ビジネスは「売り切り型」から「サブスクリプション型」へ
泉 NECネッツエスアイの泉です。コンタクトセンターやインサイドセールスなど、いわゆる非対面のコンタクトチャネルの運用設計を複数のIT企業で経験してまいりました。今年度より、カスタマーサクセスチームを立ち上げている真っ最中です。
高橋 HiCustomerの高橋です。泉さんのようにカスタマーサクセスを立ち上げるお客様と伴走する「カスタマーサクセスのカスタマーサクセス」の役割を担っています。本セッションでは、カスタマーサクセスの視点から本イベントのテーマである「Customer Centric」について論じ、皆さんに還元できればと考えています。
カスタマーサクセスの存在感が高まりつつある要因のひとつに、世の中のさまざまなビジネスが、商品の販売時点で課金する「売り切り型」のモデルから、利用期間や利用料に応じて課金する「サブスクリプション型」のモデルへ転換し始めている点が挙げられます。ユーザー自身が、所有するという行為にこだわりを持たなくなり、(プライバシー以上に)利便性や体験を重視するようになっています。さらに、テクノロジーの観点でも、クラウドサービスが浸透し、プロダクトのアップデートも容易になりました。従来の「買い切り型」と、「サブスクリプション型」ビジネスの違いは、次のような点にあります。
1. 導入前のフェーズ
- 売り切り型:一度にたくさんのお金を払わなければならないため、金額が大きければ大きいほど、長期計画で検討が進められる
- サブスクリプション型:「まずは使ってみる」判断ができる
2. カスタマーとの関係
- 売り切り型:売れたら、そこで終了
- サブスクリプション型:売ってから関係がスタート
3. 成果が出ないとき
- 売り切り型:減価償却まで我慢して使うケースが多い
- サブスクリプション型:乗り換えが容易であるため、すぐに類似製品に乗り換えられる
4. 提供企業側のゴール
- 売り切り型:販売量の最大化が目標
- サブスクリプション型:継続利用の最大化が目標
売り切り型における「販売量の最大化」の役割は営業パーソンが担ってきたのに対して、サブスクリプション型における「継続利用の最大化」の役割を担う存在として注目を集めているのがカスタマーサクセスというわけです。顧客と伴走することで、継続率を上げていくだけではなく、成果事例を創出して新規顧客の獲得をしたり、顧客要望を吸収・整理し、社内各部門と共有することでプロダクトやサービス改善に貢献したりする役割もあります。
SalesZine Dayのテーマである「カスタマーセントリック」の考え方を基に、今回のセッションでは3つのテーマを用意しました。「ゴールとプロセス」「組織」「Customer Success Tech」――それぞれのトピックに関して、泉さんとお話ししてまいります。
泉さんは2020年の4月からカスタマーサクセスに取り組まれているとうかがいました。立ち上げに至るまでの背景と経緯を教えてください。
泉 当社は、大企業や官公庁の顧客を対象に、大規模なシステムを構築して納入することを生業としたSIerなのですが、従来のプロダクト販売だけでなく、SaaSの取り扱いにも力を入れるようになりました。ビジネスモデルの変化に合わせ、カスタマーサクセスを立ち上げることになったのですが、コロナ禍における立ち上げかつ新しい取り組みということもあり、私を含めた4名のメンバーで手探りでスタートしていきました。
高橋 お客様にカスタマーサクセスチームのミッションをうかがうと、大半の方が「解約率を減らし、更新率を上げる取り組みを行うこと」とおっしゃいます。解約率を追いかける理由は、「解約率がわかれば、1社から見込まれる売上が計算できるため」。概算ですが、解約率を半減すると、1社あたりの見込み売上は倍になるため、解約率を上げていくと、ビジネスインパクトが大きくなることがわかります。だからこそ、カスタマーサクセスチームは継続率を高める努力をしているのです。
一方、「カスタマーサクセスの存在意義」は、「お客様を真の成功に導く」ことであるため、顧客のゴールがどこにあるのかを見定めることが重要です。そのうえでは、「顧客とゴールにたどり着くためには、どのようなステップを踏んでいくべきなのか」を考える「サクセスロードマップ」を定義することで、「解約率の改善」と「顧客のサクセス」を両立する道筋が見えてくるのではないかと思います。泉さんの組織も、立ち上げにあたってこのような点に取り組まれたのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。