現場の「なぜ必要?」を乗り越えて。RevOpsの始め方
川上 ここからは、企業規模も成長フェーズも異なる2社に、RevOpsの取り組みについてうかがえればと思います。どういったきっかけでRevOpsを始めたのですか?
鈴木(旭化成) 当社では、私が以前所属していた電子部品部門から着手しました。ビジネスの主戦場が海外へシフトする中で、グローバルの競合企業はRevOpsがかなり進んでいる事実に直面したのです。「このままでは勝てない、我々も取り組まなければならない」という強い危機感からスタートしました。
旭化成株式会社 デジタル共創本部 DX戦略推進センター リードエキスパート 鈴木岳氏
2024年3月まで、旭化成グループの旭化成エレクトロニクス株式会社(通称AKM)で25年以上、電子部品のマーケティングと営業に携わる。オーディオICブランド「VELVET SOUND」のブランディングも推進。 2024年4月から旭化成本社のデジタル共創本部でマーケティング・営業のDX全社戦略を推進している。
山田(キャディ) キャディの事業はローンチから約4年と若く、変化の激しい環境にあります。事業の成長に伴い、組織はエンタープライズ、ミドル、スモールビジネスの3つに分かれ、営業メンバー数も急増しました。
そうした急拡大の変化の中で、GTM戦略と現場の動きにズレが生じ始めたのです。この状況を打破するためにRevOpsを導入しました。
キャディ株式会社 部門執行役員 VP of Marketing 山田雄基氏
2021年キャディ入社。加工品受発注事業のマーケティングと新規事業の立ち上げを兼務し、22年に製造業向けソフトウェア「CADDi Drawer」をローンチ。以降、マーケティング・インサイドセールス・RevOps体制を構築。24年より部門執行役員 VP of Marketingとして、全社の成長基盤を担う領域を統括。
川上 おふたりとも、より事業を拡大するために「このままではダメだ」という意識で導入されたのですね。具体的にどんなところから着手されましたか?
山田 当社はSLG(Sales-Led Growth)で優秀な営業がそろっているからこそ、前職の経験に基づく独自の「流派」が生まれていました。いわゆる属人化です。そこで、事業を再現性高くグロースさせていくためには、ひとつの「共通基盤」が必要だと考えました。
そこで、セールスのファネル設計をゼロから組み立て直すところから始めました。
川上 レベニュープロセスの中で、もっとも属人化が顕在化していたゾーンから着手したということですね。鈴木さんはどこから着手しましたか。
鈴木 私はマーケティングのオペレーションモデルをグローバル標準に整えていくことから始めました。ウェブや展示会といったマーケティング活動を自分たちなりにやってきたものの、やり方が体系立っていないことが問題でした。結果として、マーケティングと営業の対立が生まれ、互いにフラストレーションが溜まっている状態でした。
それを解消するために、まずは部門をまたいだルールづくりに着手しました。海外拠点を含めて話し合い、粘り強く言語化していったのです。最終的に「プレイブック」として文書化したことで、明確にルールを共有することができました。
川上 かなり地道な活動かと思いますが、苦労されたポイントはどこにありましたか?
鈴木 現場からの「なぜそのルールが必要なのか?」という問いに向き合い続けることです。各拠点のメンバーは非常に優秀ですが、それゆえに拠点ごとに個別最適が進み、全体の戦略とズレが生じている。それこそが問題の本質でした。
そこで、トップダウンで示された方針をただ押し付けるのではなく、現地の商習慣やターゲットを尊重しながら、「共通ルールを均(なら)していく作業」が必要でした。拠点のメンバーと同じ目線で、粘り強く一緒に考えていくプロセスこそが、もっとも重要だったと感じています。
川上 中央集中で管理する側面と、現場の声を聞く側面のバランスが重要ですね。山田さんもそういった苦労はありましたか?
山田 私たちもプレイブックを制作したのですが、言語をそろえていく作業が大変でしたね。
当社は若い中途社員が多く、各自が「前職の言葉」「前職のやり方」で仕事をしていました。属人的なスタイルでも、「売上」という成果が出ていれば、それが正義になってしまうような状態だったんです。
たとえば「推進者に会えた」という報告ひとつとっても、人によって基準が異なります。そうした言葉の定義をそろえる地道な作業を、現場のメンバー、マネジメント、経営層と一緒に、時間をかけて丁寧に行いました。
川上 共通化を図るとき、抵抗勢力もありそうですが、乗り越えるためのコツはありますか?
山田 私は採用にも携わっていて、マーケティング組織の採用計画も立てています。その計画に基づき、チームのリーダーには「将来的にあなたのチームがこれだけの規模になる。そのとき、今のやり方のままでマネジメントし続けられるか?」と、中長期的な視点での対話を意識しています。
目先のクォーターの売上にコミットするのは素晴らしいことですが、それが半年後、1年後も持続可能なのかを問い、標準化の必要性に「意味づけ」をしていったのです。
加えて、標準化を受け入れてもらうために「現場の負担を減らすギブ」を提示しました。外勤が主軸の営業にとって、活動履歴の入力などのデータ管理は億劫なものです。そこで「標準化に協力してもらえるなら、面倒な作業はこちらで自動化します」と、現場にメリットのある条件をあえてセットで提示したことが、スムーズな導入につながったと考えています。
