お客様の「本音」を直接得る マーケターの新たな役割
──こうした先進的な取り組みを、ほかの日本企業が導入する際に、どのような壁が想定されますか。気をつけるべき点を教えてください。
石原 我々もまだ道半ばですが、もっとも大事なのはプログラム初期に「核」となるコミュニティを形成することです。最初から熱量の高いメンバーを集めなければ、一度薄まってしまったコミュニティの熱量を「後から濃くする」のは非常に困難です。
そのためにも、営業やCSMといった現場の意見を聞き、候補者となるお客様をしっかり見極める必要があります。

──仕組み化も重要になりそうですね。
石原 おっしゃる通り、管理が煩雑になるとコミュニケーションが滞り、Zoomが掲げるWork Happyを実現することができません。我々がPRMを活用しているように、活動履歴や情報を一元管理する仕組みを整えることは、コミュニティにおけるコミュニケーションを円滑に進めるうえで必須です。
また、社内に同じ志を持つ「仲間」を見つけることも大切です。私はマーケティングの立場ですが、営業サイドにもこの活動に興味を持ってくれるメンバーがいて、部署を横断して伴走しています。
──とはいえ、営業部門からは「それはボランティアなのか」「売上につながるのか」といった反発も予想されます。
石原 必ず衝突はあると思います。ただ、実のところ売上にもつながっているんですよ。リーダーからのご紹介で新規のお客様が製品を購入してくださるケースも生まれています。
短期的な衝突を恐れず事実を共有すること。そして現場レベルで協力してくれる仲間を見つけることが、壁を乗り越える力になります。
──ありがとうございます。最後におふたりが今後チャレンジしたいことをお聞かせください。
石原 働き方やビジネス課題はどんどん変化していて、お客様が求める価値も日々アップデートされています。そうした変化の中で 「解決策として真っ先にZoomが思い浮かぶ」 という世界をつくっていきたいと考えています。ただ、それを実現するには私たちだけの力では足りません。コミュニティリーダーという“仲間”の力をお借りし、発信力を1馬力から2馬力、3馬力へと大きく広げていきたいと思っています。
田中 私は、まずこの「仲間」の輪を日本全国に広げたい。そして将来的には、アジア、ヨーロッパ、アメリカと、世界中のユーザーナレッジを繋げていきたいです。Zoomでは同時通訳機能も提供していますから、言語の壁を越えて、世界中の知見がリアルタイムでつながるプラットフォームを創造できると信じています。
──お話をうかがっていると、マーケターの役割そのものが変わってきていると感じます。
田中 まさにそう思います。従来、こうしたコミュニティ活動はCSMが担うことが多かったかもしれません。でも、マーケティングがやるからこその価値があるんです。
我々は今、マーケターも積極的にお客様と名刺交換をし、直接つながるようにしています。営業やCSMとは異なり、マーケターという立場だからこそ、お客様が「本音」を話しやすい。
石原 まさに。「これ欲しいんだけど、ちょっと営業には言いにくいかな」といった、「ぶっちゃけ話」をうかがえることもあります。
田中 生の声はデータだけでは得られない深い顧客理解につながります。マーケティングがお客様と直接つながる「会社のフロントライン」になる。それこそが、これからの時代のマーケターの新しい役割であり、この取り組みの最大の価値だと考えています。
──本日は貴重なお話をありがとうございました。
