます。最初から営業職への思い入れも強かったのですか。
コミュニケーション能力に自信があり、それなりに成果も出していたものの、1社めでは「営業としてこうなりたい」というイメージを持っていませんでした。2社めのワークスアプリケーションには14年ほど勤めたのですが、そこで学んだフレームワークやお客様と築いた関係性が僕を営業の虜にしたと思っています。
──どのような経験をされたのでしょう。
まずは、「営業はパートナーである」「顧客の下につくな」というスタンスが徹底されていました。
提供していたERPは大手企業向けのもので、コンペであたるのは日本の大手SIerばかり。ただ、ソリューションには大きな特徴がありました。大手企業へのシステム提案では、顧客ごとのカスタマイズが一般的ですが、ワークスアプリケーションズはカスタマイズを一切しない。代わりにあらゆる機能を有している、いまで言うSaaSのような立ち位置のソリューションでした。
ただ、顧客としてはカスタマイズがあたりまえ。ソリューションに特徴があっても一筋縄ではいきません。お客様のスタンスや考え方を一緒に変化させていくことが必要で、とにかく難易度が高かった。理路整然かつ、情熱を持って取り組まないと勝てません。お客様には「僕たちと挑戦すれば必ず成功する」という道筋を見せ、僕たちと同じ、いやそれ以上にソリューションに共感してもらい、推進力を持って進めてもらうことに尽力しました。
──相手の要望を叶えていく売り方とはまったく違う売り方ですね。当時の上司や同僚の言葉で忘れられないものはありますか。
いくつもあります。たとえば「100%受注」、要は失注はないという考え方です(笑)。ERPは稼働まで2年かかるケースもあります。お客様が一度ほかのソリューションを選んだとしても、ひっくり返ることもあるかもしれない。どのような状況でも諦めないことを大切にしていました。
またお客様の組織内の相関図やシナリオを徹底的に考えることも仕込まれましたね。「スピルバーグ」という社内用語があり、自分が映画監督だったら、お客様の組織をより良い状態に連れていくために、どのようなストーリーを描き、登場人物にどう活躍してほしいか常に考えていました。このような世界観で営業を捉えられるようになったのは良かったですね。
「ホワイトボードミーティング」もいまに活きている取り組みのひとつです。ホワイトボードの前で案件の状態を報告し、さまざまな人からリスクの指摘をしてもらいます。うまく回答できなかったり、気持ちだけで「大丈夫だと思います」と乗り切ろうとしていたりする部分については、すべて社内であらためて確認をしなければならないルールでした。これらを経て、1つひとつの商談の質をかなり高めることができました。