属人化から脱却し、再現可能な成功パターンを構築する
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「あの人はなぜ売れるんだろう?」。多くの営業組織で、ハイパフォーマーの存在は一種の神話のように語られがちです。そしてその成功要因は、本人の才能や経験といった「なんとなく」の要素に帰結し、組織での「再現性」を追求するのは困難でした。
対面営業の現場がブラックボックスである限り、ハイパフォーマーとそれ以外の営業担当者との間に存在する「決定的な違い」を客観的に捉えることはできません。
この壁を乗り越える鍵となるのが、対面会話の可視化です。会話をデータとして捉えられるようになれば、「強い営業」の具体的な行動や話し方の特徴を抽出でき、育成や改善につなげることが可能になります。

自動車ディーラーの「対面商談」可視化の実例
会話の可視化とデータ活用が現場にもたらす効果を示す実例として、ある自動車ディーラーの取り組みを紹介します。同社では、2024年より営業スタッフの対面接客に対面会話解析AIを導入し、数百件規模の商談データを蓄積・分析しました。
【取り組みのプロセス例】
1.商談の一連の流れを「商品説明」「顧客理解」「ニーズ把握」「合意形成」「クロージング」といったトピックに分類
2.それぞれのトピックで、ハイパフォーマーが話している「キーワード」をピックアップする
(例)
「ニーズ把握」のキーワード例:検討、予算、何人、使う、機能、便利、不便、欲しい、必要、気になる、なぜ、きっかけ
「顧客理解」のキーワード例:おこさま、趣味、家族、支払い、住まい、勤め、使用、車種、どちら、主に使用、通勤距離
3.商談中に発話されたキーワードを分類し、カウントする(対面会話解析AIなどを活用)
4.ハイパフォーマーとそれ以外のメンバーの商談を比較し、トピックごとのキーワード出現比率を数値化し、違いを見つける
(例)
ハイパフォーマーは「ニーズ理解」と「顧客理解」のトピックに紐づくキーワードの発生率が高い
5.ハイパフォーマーとそれ以外のメンバーの違いを比較し、どのような発言が成果につながったかを考察する

