点在する成功体験を「組織の資産」へ。現場を自走させる3ステップの全容
──山内さんが掲げる「3つのステップ」について、具体的にお聞かせください。
まず第1のステップ「現場の成功体験を作る」フェーズでは、若手メンバーを中心としたスモールチームを立ち上げ、AIによる「業務の再設計」を行いました。
たとえば営業部門では、エンジニアやデザイナーを中心とした、現場の若手からなる混成チームを結成し、「商談準備のAI化」に挑戦しました。ここでは単に「準備時間が減る」という効率化の文脈に留めず、「AIによって創出した時間を、顧客との対話という付加価値へ転換できる」という実感を、現場に浸透させることを重視しました。
こうした成功体験を各部門で地道に積み上げた結果、現場には「AIは自分たちの武器になる」という確かな手応えが生まれていきました。

──最初に、現場で「小さな成功」を積み上げていったのですね。続いて、第2のステップ「経営・戦略への接続」について聞かせてください。
第2のステップでは、各所に点在していた取り組みを、一貫した「全社ストーリー」へと統合することに注力しました。
具体的には、コーポレートコミュニケーション室(社内外のコミュニケーション担当)と連携し、個別の「点」であった成功体験をひとつの「線」に結び直すというストーリーの接続を行いました。「ビズリーチがAIによってどう進化していくのか」という、経営戦略的な文脈を添えて発信し直したのです。
──個別の事例紹介に留めず、経営の文脈に落とし込んでいったわけですね。第3ステップについても教えてください。
最後のステップ「文化の醸成」では、「AI活用が当たり前の文化」を作るため、多角的な仕掛けを同時並行で走らせました。
まずは、各部門に推進役となる「AIエバンジェリスト」を擁立。定期的な勉強会の実施などを通じ、現場の最前線で活用を推進する体制を整えました。
続いて、全社的な情報共有を目的としたSlackコミュニティを構築しました。ここではナレッジを称賛し合う空気を醸成するとともに、各部門の「AI活用状況」の可視化も徹底しました。現在地を客観的な数字で見せることで、組織に適度な緊張感と刺激をもたらすことを狙ったんです。

そして、このボトムアップの勢いを決定づけたのが「生成AIコンテスト」の開催です。コミュニティの登録者が1,000人を超え、現場の熱量が高まっていたからこそ、個々の挑戦を公式に評価し、賞賛する場を設けたいと考えたのです。
結果として40件もの事例が集まり、その多くが現在、実務でも活用されています。こうした「知見を共有するプロセス」そのものが、組織に「新たな価値」を生み出す起爆剤となりました。
──3ステップを経て見えてきた、具体的な成果についてお聞かせください。
AIの知見が組織全体に広まったことで、「顧客への価値提供」をゼロから問い直す視点が現場に根づいたことが、最大の成果だと感じています。
たとえば営業部門でも、「AIによって、お客様にもっと本質的な価値を提供できないか」と、業務設計そのものを再定義する提案が上がるようになりました。
「単なる効率化」から、「お客様のための新たな価値創造」へ。この思考の転換こそが、変革を加速させる原動力になっていると感じています。
