分析による“定量”にセールスの“実感”を掛け合わせるABM
――マーケティングや営業の世界でABMという手法が注目されつつあります。まずはFORCASが提供するABMサービスとはどのようなものなのか、簡単にご紹介いただけますか。
田口 一言でいうなら、「データドリブンで『自社のサービスや製品にとって成約確度が高い企業』を簡単に特定できるサービス」でしょうか。
まず、当社がもつ約120万社の企業データベースから、「働き方改革に積極的」とか「MAツールを使っている」「営業職を大量に募っている」など、当社が持っているさまざまなデータ(シナリオ)にフラグを立てることによって、ある特徴に基づいた企業リストだけを抽出することができます。また、自社の既存顧客リストをアップロードすると自動的にそれらの企業の特徴や傾向を抽出して、それに合致した企業をリストアップしてくれるという「自動顧客分析機能」も備えています。このふたつの方法で”自社が狙うべき企業のリスト”である「ターゲットアカウント」を決めたあとは、ターゲットリストの情報や企業の属性情報をSFAやMAへAPIで自動に連携できるようになっており、部門同士のスムーズな連携を支援しています。
主にマーケティング部門で活用していただくケースが多いのですが、他にも組織横断的に営業方針や戦略を立てる営業推進部や営業戦略室、そして営業部に直接利用していただくケースも増えてきています。
土屋 おそらく多くの企業で、自社で作成するターゲットリストの精度の低さが課題になってきているのだと思います。いざリードがセールスにパスされても、営業ニーズが低くてなかなか受注に結びつかないケースはよく伺います。顧客を知っているのはやはりセールス部門であり、その「ここはいける」という皮膚感覚を数値化・言語化してリストに落とし込めるようにすることがABMのキモと言えるでしょう。FORCASは膨大なデータ分析に基づく”定量データ”と、セールス側の”実感”をかけ合わせることでターゲットのセグメントの精度を高めています。ABMはマーケティング手法のひとつと見られがちですが、ABMの実践にはセールスの協力は不可欠です。
とはいえ、日々数字を追う多忙な中で、セールスが言語化も含めてリスト化して分析まで行うとなると負担も大きい。そこで、リストを管理するデータアナリシスチームがセールスの人間と密に連携できるよう、ABM活用にはうまく分業できる仕組みが不可欠と言えるでしょう。
田口 私自身がセールスを担当しているのですが、たとえば、インサイドセールスを担っている土屋から「最近どんなお客様から受注できている?」などと聞かれて話すうちに、だんだんターゲットの傾向が言語化されて明確になるのがわかるんですよ。セールスの人間は自分の思い込みや好みで活動が偏ってしまうんですが、分析してみると「意外に人材系が多い」「あのMAツールユーザーが増えている」など、新しい気づきが得られることも多いです。
酒居 マーケティングを担当している私としては、決定したターゲットリストに応じて、そのアカウントやリードを集めたり、継続的な接触を持ったりするための施策やコンテンツを考える必要があります。それぞれの企業のインサイトを考えながら、刺さりそうな活用事例やイベントの企画などのコンテンツづくりに取り組みます。ターゲットが明らかでないままでは「セミナーを開催すること」自体が目的化してしまいかねません。
かねてより「マーケとセールスの壁」というように、連携がとれていないケースは多いと思いますし、以前は当社でもありました。でも、マーケとセールスが向き合うのではなく、ともにお客様の方を向いていれば、その齟齬や行き違いは大きく減ると思います。「お客様の方を向く」といえば抽象的ですが、ABMによって”ターゲットリスト”という「どこが今後のお客様になってくるのか」をバイネームで全員が明確に理解して共有していれば、どのフェーズにおいても効率的な活動ができるというわけです。
――ABMを推進するサービスである「FORCAS」の営業には、やはりABMが用いられていますよね?
土屋 はい。まずABMのターゲットリストに基づき、酒居のいるマーケがウェブコンテンツやオフラインでのイベントなどを開催して顧客接点を持ち、インサイドセールスがアプローチして関係を構築し、そこで温度が高くなってきたお客様に対して、田口らフィールドセールスが営業をしてクロージングするという流れで行っています。セールスで「まだかな」と判断した顧客リストはインサイドセールスに戻されて、改めてナーチャリングをしていくという感じですね。