成功のカギは「スモールスタート4ステップ」
セッション冒頭、堀氏は日本でDXに成功した企業の割合は14%であることを紹介した。ボストン・コンサルティンググループが実施した「デジタルトランスフォーメーションに関するグローバル調査(2020年4月~6月実施)」で示されているこの数字は、世界各国の平均である30%の約半分にとどまっているという。同調査には、DXに失敗した企業の共通点として挙げられた特徴は次のとおりだ。
1. 目的と戦略が不明瞭で価値創出までの道筋が見えていない(=DXが目的化している)
2. 人/テクノロジー投資が不十分
3. 業務効率を高めるための対応が不十分
それではどのようにすれば、DXを成功させることができるのか。堀氏は、「『売り手(社内)』と『買い手(社外)』のふたつの視点から、それぞれの課題にアプローチすることが重要」と語る。
まず社内については、関係者全員が『目的とゴール』を共通認識として持つことが必須だ。そのうえで、価値創出までの道のりが長くなりすぎないように、できるだけスモールスタートで「小さな成果を早期に出すこと」が大切であると説明した。重厚長大な目標とロードマップを立てるのではなく、無理なくできる範囲での取り組みを積み重ねていくことが結果的に大きな成果につながることを強調する。
具体的には、まず事業成長への影響が出やすいタスクから着手し、無理のないリソースで成果を得ることを意識しつつ、適宜外部パートナーの力を借りながら小さな成果を上げていく――その後は成果の恩恵を受けられる自分たちとは別のチーム内に協力者を見つけ、社内ネットワークを広げていく、という一連のフローを解説した。
「一見時間が掛かるように見えますが、いきなり社内全体で重厚長大に始めようとしても、なかなかうまくいかないことが多いんです。やはりコントロール可能な範囲から小さくスタートし、ステップ・バイ・ステップでマイルストーンを置きながら進めていくほうが、結局は最短でゴールに辿り着くことができると思っています。実際に、私たちが支援をする中でもそうした実感があります」(堀氏)
一方、買い手側に関しても急速なデジタルシフトが進んでいることを堀氏は指摘。2019のForresterの調査によると、BtoBの取引において、購買行動のはじまりは「検索から着手する」が92%、「初期検討時にはセールスと接触したくない」が60%、「非対面のみで購入先を絞り込む」は62%に上るのだという。なお、これらのデータはコロナ禍以前のものであるため、現在はこの傾向がさらに強まっていることが想定される。
非対面が好まれる傾向は、マインド面だけでなく実際の行動の側面でも顕著な変化が表れている。実際に、SATORIの営業活動においても対面・非対面の営業活動の割合を比較すると、2020年初期までは対面営業のほうが割合が高かったものの、コロナ禍以降は急速にオンライン営業へとシフトし、現在でもその傾向に変化はないのだという。