営業活動のオンラインシフトでインサイドセールスの役割はより重要に
新型コロナウイルスの感染拡大が始まった2020年、国内景気は急速に悪化し、1年後の現在も緊急事態宣言のもと、状況の回復にはまだ時間がかかる見通しだ。コロナ禍に、ビジネスそのものに大きな変動が起きているのは誰もが感じていることだろう。Beforeコロナでは、出社や対面など人と人との接触を前提として業務が設定されていた。しかし、現在では半ば強制的にオンライン活用が求められ、それを前提としたビジネス環境構築が急務となっている。
そんなビジネス環境の変化において、法人向けクラウド名刺管理サービス「Sansan」や個人向けの名刺アプリ「Eight」などの提供を行うSansanの日根野氏は、「他業務と同様に営業やマーケティング活動についても、オンラインにシフトした改革が求められている。それも、オンライン商談やオンラインセミナーなどの接点応対だけでなく、すでに接した顧客との関係性を継続できる仕組みづくりが必要で、インサイドセールス部門には、データの蓄積・活用に加え、データ基盤の企画・構築も含めた戦略設計が求められている」と語る。
オンライン前提の営業環境でインサイドセールスの重要度が増すなかで、その役割には顧客への接点の“幅”の違いによって大きく3つのタイプに分けられるという。ひとつはアポイント獲得に集中して役割を果たす「分業型」、ふたつめはリード獲得や提案・クロージングにまで関わる「協業型」、そして3つめはナーチャリングからクロージングまで一続きで担う「独立型」だ。Sansanの営業組織は「協業型」で、新規開拓におけるアウトバウンドのターゲットリストから、商談・案件化まで幅広く担い、状況に応じてインバウンドの新規開拓にも対応するという。
この際、インサイドセールスは社内外でふたつの顔を持つことになる。社内ではマーケティング部門が取得したリードに対してナーチャリングを推し進める「組織の戦略コントローラー」としての顔、そして社外では、アポイントをセットして営業担当者に受け渡し、アドバイスを行いながら「伴走するコンサルタント」としての顔だ。そのため、1対1の顧客に向き合う以上に、顧客群としてニーズや要望などの傾向を捉え、営業やカスタマーサクセス、マーケティングなどとコミュニケーションを図りながら、社内に還元する能力が求められる。
ただし、Sansanではこうした型を定義するまでにさまざまな組織変遷を経てきたという。まず2011年ごろから新規獲得を目的にテレビCMを流すようになったことで、一気に問い合わせが増えた。前後して立ち上げられたインサイドセールス部門では「テレマーケティング対応」が重要な役割となり、KPIも商談数の確保が第一となった。
エンタープライズ企業へのアプローチをさらに強化した2016年ごろからは、受注数よりも受注単価が重視されるようになり、戦略的な顧客折衝のために営業やマーケティングとの「ユニット連携」が必要になった。そして現在は営業・マーケティング組織の人員も増加し、既存顧客に対するアップセル強化や地方への訴求、エンタープライズシフトに伴う戦略設計などが求められるようになり、営業やマーケティングから独立した部門として組織されている。