日本の営業部門の見える化、生産性アップが進まない理由
――長田さんの営業マンとしてのご経歴をお聞かせください。
2001年にソフトブレーンに入社し、2004年に営業のコンサルティング・トレーニングを行うソフトブレーン・サービスというグループ会社を設立メンバーとして立ち上げました。その後ソフトブレーンを退社し、IT系の会社の代表を務めるなど、外部でさまざまな経験をしました。しかし、ソフトブレーンのビジネスがいちばんおもしろいと感じ、2011年に戻ってきました。出戻り組であるというのが、キャリアとしてはおもしろいところかもしれませんね。
私自身、どの会社に行っても営業として売ることに関しては、トップセールスになることができたので、提供するサービスの意義、やりがいという視点で仕事を見るようになりました。今、世の中で働く人が減少していく一方、残業は抑制しなくてはいけないけれども、売上は上げないといけないという潮流があります。今後の日本に必要な生産性を上げるための支援ができる。これこそが、私自身のアイデンティティなのかなと。たいへんなときもありますが、働いていて感じるストレスはすべて「善玉」なんです。非常にやりがいを感じています。
実績としては、「営業イノベーション」というチャレンジングな取り組みを500社様以上と一緒にやらせていただいたこと。メディアのフォーラムを含め講演させていただき、名刺交換をさせていただいた方が3万人を超えていることがあります。これは、当社のシステムでよくよく見てみたらこの数になっていたということで、私自身も驚いたことでもあります。
――とくに、営業部門の「働き方改革」は注目されています。500社、3万人以上の方と会ってこられたご経験からも、日本の会社の営業部門は生産性に関して、課題を抱えているとお考えですか。
この約20年ほどの間、まったくもって変わっていないと感じています。ソフトブレーンを設立した宋文洲が、2002年に『やっぱり変だよ 日本の営業』(日経BPコンサルティング)を上梓し、ベストセラーになりました。ここで宋さんは、日本の営業が気合とカンと経験に頼っており、活動がまったく見えてこないことが問題だと指摘しています。それから約20年、まだまだ営業部門は見える化、効率化されていません。
――一方で御社も20年のご実績があり、営業改革に成功されている企業さんもあるかと思います。うまくいく秘訣などはあるのでしょうか?
ひとことで言うと、今までの成功体験に縛られていない。新しい取り組みを全社的にやるんだという、経営方針があることです。大手様になるほど、歴史があり、組織も大きくなり、統制が効きにくいのですが、それでも改革に成功されている企業様もあります。
――製造業で当たり前の、日本のお家芸である「見える化」「カイゼン」が、なぜホワイトカラーではできないのでしょうか。
世界経済フォーラムによる「Global Information Technology Report 2016」によれば、日本の新しいIT技術の採用は139カ国中2位です。一方で労働生産性はG7で最下位、全体でも20位です。なぜなんでしょうね。
そして、経営層が「重視するIT戦略テーマ」(出典:ITR「IT投資動向調査2017」)は、ここ3年間「売上増大への直接的な貢献」が1位です。攻めのIT投資ということですね。段々、気づいてきている。気づいただけでなく、実行し、数年間やり切っている企業様は、今の時代に合った戦い方ができるようになりつつあります。
そうでない企業様も、ITを入れていないわけではない。むしろ、ツールはたくさん導入しておいでです。うまくいかないのは、それぞれが個別最適なツールを複数導入しているから。その結果、現場は余計な仕事が増えてしまっています。よってマネージャーや経営層も、成果につながる情報収集や判断が行えていないのです。そして、このジレンマが生じていることにすら気づかず、「IT投資をしても営業改革にはつながらない」事態に陥っているわけです。当社では、7,000社以上の企業様とお付き合いしてきた生々しい経験から、こういった課題を導き出し、営業を科学する方向へ導かせていただけるよう、ご支援させていただいています。