営業職から念願の広報へ そこから「営業職」に再度挑戦したワケ
――再び営業職として活躍し始めた礒貝さんが、アドビに入社するまでの経緯を教えてください。
仕事はとにかく楽しかったですし、成果も上がってチームリーダーに昇進するなど、充実した日々を過ごすことができていました。しかし、結婚を契機に鎌倉で暮らすようになってから、再び公私のバランスについて悩むようになりました。徹夜や休日出勤こそなかったものの、帰宅は連日21時過ぎ。そのまま同じ会社で働き続けたい思いもあったのですが、上司に対して、「もっと早く帰宅したい」「時間の使い方を変えたい」、それでも「バリバリ働きたい」気持ちの両方を上手に伝えることができず、提示された「時短勤務」や「リーダー降格」の可能性に気落ちし、理解を得ることの難しさを痛感しました。制度・意識を変えていくうえでは、膨大なパワーを必要とするのではないか、と当時は感じてしまいましたね。
そんな時に、知人を介してアドビで働いている人と知り合いました。自分の置かれている状況を相談すると、「アドビに来れば、そんな悩みなんてなくなるよ」「時間に縛られず、しっかり決められた時間の中で成果を上げられたら、私生活も充実させられる」ときっぱり言われたんです。そんな働き方ができたらいいなと思い、ちょっとだけ話を聞くつもりで面接を受けてみたんです。すると、面接官であった、当時の上司にあたるシンガポール人から言われたのが「ファミリーファーストが原則だけど、仕事の品質と成果は厳しく求める」ということ。「まさにそんな仕事がしたかったんです!」「こんな上司と働きたい!」と非常に共感し、入社を決めました。
――現在は営業職として、具体的にどのような業務を担当されていますか。
2015年1月の入社以降から一貫して、製品トレーニングサービスのセールスを担っています。ここでも、1社めで体得した営業の感覚が活きていることを実感しますね。しかし、自分やチームの数字をただ追うだけではなく、新しいチャレンジとして、事業全体のマネジメントにも取り組んでいます。たとえば、お客様に提供するトレーニングコンテンツの費用対効果や外注トレーナーのコスト管理・マネジメントなど、売上以外の数字をしっかり追っていくことで、全事業全体の利益や成長性を把握し、育てていくことを意識しています。これまで、店舗のマネージャーや、営業チームリーダーなど、マネジメントは何回か経験していましたが、「事業全体」のマネジメントは初めてであるため、自分の中では大きな挑戦です。
1社めでつらかったときに、父が「頑張れる環境があるというのは幸せなこと」という言葉を掛けてくれました。大変だったのは確かですが、頑張ったからこそ得られたものはたくさんありました。かつての自分の経験が、今の自分のチャレンジを後押ししてくれている感覚があります。
――広報職には未練はありますか? ご自身のキャリアを振り返って、広報職と営業職での違いや職能としての向き不向きなど、感じられたことがあれば教えてください。
未練はないですね(笑)。今振り返れば、自分は広報の仕事というよりも、広報として活躍されていた人とその働き方に憧れていたのだと思います。一度経験したからこそ、自分が営業に向いている確信を持つことができましたし、広報で得られた経験も、知らず知らずのうちに今に活きているのではないかと思っています。
私が「営業に向いている」と感じている大きな理由のひとつに「数字と違和感なく寄り添えるから」という点があります。広報の仕事では、会社のブランドを背負っているというプレッシャーを感じつつも、自分が発信した情報への反応が見えづらく、その中でアピール材料を見つけて成果として見せることに非常に苦労しました。これも、私のキャリアの入り口が営業職だったからかもしれませんが……。
その点、営業はよくも悪くも明確に「数字」が表れるため、自分の頑張りに対して目に見える手応えを感じることができますよね。数字のほかにも、営業職は直接お客様と接することができるため、喜ばれたり、感謝されたり、ポジティブな反応をダイレクトに受け取ることができる点も大きな魅力でした。