パートナービジネスの専任組織は57%に留まる
最後にパートナービジネス、そしてパートナーマーケティングに取り組む組織体制について調査を行った。

現状、パートナービジネスの専門部署がある企業は全体の57%にあたる。
ただ、そのうち37%はセールスやマーケティングの本部のなかに専門チームを立ち上げている状態であるため、独立したパートナービジネスの部署が存在している企業は全体の20%に留まっている。

また、中小企業だと営業部門と兼務するケースが44%となり、専任リソースを確保できない現実が明らかになった。こうしたケースではパートナービジネスへのリソース確保自体が厳しいため、成果拡大への足枷となっている可能性が高い。
とくに、セールスやマーケティング部門の中にパートナービジネス専任チームが置かれている場合、日本のキャリアパスの構造上、責任者クラスがパートナービジネスの実務経験を持たないケースも少なくない。結果として、部門内でパートナービジネスの専門性に基づいたマネジメントが行われにくいという構造的な課題が生じている。
今後、多くの企業でパートナーマーケティングへの取り組みが進む中で、独立した専属部署の設立や、パートナービジネスに精通した部門責任者人材の輩出が、経営に求められるひとつのテーマとなっていくであろう。
「パートナーマーケター」の獲得が成長の鍵
今回の「パートナーマーケティング白書」の調査結果をまとめると、次のように整理できる。
1.パートナービジネスの課題は「スキルやモチベーションのばらつき」が最多:この解決のためにパートナーマーケティングが求められている状況。
2.パートナーマーケティングは認知されるも実行には至らず:海外と比べると、価値を認めながらも予算増強に踏み切れないのが日本の現状。
3.パートナープログラム設計が成果のカギ:パートナーマーケティング施策の中ではパートナーランク整備の効果実感が最大。取り組みやすい育成コンテンツ提供などの施策だけではなく、パートナープログラムなどの大規模な仕組みづくりに取り組めるかが重要。
4.組織は過渡期:専任部署を持つ企業は増えつつあるが、57%にとどまる。 総じて、日本企業はパートナーマーケティングの重要性を認識しつつも、直販を重視する文化や投資不足により本格展開が遅れていると言える。
さて、この状況を変革していくためには何をすべきなのだろうか。
筆者としては、その答えが“人材”、すなわち“パートナーマーケター”にあると考えている。
実際に、パートナーマーケティングの先進企業の動向を見ていくと、パートナープログラムなどへの投資のために、パートナーマーケティングに精通した人材の獲得競争が始まっている。
たとえばパートナーマーケティングに力を入れているfreeeなどでは、実際にパートナーマーケターの求人を出すなど、専門人材の採用を積極的に行っている様子だ(※)。freeeのパートナー事業本部の関係者も、「パートナーが売りやすい仕組みを作る企画力に長けた人材を求めている」と話していた。
また、海外ではパートナーマーケターの年収が上昇しているというデータもあり、需要が増していくことは明らかだ。
企業としては、パートナーマーケティングを推進するための人材獲得および組織体制の整備を進め、パートナープログラムをはじめとする成果の高い施策を推進できるかが問われる時代になる。
一方で、パートナービジネスに関連するキャリアに関心があるビジネスパーソンとしては、パートナーマーケティングに携わる機会を獲得することで、自身の専門性を高めることがキャリアアップにつながっていくだろう。
世の中に優れたパートナーマーケターが増えることで、日本を代表する企業群におけるパートナービジネスの成功確度が高まり、まさにパートナービジネスが日本経済のエンジンとなっていく。その中心となるパートナーマーケターこそが、次の時代を代表する職種となるだろう。
【調査概要】
- 調査方法:インターネット調査
- 調査期間:2025年8月
- 有効回答:パートナービジネスを実施している企業のビジネスパーソン355名
- 調査主体:パートナープロップ
- 調査詳細:『パートナーマーケティング白書』
