AIが奪う仕事、人に残る価値
まず、AI時代において市場価値が上がるのは、単純な情報処理や定型的なタスクではなく、「人ではないとできない仕事」に時間と能力を投資できる営業です。私はこの領域を「非合理な領域」と捉えています。

「非合理な領域」とは、ロジックやデータでは割り切れない、顧客の感情、価値観、そして将来の事業成長に深くアプローチしていくコミュニケーションを担うことです。
一方で価値が高まる非合理な領域に対し、オーダーを受けて見積もりを作成し、製品を手配するといった定型業務は、その価値が低下していく可能性があります。
ここで、市場における「バーニングニーズ(緊急性の高いニーズ)」を3つに分類してみました。自社の顧客や商材の場合は、どのニーズが多いのか、AIによる代替可能性をふまえて確認してみてください。
| ニーズの種類 | 内容 | 営業の関わり方 | AI代替可能性 |
|---|---|---|---|
| ①定期発生 | 事業継続のため定期的に発生(クラウド、消耗品など)。 | 定型的な受発注・手配対応が中心。 | 高 |
| ②連続成長 | 成長予測に基づいた、要件が明確な購買(設備増設など)。 | 要件整理・見積もり作成が中心。 | 高 |
| ③非連続変化 | DXなど、過去にない投資(何を買うべきか買い手もわからない領域)。 | 顧客と伴走し、購買要件や未来を共に創る。 | 低 |
顧客側もAIを活用する時代において、①と②のような定型的な営業活動の価値は低下していく可能性があります。
日本ではまだ発展途上ですが、海外では営業側だけでなく「購買側のAIエージェント」の活用が進んでいます。購買側のAIエージェントは、自社のデータ(財務、戦略、アセット)と外部環境を分析し、「次にどの領域に投資すべきか」「どのようなソリューションを購買すべきか」といった相談をAIと行うようになります。
2〜3年先には、AIが購買要件を整理する時代が来るでしょう。そうなれば、市場価値の高い営業は、③の「非連続な成長・変化のための購買」をリードできる人に集約されていくでしょう。
とはいえ、市場の未来は誰にも断言できません。ただし、「価値が落ちない可能性もある」と楽観視するのではなく、リスクヘッジとして、より価値の高い「非合理な領域」へ挑戦する姿勢が重要です。
AIのような新しいテクノロジーを「関係ない」と思わず、まずは積極的に「使ってみる」こと。これがAI時代を生き抜くプロフェッショナルの振る舞いです。ここからはより具体的な営業活動におけるAIの活用方法について、考えていきましょう。

